シン・仮面ライダーのルーツがここに!昭和アニソンの礎をつくった菊池俊輔と渡辺宙明からのつづき
その後の日本のアニメーションに多大な影響を与えた「宇宙戦艦ヤマト」、「機動戦士ガンダム」
1963年1月1日、国産初の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』の誕生と共に、現在に至るまで作品と同じ数だけのアニメソングが世に出たことになる。1960年代の揺籃期、1970年の充実期を経て、アニソンは1980年代に発展期に突入した、というのが私の持論である。
そしてその発展期の萌芽は、1970年代にあったと私は見る。それは、その後の日本のアニメーションに多大な影響を与えた2作、『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)と『機動戦士ガンダム』(1979年)の存在によるものだ。
その後の日本のアニメーションに多大な影響を与えた「宇宙戦艦ヤマト」、「機動戦士ガンダム」
漫画家の松本零士氏、SF作家の豊田有恒氏など錚々たるスタッフの力を結集し、『宇宙戦艦ヤマト』を世に出したプロデューサー・西崎義展氏。西崎氏の波乱に満ちた生涯は功罪相半ばとも言えるものではあったが、『ヤマト』という作品を生み出したこと、そしてアニメの音楽に一大革命を起こしたことのみでも、その名は永く語り継がれるべき存在だと思う。
宮川泰先生というオールマイティーな作曲家が関わることにより、ヤマトが旅する広大無辺の宇宙のスケール感と壮大なロマンを表すものとして、西崎氏が取り入れたシンフォニックな音楽は、作品世界に更なる深みを与えた。
ご存知「♪さらば地球よ 旅立つ船は…」で始まるオープニング曲「宇宙戦艦ヤマト」、そして「♪あの娘(こ)がふっていた…」ではじまるエンディング曲「真赤なスカーフ」。いずれもささきいさおさんの熱唱と相まって、そのスケール感と哀感に満ちたその曲調は、私たちの心に深く響いた。
汚染された地球を救う為に一路、イスカンダルに向かって旅立つヤマト。しかしそれは「必ずここへ帰ってくる」かどうか保証のない旅であった。
その設定は、勝利が約束されたカッコいいSFヒーローとは明らかに一線を画していた。そこにあったのは「冒険のロマン」プラス「宇宙規模の旅愁」と言えるものだった。音楽面でも本作ならではのそんな独自性が明確に表現されていた。
そんな力作であったこの作品だが、本放送時には低視聴率にあえぎ、3クールの予定が2クールで終了の憂き目に。しかしながら、その後の熱狂的な青年層の支持によりテレビ版の映像を再編集し1977年に劇場公開。
結果的に大ヒットを記録し、若者たちを中心としたその大きな波は社会現象となり、知名度も一気にアップしたことから拍車がかかり、その人気は爆発した。
70年代に誕生したエポックメイキング的作品、「機動戦士ガンダム」
そして、70年代に誕生したエポックメイキングな作品と言えば、今や日本のアニメ界において宮崎駿監督と並び称される存在、富野喜幸(現:富野由悠季)監督の出世作、『機動戦士ガンダム』(1979年)が挙げられよう。
本作は、建前としての作りは男児向けのロボットアニメであり、その主題歌「翔べ!ガンダム」(歌:池田鴻)も、「正義の怒りをぶつけろ ガンダム」という歌詞が象徴しているように、勇ましく健康的な曲だった。
『ガンダム』の内容は青年層を対象とした、成長過程にある若い男女が織りなす、ヒーロー不在とも言える青春群像的な物語であった。作品内容とは不似合いとも思われるその主題歌は、おそらく制作会社がスポンサーやテレビ局を説得するためにそうあるべきだったのであろう。
こちらも『ヤマト』に倣うかのように本放送時には決して人気番組たり得ることはなかったものの、青年層向けのアニメ情報誌では放送と同時進行で毎号のように特集が組まれ、いわゆるアニメファンの話題の中心となった。さらにはその後に劇場版三部作が公開されるや、その知名度も一気に上がることになる。
アニソンの隆盛は、上質な音楽を提供し続けた先達の功績があってこそ
アニソンの流れは、ゴダイゴが歌った「銀河鉄道999」(1979年)以降、大きく変わった。いわゆるアニソン歌手によるものばかりではなく、一般の歌手が歌うことも多くなったのである。いうまでもなく、「999」に続き、一般歌謡曲レベルでのヒットを狙ってのことであろう。『ガンダム』の劇場版主題歌であった「砂の十字架」(歌:やしきたかじん)や「哀 戦士」(歌:井上大輔)なども、これまでのアニソンの流れとは異なり、幅広い世代の支持層に向けられたものだった。
そんな百花繚乱の趣があった80年代以降のアニソン発展期は、ヒットチャートとも密接な繋がりを見せていた。「残酷な天使のテーゼ」や久石譲先生によるスタジオジブリ作品のようにスタンダートナンバー化したものばかりではなく、人気歌手が歌うアニソンは熱狂的な支持を受け続けている。
そして令和の時代となった今、「宇宙戦艦ヤマト」「飛べ!ガンダム」といった往年の名曲を思う時には、さすがに隔世の感を禁じ得ない。もちろん、それぞれの世代にとって “私の好きなアニソン” があるのは当然のこと。しかしながら、現在に至るアニソンの栄光の歴史を作り上げたのは、その黎明期に真摯な創作姿勢で ”童謡” の域を超える完成度を備えた、作品本編にまで影響を与える上質な音楽を提供し続けた先達の功績があってこそということだけは決して忘れてはならないと思う。
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2023.08.31