忌野清志郎、初のドキュメンタリー映画がついに公開
存命であれば75歳になっていた2026年、ついに忌野清志郎のドキュメンタリー映画が公開される。RCサクセションのフロントマンの時代からソロ活動まで、そのキャリアを通じて《キング・オブ・ロック》と呼ばれたアーティストである。58歳で世を去ってから17年の間、ライブの映像を編集したコンサートフィルムはいくつかあったが、生涯を俯瞰した劇場用映画は初めてだ。正直、遅すぎた気がしないでもない。だが、それは確かに今、観るべき映画になっている。
まずはこの映画『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』について、ざっと解説を。タイトルの『愛し合ってるかい?』はファンには説明するまでもなく、清志郎がRCサクセション時代からステージで発し続けた有名なMCで、その姿勢を端的に言い当てた言葉でもある。映画は、そんな彼が歩んできた道のりを当時のフッテージやインタビューとともに紹介していく。
フッテージはとにかく多く、中心となるのはライブ映像だが、未発表映像も随所にある。いちファンとしてギョッとさせられたのはRCのアルバム『BEAT POPS』レコーディング時の風景。アルバムからは漏れたが、のちにシングル「つ・き・あ・い・た・い」のB面に収録された「窓の外は雪」のコーラスを入れるレコーディング風景がさらっと織り交ぜられていて、こんな映像があったとは!と驚かされた。1990年に行われたRCサクセション最後の武道館公演の模様も収められているが、こちらも作品としてリリースされていないだけに貴重。RCサクセション最後のライブ映像として発表される日は来るのだろうか?
証言から浮かび上がる忌野清志郎の人物像と音楽性
RCサクセションのフロントマンとして長く活動し、1991年の活動休止後はソロアーティストとして歩み続けた。RC時代からソロプロジェクトを始めてはいたが、フッテージの中には「い・け・な・いルージュマジック」で共演した坂本龍一や、インタビュアーとして話を聞く音楽誌『rockin'on』元編集長の渋谷陽一など、清志郎の没後に亡くなった方々の発言や姿も収められており、戻れないあの頃の熱さを思い出させた。
この映画のために収められたインタビューでは、清志郎の高校時代からの友人だった俳優・三浦友和や、デビューがほぼ同時期で罵倒も含めて何でも言い合える仲だった泉谷しげる、フォーク時代からのステージを観てきた竹中直人、清志郎と親交の深かったジャーナリスト、金平茂紀らが出演。彼らの証言をとおしてさまざまな角度から清志郎の人物像や音楽性に迫る。
中でも興味深いのは19歳のころからのファンだという作家・角田光代のインタビュー。清志郎の作る歌詞について証言するが、当時の流行歌には使われなかった生活感のある普通の単語を歌詞の中に取り込んで、特別な風景を作り出していたことを指摘している。これは筆者も当時から感じていたことで、大きく頷いてしまった。
「市営グランド、牛乳、あくび、ミシン、アパートの大家」などの名詞は、それまでのロックの曲では聞いたことがなかったし、歌詞に「しこたま」なんて単語を用いたロックアーティストは清志郎以外に思いつかない。何より重要だったのは、これらの歌詞が演奏の中に埋もれず、はっきり聞こえてくることだ。
2年間の闘病を経て帰ってきた「忌野清志郎 完全復活祭」
RCがロック編成へ移行した頃から清志郎の盟友として寄り添っていたサックスプレーヤー・梅津和時。そしてRCサクセション全盛期にスタッフとなり、ソロ活動時にはバンドの核として彼を支えたギタリスト・三宅伸治。二人のインタビューも本作では重要なものとなる。ちなみに彼らは2008年、清志郎が2年間の闘病生活を経て復帰した日本武道館公演『忌野清志郎 完全復活祭』にも参加している。
この『完全復活祭』の模様は本編でも少しばかり収められている。ファンならご存じのとおり、これはライブアルバムやライブ映像としてすでにパッケージ化されているが、映画公開直前の9月30日に、最新リマスター版がBlu-rayとDVDで再リリースされるのでファンは要チェック。筆者はこの映像のオープニングを観る度に泣いてしまう。結果的に、この公演の約15か月後、2009年5月2日に清志郎は世を去った。
若い世代へ歌い継がれる忌野清志郎のスピリット
映画はここで終わっても良かったのかもしれない。しかし、没後も清志郎のスピリットは生きている。2011年から19年まで開催されたトリビュートコンサート『忌野清志郎 ロックンロールショー』には毎回、縁のあるアーティストや後進のバンドが多数参加し、清志郎の曲を歌い継いできた。
そして、本作のクライマックスを飾るのが、2025年8月31日、『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025』に出演した忌野清志郎のスペシャルトリビュートバンド・SWEET LOVER SOULSのステージだ。清志郎の大ファンであることを公言するReiやgo!go!vanillasのジェットセイヤらを中心に、若い世代のアーティストたちが次々と清志郎のナンバーを歌い継ぐステージ。梅津和時は偶然の出会いによってこのバンドに加わった。
リハーサルの場面では、梅津が清志郎の姿勢を踏まえバンドにアドバイスをする姿も。そして清志郎の曲を伸び伸びと歌う若いアーティストたちの楽しそうな姿。アイナ・ジ・エンドによる「スローバラード」の魂のシャウトと呼びたい歌声は、とりわけ印象に残る。そして映し出された会場では、若いファンがシンガロングしている姿が。半世紀前に作られた曲がまったく古びることなく、今もしっかり歌われていることは、本作でもっともエモーショナルな場面と言えるのではないだろうか。
人は誰でも死ぬ。しかし、業績は残る。清志郎が残したものの大きさに、改めて圧倒されるこの映画。昔からのファンだけでなく、若い世代にもぜひ観てほしい。
Information
映画『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』
▶︎ 公開日:2026年10月2日(金)
新宿バルト9ほかにて公開
▶︎ 出演:忌野清志郎
三浦友和、竹中直人、三宅伸治、泉谷しげる、梅津和時、角田光代、金平茂紀、百世、SWEET LOVER SOULS
▶︎ 監督:相原裕美
▶︎ オフィシャルページ:
https://www.toei-video.co.jp/kiyoshiro-movie/ ⓒ2026 Kiyoshiro Movie Project
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