2026年 10月2日

忌野清志郎の歌はなぜ今も響く?映画「愛し合ってるかい?」に見る圧倒的オリジナリティ

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映画「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」公開日
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完成まで4年かかった「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」


日本のロックシーンに偉大な足跡を残した忌野清志郎。彼の生涯を追う音楽ドキュメンタリー映画『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』が公開された。

忌野清志郎が58歳の若さで逝去したのが2009年の5月2日。あれから17年も経っているとは思えない。音楽ファンの中で、今も清志郎は生き続けているのだ。ドキュメンタリー映画が作られるのも遅いくらいではあるが、監督を務めた相原裕美の発言によれば、企画の立ち上げから完成まで4年かかったという。その間、さまざまな苦労があったことは容易に想像できる。

登場時から異端だった忌野清志郎


何より嬉しいのは、幾つもの貴重な映像が登場することだ。特に初期RCサクセションの、ハードフォーク時代の演奏シーンは大変珍しく、リンコこと小林和生がウッドベースを弾いている様子が残されている。また、活動初期の清志郎は、スッピンでおかっぱ頭。このヒップなビジュアルがフラワームーブメントの残り香のようで、この時代のRCを見てみたかった!と強く思わせるものがある。そう、その姿を見てもわかる通り、登場時から忌野清志郎は異端であったのだ。

その異端さは同時代を生きた関係者の証言でも明白だ。清志郎とは高校の同級生で、音楽仲間でもあった俳優の三浦友和、渋谷のライブ喫茶「青い森」で共に出演していた泉谷しげる、大学生だった頃に初期RCのステージを見ていた竹中直人らが、映像の中で口を揃えて語るのは、その歌い方の特殊性である。ライブシーンを見れば一目瞭然だが、清志郎は最初からあの歌い方なのだ。

アコースティックからエレクトリックへとサウンドが変わっても、スッピンからド派手メイクに変わっても、歌唱法だけはそのままである。編成がアコースティックなのに、凄まじいパワーを感じさせたと口々に証言しているのも印象深い。

日本のロック史を考える上で、非常に貴重な記録映像


RCサクセションがブレイクしたのは1980年。久保講堂でのライブを収録した実況録音盤『RHAPSODY』の発表前後であるが、この時期のステージ映像もふんだんに盛り込まれており、そのアグレッシブなステージングは、衝撃としか言いようがない。単に見せ方が変わっただけでなく、エネルギーの放出が凄まじいのだ。日本のロック史を考える上で、非常に貴重な記録映像である。

映画はヒストリーに沿って、例の『COVERS』発売中止事件からザ・タイマーズ結成に至る過程で、清志郎のパフォーマンスが次第に過激になっていく様を綴っている。合間に挟まる音楽評論家・渋谷陽一と清志郎の対談が水先案内人となって、いくつかのターニングポイントを示しているのも上手い構成だ。

その中で印象的なのはRCのナンバー「自由」で、この曲が映画の核になっているようだ。ジャーナリストの金平茂紀が “あんな自由な歌ってないよね” と発言。坂本龍一も “言いたいこと言ってるよね” と語っている通り、自由こそが、映画が伝えたいメッセージなのだ。近年、音楽に政治性を持ち込むことに対し、さまざまな意見が飛び交っているが、その辺の議論をひらりとかわしていったのが忌野清志郎であり、そこにこそ清志郎が持ち続けた自由があったのだと思う。



注目作を立て続けに生み出している相原裕美監督


日本の音楽ドキュメンタリー映画は『キャロル』(1974年)をはじめ、1970年代からいくつもの秀作が存在する。2000年代以降はアルタミラピクチャーズが、『タカダワタル的』(2004年)、『THE GOLDEN CUPS ワンモアタイム ONE MORE TIME』(2004年)などの秀逸なドキュメンタリーを送り出してきた。

そして近年、注目作を立て続けに生み出しているのが、相原裕美監督による音楽ドキュメンタリーなのである。東京・東銀座のレコーディングスタジオ、音響ハウスを舞台にした『音響ハウス Melody-Go-Round』(2020年)、加藤和彦のキャリアに迫る『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』(2024年)に続くのが、今回の『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』である。

相原の音楽ドキュメンタリーにはひとつの明確な方向性がある。それはレジェンドの存在と、現在を生きる若いアーティストたちを結びつける形で映画が構成・編集されていることだ。『音響ハウス』には大貫妙子と佐橋佳幸が新曲を書き、10代のアーティストHANA(現在のHana Hope)のレコーディングを大貫がディレクションするシーンがある。『トノバン』では、後半で若い世代のアーティストたちが「あの素晴しい愛をもう一度」を歌うシーンが配されている。そして本作も、前半は忌野清志郎のキャリアを綴っているが、後半では現在を生きる若いアーティストたちが、清志郎の歌を歌い継いでいる様を描いている。

現代に繋がる普遍性を音楽で伝えてくれる映画


若手アーティストたちが清志郎の名曲を歌うシーンは、2025年の『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025』に出演した忌野清志郎のトリビュートバンド・SWEET LOVER SOULSのステージである。このライブ映像を観て改めて思ったことだが、アイナ・ジ・エンドや東京スカパラダイスオーケストラの茂木欣一らの歌い方が、物真似や模倣ではなく、彼ら自身の歌い方なのに、不思議と清志郎のスタイルが浮かび上がってくるのだ。

映画の中で、作家の角田光代がはじめてRCのライブを見た際、歌詞がはっきりと聞き取れることに衝撃を受けたと語っている。そしてこのトリビュートライブを見て感じるのは、清志郎の曲は誰が歌ってもあの歌い方にしかならないということだ。そう、誰が歌っても言葉がちゃんと聞き手に届くように作られていることに気づかされる。凄まじいオリジナリティの強さだ。

RCサクセションのメンバー、ことに仲井戸麗市の不在は残念だが、ライブ映像では何度も登場する。特に2人が北海道の牧場でギターを弾き合いながら歌う「君が僕を知ってる」の映像は、奇跡のように美しい。自由をテーマに、単なる回顧的なレア映像だけで終わらせるのではなく、現代に繋がる普遍性を音楽で伝えてくれるのが『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』なのだ。


Information
映画『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』



▶︎ 公開日:2026年10月2日(金)
新宿バルト9ほかにて公開
▶︎ 出演:忌野清志郎
三浦友和、竹中直人、三宅伸治、泉谷しげる、梅津和時、角田光代、金平茂紀、百世、SWEET LOVER SOULS
▶︎ 監督:相原裕美
▶︎ オフィシャルページ:https://www.toei-video.co.jp/kiyoshiro-movie/
ⓒ2026 Kiyoshiro Movie Project

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