2023年 7月21日

サマーソニック2023 ヘッドライナー【Blur / ブラー】8年ぶりの最新アルバムも大傑作!

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サマーソニック2023のヘッドライナーに登場するブラー


2023年8月19日(土)、20日(日)、ブラーは『サマーソニック2023』でヘッドライナーとして演奏する。私にとって、この夏一番の大イベントだ。もう、ワクワクが止まらない。

そんなブラーは今年7月、8年ぶりのニューアルバム、『ザ・バラード・オブ・ダーレン』をリリースした。リリース前、私は本国イギリスにおける復活スタジアムライブを盛り上げるために、とりあえず新作つくりました的なテンション低めの作品になる可能性も否めない… と少し懐疑的に思いながらも、ここ数年、絶好調の活躍を見せているデーモン・アルバーンの才能爆発にも期待するという複雑な心境でリリースを待っていた。そして、彼らは文句なしの大傑作を私たちに届けてくれたのだ!

こんな状況でのサマソニのヘッドライナーなのだからワクワク感が爆発なのもご理解頂けるだろう。

大人のロックバンドの懐の深さが魅力


さて、8年ぶりの新作は、今までのブラーと比べると、かなり落ち着いた作風で、どこか暗い印象を与えるものとなった。しかし、先行シングルとして配信された2曲「The Narcissist」と「St. Charles Square」は思い切りブラーらしい “ひねくれブリティッシュポップ” を聴かせてくれる。どちらもグレアム・コクソンのギターが先導するサウンドは、“大人になったUKインディー” とでも言いたくなるような堂々としたロックナンバーだった。そのためアルバムもエレクトリックギターが鳴り響く作品になるだろうと予感させられた。

―― しかし、その予感は見事に裏切られた。

充実したデーモン・アルバーンのソロ活動


では、なぜ、彼らが暗く落ち着いた大人の音を鳴らすに至ったのかを考えてみたい。

ブラーとしては8年ぶりの新作ではあるものの、この間、デーモン・アルバーンはかなりの多忙を極めていた。特にヴァーチャル覆面プロジェクトであるゴリラズとして、ブラーでは全く開拓することができなかったアメリカのマーケットでも特大級のヒットを連発している。まぁ、一般的なアメリカの音楽ファンからしてみると、デーモン・アルバーンはブラーのメンバーとしてよりもゴリラズのメンバーとしての認知の方が圧倒的に強いだろう。

そのゴリラズは、今年2月にアルバム『クラッカー・アイランド』をリリースし、米ビルボードのアルバムチャートでも最高3位の大ヒットを放っている。この作品ではサンダーキャット、スティーヴィー・ニックス、ベックといった大物ゲストに加えて、2022年の米ビルボード年間アルバムチャート首位を獲得したバッド・バニーまでゲストに迎えて、最新型のダンスミュージックをポップな楽曲で聴かせてくれる。そのサウンドはカラフルで享楽的なまでに踊れるサウンドで、正に2023年のポップミュージックど真ん中を射抜いたようなサウンドだ。

流石、デーモン・アルバーン! 世界基準を軽々と超えるハイパーポップを楽勝で作り上げる手腕は見事としか言いようがない仕事っぷりだ。



そして、ゴリラズと平行してソロ活動にも積極的だ。直近のソロアルバムとしては、2021年にアルバム『The Nearer the Fountain, More Pure the Stream Flows』を発表している。このソロアルバムは、アイスランドの自然にインスパイアされた作品で、アンビエントなシンセサイザーとストリングをバックにアコースティックギターやピアノを弾き、静かに歌う作品となっている。とても深淵な音世界を紡いでおり、所謂、ヒットチャートを賑わすような音楽とは言えないが、気品と芸術性の高さは誰の耳にも明らかな作品だ。



オフィシャルチャートで初登場1位を獲得! 最優先されたロックバンドとしての強度


このようにデーモン・アルバーンは、ゴリラズではポップミュージシャンとしてヒット作を生み出し、ソロとしてはアーティスティックな評価を高める作品を作っている。相反する性格の作品なのだが、どちらもデーモンにとっては表現しなくてはならない創作欲求であり、その両方を手に入れたことは彼のアーティスト人生に計り知れない大きな収穫をもたらしたことだろう。

こうした状況が整うまでは、商業的成功と芸術的評価の両方をブラーとしての創作で手に入れるため、その時々のトレンドを利用したり、ブリット・ポップの狂騒に至っては自分たちがメディアどころか英国民を巻き込んだ一大ムーブメントを仕掛けたりと、かなり戦略的なバンド運営をしていた。こうしたスマートに何でもできてしまうイメージは、何だか有能なビジネスマンのような印象を与えるためか、芸術的な評価を高めることの足枷になっていたのではないだろうか。

