こちらもアイドル枠と言って良いだろうか。ポンキッキーズでの相方、安室奈美恵は1995年に「TRY ME 〜私を信じて〜」で一足先にブレイクしていたが、同年、鈴木蘭々もは歌謡界の巨人である筒美京平をコンポーザーに迎え満を持して歌手デビュー。私も大いに期待したのだがランキング的にはオリコン最高位29位に留まり、このクオリティでここまでか… と個人的にアイドル時代の終焉を実感した1曲でもあった。なお、チャートの話ばかりで恐縮だが、同じ1995年に20歳でデビューした相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」は最高12位、この曲で翌年のNHK紅白歌合戦に初出場を果たしている。歌手がブレイクするための方程式は時代とともに変化したのだ。
19才にして「Don't wanna cry」で史上最年少のレコード大賞を受賞し名実とともに日本音楽界のトップに上り詰めた安室奈美恵。その後「CAN YOU CELEBRATE?」という金字塔的代表作の発表を経て、20歳の誕生日を迎えたその翌月の「妊娠・結婚」という報道に世間は仰天した。産休前のラストシングルとなった「Dreaming I was dreaming」。この曲のジャジーでメロウな佇まいからは、もはや20歳にしてすべてやりきったような、達観している感じすら受ける。
For My Dear… / 浜崎あゆみ(1998年10月7日発売)
安室奈美恵の産休という巨大な穴。その間隙を縫うかのように女性ボーカリストのデビューが相次いだのがこの1998年であったが、4月に「poker face」でデビューした浜崎あゆみが、歌姫の座に君臨するのはあっという間の出来事だった。20歳の誕生日の翌週にリリースされた4枚目のシングル「For My Dear…」では、「♪いつの日か言いたい…」というストレートな歌詞の中に、ボーカリストとしての自分自身が巧みに投影されている。翌1999年の元旦にリリースされたファーストアルバム「A Song for ××」は初登場1位のミリオンセールスを記録。ここから本格的に浜崎あゆみの時代が始まる。
余裕と貫禄すら感じられる20歳のMISIA
BELIEVE / MISIA(1999年4月21日発売)
もうひとりの1998年デビューの歌姫がMISIAである。先述した浜崎あゆみとは同じ1978年生まれの同学年。彼女が20歳の時にリリースしたシングルはこの「BELIEVE」のみであるが、完成された彼女のボーカルからは余裕と貫禄すら感じられる。この時点で20歳というのが信じられない位だ。そして、ここから20年後の2019年、これも20歳の時のリリース曲である「INTO THE LIGHT」を紅白歌合戦のトリでメドレーで披露。その後5年連続で大晦日のトリを務める未来を20世紀の時点で誰が予想できただろうか。