2018年早々、十数年来私の大好きなギタリスト藤岡幹大さんが1月5日に亡くなったとツイッターで知り大ショックを受けてから、2月7日にはパット・トーピーが死去との悲報。それからミスター・ビッグを聴き漁り、久しぶりにこのアルバムも聴いた――
パット・トーピーはミスター・ビッグのドラマーとしてデビューする前、1988年6月にリリースされたインペリテリの1stアルバム『スタンド・イン・ライン』の制作に参加していた。
インペリテリは、若きギタリストのクリス・インペリテリとヴォーカリストのロブ・ロックにより結成され、1987年にミニアルバムEP『インペリテリ』をリリースしていた。当時、フルピッキング世界最速との噂を耳にして、その名を知り、程なく「スタンド・イン・ライン」のMVで彼らを見ることができた。
そのMVには数々のビッグギタリストと組んでは離れ、バンドを渡り歩いてきた大物ヴォーカリスト、グラハム・ボネットと、それに引けを取らないクリス・インペリテリの姿があった。私は当時そんな彼らの姿に魅せられてインペリテリを聴いていた。
アルバム『スタンド・イン・ライン』ではグラハム・ボネットの知名度と引き換えになったのか、忖度だったのか、グラハム色の濃い楽曲が多いような感じがした。アルバム2曲目の「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」(原曲はラス・バラード)はレインボー時代から歌い続けてきたグラハムの持ち歌のようなもの、アルカトラスでも歌っていたこの曲がアルバムに入っていることからもその影響力が垣間見えた。
おそらくグラハム・ボネット加入の伏線としては、アルカトラスからイングヴェイ・マルムスティーンが脱退し、その後釜ギタリストのオーディションをクリス・インペリテリが受けたことが挙げられるだろう。ここで実際に採用されたのはスティーブ・ヴァイだったが…。そして、当のアルカトラスは1987年に解散となり、タイミングもよかったのだろう。
ロブ・ロックのハイトーンヴォーカルにギター弾き倒しのHMスタイルもいいと思うのだが、結果的には『スタンド・イン・ライン』でのグラハム起用は、一躍インペリテリの名を広めることになった。しかし、次のアルバムを待たずしてグラハムは脱退。どうやらクリスから熱望されての加入だったようである。
その後、インペリテリはメンバーチェンジを繰り返すも解散することなく活動し続ける。2011年にはクリスが『アニメタルUSA』のギタリストとして参加したりもしていたが、私は彼のギターを聴くたび、彼があの頃のような “HR/HMスタイル” の夜明けを待ちわびている一人のように感じるのだった。
最後に―― このコラムの主線からは外れてしまいますが、80年代からセッション、バンドドラマーとして活躍し続けたパット・トーピー、81年生まれで音楽を探求し練習し続けた天才ギタリスト藤岡幹大、その名を忘れることはないでしょう。
2018.03.15
YouTube / EddieA10
YouTube / Dominic Croch
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