しかし、2023年のデーモン・アルバーンは商業的成功も芸術的評価もすでに手中に収めている。こうした状況は2023年のブラーに商業性と芸術性の両立をノルマとして課す必要性は以前よりかなり低くなっていると考えられる。

しかし、こうしたノルマの解消とは裏腹に、今度は8年ぶりの復活作なのだから中途半端な作品は作れない! ロックバンドとして説得力のある作品を作らなければならないというプレッシャーに直面したのではないだろうか?

新作の目標設定をロックバンドとしての作品の質をとにかく高めることにおき、アルバム制作に臨むことで、今までのブラーよりもロックバンドとしての本質が剥き出しになり、世相を反映したある種の暗さやスローナンバーを収録した結果、大人のロックバンドとして申し分ない深みとポップミュージックとしてのバランスを最適化したアルバムを完成させることに成功したのだ!

充実した新作の本国イギリスにおけるチャートアクションは、当たり前のようにオフィシャルチャートで初登場1位を獲得した。また、前述した復活スタジアムライブもウェンブリー・スタジアムに9万人のオーディエンスを集め、今までのキャリアを総括するようなセットリストを演奏し、大成功を収めた。

その復活ライブにおいても、当初の予定ではウェンブリースタジアムの一回だけの予定だったが、充実した新作を作り上げたことが自信となり、ヨーロッパや日本をまわるツアーという形で規模が大きくなり、サマーソニック2023のヘッドライナーにも決定したのだろう。



ブラーの現在、そしてこれからは?


では今後、ブラーとしての活動が続いていくのかと言うとそれはなかなか難しいことのように思える。デーモン以外のメンバーもそれぞれの人生を生きており、すでにブラーが生活の中心とは言えない状況だ。

ギターのグレアムは、ソロ活動ではローファイな手作り感満載のインディーロックの好作品を作り続けながら、デュラン・デュランのサポートギタリストを務める等、幅広い活動を自由に展開している。

ベースのアレックスは、酪農を営み、チーズ職人としても高い評価を得ており、ブラーどころか音楽活動からは距離を置いている。ドラムのデイヴは政治活動を経て、弁護士資格を取得し、現在は弁護士として活動している。しかし、自分の最も優先すべき仕事はミュージシャンであると公言し、何と初めてのソロアルバムをリリースし、ミュージシャンと弁護士という二刀流の活動をしている。

このようにメンバーそれぞれが充実した活動をしていることを鑑みると、すでにブラーというバンドは彼らの人生における日常ではなく、特別な限られた時間の中で活動する場所になっているのだろう。そう考えると、ブラーの今後の活動は、何かのアニバーサリーや数年に一度のアルバム制作という形になる可能性が極めて高いし、もしかしたら、今回の新作が、最後の作品になる可能性も多分にはらんでいる。

こうした活動形態のロックバンドはたくさんいるし、ベテランになればなるほど、この傾向は強くなっていく。そして、メンバーもファンも和気あいあいな同窓会ノリになることが多いのだが、今回のブラーの復活作はそうした緩いノリはなく、2023年の今を生きる大人の男たちが感じる世界情勢への不安や、それでも前を向いて生ることの重要性が力強く打ち出されている。

現役バリバリのベテランゆえの説得力


正直なところ、今までのブラーは、楽しくてイケイケ、でも知的なバンドというのが私にとっての魅力だった。しかし、今回の彼らが打ち出した素のままの姿は、大人のロックバンドが鳴らす力強さと懐の深さを同時に感じさせるものになっている。

1991年、ブラーはアルバム『レジャー』でデビューしている。この時、私はブラーに対して “いんちきマッドチェスター” という印象を持ち、かなり軽薄なバンドだと感じた。この時点で32年後にイギリスの国民的バンドとして、ウェンブリースタジアムに9万人のオーディエンスを集め、フェスのヘッドライナーを務めるバンドになっていると想像した人はいるのだろうか?少なくとも私は1ミリたりとも思わなかった。しかし、彼らはアルバム制作を重ね、歴史を積み重ねることで2023年に大傑作アルバムを手にした。



その新作『ザ・バラード・オブ・ダーレン』は、「懐かしむより、超えていけ! そして、今を生きろ!」と私に強く訴えかけてくる。

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2023.08.20
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カタリベ
1972年生まれ
岡田ヒロシ
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