あのクソほど暑かった夏が、まるで大昔のように感じる今日この頃だが、皆さんは「秋」と言えばどんな曲を思い浮かべるだろうか?
僕の場合だと、例えば、エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエットによる「ニューヨークの秋(Autumn In New York)」。
―― ジョージ・ガーシュウィンの弟子であるヴァーノン・デュークが書いた曲で、1934年初演のブロードウェイ・ミュージカル『サムズ・アップ!』のクロージングナンバーとして使われた。49年にはフランク・シナトラの歌でヒットしたので、そっちの方が有名かも。
あるいは、シャンソンの名曲「枯葉(Les Feuilles Mortes / Autumn Leaves)」。
―― 46年公開のフランス映画『枯葉~夜の門~(Les Portes de la Nuit)』の挿入歌としてイヴ・モンタンが歌ったが、その後もジュリエット・グレコ、ビング・クロスビー、ナット・キング・コールらによってカバーされた。
この曲については、96年に33歳の若さで夭折したシンガー、エヴァ・キャシディのライブアルバム『ライブ・アット・ブルース・アレイ』に収録されたバージョンも秀逸だ。彼女については、その存在が世界的に認知されたのが亡くなった後だというのが、本当に残念である。
それはともかく、ここに挙げた2つの曲は、いずれも20世紀前半に作り出されたものだ。で、どうして僕がそんな古い曲を持ち出してきたかと言うと、正直なところ、ポップスの秋曲をあんまり思い浮かべられなかったからだ。
無理して捻出すれば、ママス&パパス「夢のカリフォルニア(California Dreamin')」、ザ・キンクス「オータム・オルマナック」、ヴァン・モリソン「ムーンダンス」、アース・ウインド&ファイアー「セプテンバー」くらいは出てくるが、せいぜいこんなところしかない。
僕が思うに、50年代~60年代頃に誕生したポップミュージックという音楽ジャンルは、その時代背景ゆえに「大量生産・大量消費」時代の産物であると言える。そのせいで、消費行動に結びつきやすい「夏」や「クリスマス」をテーマにした方が、ずっとしっくり来るのだと思う。
そんな中、少々無理しつつも僕が紹介したい秋曲は、ガンズ・アンド・ローゼズの「ノーヴェンバー・レイン」 だ。87年にデビューしたこのバンドのファン層は、おそらく僕たちより少し下の世代だと思うし、僕自身もこのバンドのことはほとんどノーマークだったが、何故かこの曲のビデオクリップだけは覚えていた。
特筆すべき点は2つ。このビデオは、92年の MTV ビデオ・ミュージック・アワードで最優秀撮影賞(Best Cinematography)を受賞したが、米国のビジネス誌『Forbes』によると、今年、その YouTube 動画再生回数が、90年代にリリースされた楽曲で初めて10億回(!)を超えたそうだ。
ちなみに、このビデオの制作費は、当時としては破格の150万ドル(当時の為替で約2億円!)。当時スーパーモデルブームを牽引した一人であるステファニー・シーモアも出演している。
10億回にしても、150万ドルにしても、何だか凄い話だが、とにかくこの曲の動画を観て、少しでも秋の深まりを感じてもらえたら幸いである。
Song Data
■Guns N' Roses / November Rain
■作詞・作曲:Axl Rose
■プロデュース:Mike Clink, Guns N' Roses
■発売:1992年2月18日
2018.11.08
YouTube / Guns N' Roses
Apple Music
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