もんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」がヒットチャート1位を長らく席巻し、新人・松田聖子のセカンドシングル「青い珊瑚礁」がチャートを急上昇していた1980年の夏―― 宇宙戦艦ヤマトシリーズの劇場用映画第3弾『ヤマトよ永遠に』が封切られた。 エンディングに流れた主題歌は、布施明の「愛よその日まで」であったが、本編終了後に暗転した黒味の部分に収録されていたのは岩崎宏美「銀河伝説」である。ささきいさおの歌で知られる『宇宙戦艦ヤマト』のテレビ版主題歌と同じ、阿久悠✕宮川泰コンビが手がけている。荘厳なバラードでありながらしっかりと歌謡ポップスとしても成立しているのはアレンジの川口真の手腕であろう。 シングル盤は8月5日にリリースされたが、先行して7月5日に出された布施のシングル「愛よその日まで」のB面に既に同曲は収録されていた。それでも映画の幕間に流れたのは岩崎盤の方だったのでこちらがオリジナルという複雑な構造。 「銀河伝説」がイメージソング扱いだったかというとそうではなくて、イメージソングは堀江美都子が歌った「おもかげ星」という曲が別にあった。こちらは挿入歌として、ささきいさおが歌った「星のペンダント」とのカップリングでシングル発売されている。 さらには、布施はキング、岩崎はビクター専属であったため、12月にコロムビアから出された LP 『宇宙戦艦ヤマト 主題歌・ヒット曲集』では「愛よその日まで」はささき、「銀河伝説」は堀江がそれぞれ新たに吹き込んだ。なんともややこしいのだ。 岩崎宏美の「銀河伝説」は、彼女の21枚目のシングルにあたる。80年に入って「スローな愛がいいわ」「女優」と大人っぽいポップスに続いて出された一枚であり、カップリングの「愛の生命(いのち)」との両A面扱いだった。「愛の生命」は『ヤマトよ永遠に』の本編で使用された挿入歌で、山口洋子作詞、浜田金吾作曲―― 柔らかなメロディに岩崎の美声が映え、たしかに「銀河伝説」とは甲乙つけ難い傑作である。 なお、「銀河伝説」はその後10月に始まったテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマトⅢ』第1話、第2話のエンディングテーマとしても使用された。第22回日本レコード大賞で金賞を受賞していることからも、単なる企画盤でなかったことが判る。 アニメブームの一つのきっかけになったといえる宇宙戦艦ヤマトシリーズからはたくさんの歌が生まれた。歌謡曲との連携が少なくなかったのは、歌謡ポップスのヒットメーカーとして知られる宮川泰が劇中音楽を担当していたこととも無関係ではないだろう。 突破口となったのは78年に劇場用作品『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のエンディングテーマとして沢田研二が歌った「ヤマトより愛をこめて」であり、「勝手にしやがれ」の大野克夫が作曲、宮川がアレンジした。そして、翌79年にはテレフィーチャー版『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』の主題歌「サーシャわが愛」を島倉千代子が歌って話題となり、翌年の今作で布施と岩崎の登場と相成った。 以降も83年の『宇宙戦艦ヤマト 完結編』では、八神純子が主題歌「ラブ・シュープリーム〜至上の愛〜」を歌い、トランザムと桑江知子が挿入歌「明日に架ける虹」を… 桑江はソロで「二つの愛」も歌っている。 その後、しばらくのブランクを経て復活した2009年公開のシリーズで THE ALFEE へと至り、さらに近年の新シリーズでは平原綾香や神田沙也加まで。今後も続編が作られる度に新たなシンガーが起用されてゆくことだろう。そして、何より素晴らしいのは、亡き父・宮川泰の後を継いで、宮川彬良が作品の音楽を支え続けていることである。 ところで話は戻って、岩崎宏美「銀河伝説」とまったく同じ日に、やはり星をテーマにしたシングルがリリースされていたのをご存知だろうか… それはユーミンの16枚目のシングル「星のルージュリアン」。 こちらはポーラ化粧品の CM ソングであり、当時はポーラレディによってサンプル盤がたくさん配られたらしい。翌年の「守ってあげたい」で大ヒットを飛ばす前のシングルで、惜しくも当時はヤマトに気を取られてノーチェックだったのが悔やまれる。もちろん後から購入したものの、レコードは出た時にリアルタイムで買うことが一番望ましい。 レコード店という壮大な宇宙に漂う膨大な流星群の中からお気に入りの星(=レコード)を掴み出すのもまた、男のロマンなのだ。
2018.08.04
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