10代の頃、僕にとって音楽の情報源といえば雑誌は『rockin’on』、ラジオは『サウンドストリート』だった。渋谷陽一に誘導されるかのように次に買うレコードはこのふたつの情報源から厳選して決めていたように思う。
1978年に渋谷陽一プロデュースで『rockin’on』の創刊メンバーのひとり松村雄策の1stアルバム『夢のひと』が発売された。『サウンドストリート』でもアルバムから何曲か放送され、もっと聴いてみたいとも思ったのだが、当時のお小遣い事情では僕のレコード購入リストには入らなかった。
松村雄策はアルバムを3枚、シングルを3枚発売しているが、現在は全て廃盤になっている。オークションに出品されると高値がつくとも聞く。入手できないとなると欲しくなったりするのだが、現在のお小遣い事情でもやっぱり購入リスト入りは無理そうだ。
10数年前、近所の公園で開かれていたフリーマーケットに行った時のこと。何かいいものはないかなとぶらぶら物色をしていると、あるブースの片隅にレコードが並べられていた。値段を見ると「LP50円 シングル10円」と大雑把な均一料金が書いてあった。
こんな投げやりな料金が設定されたレコードの中に掘り出し物があるはずがない、そう思いながらもひとつひとつ見ていくと予想を裏切らない品揃え。やっぱりね~と思った途端に手が止まった。
目の前には松村雄策の2枚目のシングル「グリーン・ライト」があったのだ。
掘り出し物! しかも10円! やるじゃんフリーマーケット! ニヤニヤしながら10円を払うと出店者が「50円です」と言う。「シングルだから10円でしょ」とケチくさい返しをすると出店者は困った顔をしている。よく見ると中学生ぐらいの少年だった。
どうやら実際の出店者はこの少年の親で、たまたま留守番を頼まれていた時に僕が声をかけたようだ。「LPはこっちで、これはシングル」と教えてあげると驚いたように「この大きさでシングルなの?」と。少年にとってはCDの大きさが基準になっているようで、CDより直径が大きいレコードがシングルのはずがないってことだったのだ。
少年とちょっと楽しいやり取りをしながらも、買ったレコードを見ながら心苦しさを感じた。フリーマーケットとはいえレコードの値付けにも礼儀というものがあって欲しいな。
さすがに10円は失礼だと思わない?
2017.08.23
グリーン・ライト / 松村雄策
だから!! / 松村雄策
Information