6月1日

距離感はロバート・パーマーから学べ!ブラックミュージックと寄り添うクールな視点

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ロバート・パーマーのアルバム「シークレッツ」がリリースされた日
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ロックとブラックミュージックの融合、全ての作品が一聴の価値あり!


本サイト Re:minder の検索機能を使って “ロバート・パーマー” と検索してみる。すると、ロバート・パーマーのコラムは、ソロとして1986年に大ヒットした「恋におぼれて(Addicted To Love)」や「ターン・ユー・オン(I Didn’t Mean To Turn You On)」が収録されているアルバム『リップタイド』にまつわるもの、また、スーパー・プロジェクトとして話題を集め、1985年にリリースされた『ザ・パワー・ステーション』に関するものが書かれているもののみで、それ以前のロバート・パーマーの作品に関するコラムが1つもない(2020年6月現在)。これって、実にもったいない話ではないか!

ザ・パワー・ステーションにより一躍脚光を浴び、続いて発表した『リップタイド』からの「恋におぼれて」が全米No.1の大ヒット… というのが、80s的文脈でのロバート・パーマー評だろう。しかし、1974年のデビュー作にして超絶歴史的名盤中の名盤『スニーキン・サリー・スルー・ジ・アリー』の時点でロバート・パーマーの音楽性と方向性はほぼ完成している。リトル・フィートのローウェル・ジョージやミーターズをバックに従えて、ニューオリンズ・ファンクとアメリカン・ルーツロックがミクスチャーされたズブズブのごった煮サウンドを聴かせてくれる。

これ以降もロックとブラックミュージックの融合を試み続け、全ての作品が一聴の価値ある傑作揃いだ。

5枚目のソロアルバム「シークレッツ」の魅力


1979年6月1日、ロバート・パーマーは5枚目のアルバム『シークレッツ』をリリースする。デビュー当時のズブズブ感からは、かなり音が整理され、聴きやすい作品になっている。ロバート・パーマーのボーカルも表現力、リズム感、セクシーな声、全てがロックボーカリストの最高峰に到達している。

シングルカットされた「想い出のサマー・ナイト(Bad Case Of Loving You)」は、ザ・パワー・ステーションの原型になったのではないかと思わせるノリノリのロックンロールナンバーだ。ビルボードチャートでも最高位14位まで上昇し、アルバムも同チャート19位のヒット作となり、自身初のトップ40アルバムとなっている。

また、本作に収録の魅力的なカバー曲「愛の絆(Can We Still Be Friends)」にも注目したい。オリジナルはトッド・ラングレンの『ミンク・ホロウの世捨て人(Hermit of Mink Hollow)』に収録されている名曲だ。原曲は、トッド自身によるマルチレコーディングによるクールで抒情的な作品だ。ロバート・バージョンも原曲からはずれたアレンジではないのだが、バンドによる抑制されつつもグルヴィーな演奏とトッドとは正反対の中低音を効かせたボーカルが個性を際立たせている。

パワー・ステーションだけじゃない!「恋におぼれて」だけじゃない!


前述した2曲以外の曲も極めて粒ぞろいでブルーアイド・ソウル作品としても、きたるべき未来に向けてのミクスチャー・ロックの作品としても最高の部類に入る傑作だ。だから、ロバート・パーマーの魅力について、ザ・パワー・ステーションや「恋におぼれて」の80年代の活躍のみで語られてしまうのは、実にもったいない話である。と言うか、お話にならんというのが私の持論だ!

特に70年代の作品では、白人ロックシンガーが、どれだけソウルフルにファンキーにロックできるかという果敢なチャレンジに試み、ことごとく高いレベルのアルバムを仕上げている。また、ザ・パワー・ステーション以前の80年代の作品では、シンセサイザーや打ち込みを積極的に導入し、ニューウェーブに影響を受けつつもソウルフルでクールな作品を作り上げている。文字にすると簡単だが、そんなアーティストは他に誰がいるのだろうか?

憧れの音楽に対する距離感とクールなミクスチャー感覚


このようにロバート・パーマーは常に黒人音楽をロックに取り入れて、時代の半歩先を行くレコードを作ってきた人だ。60年代後半から白人ロックミュージシャンはアメリカのルーツミュージックを取り入れ、新たな表現を獲得してきた。

ザ・ローリング・ストーンズは南部に赴き、『ベガーズ・バンケット』を皮切りに名盤を次々に作り上げていった。エリック・クラプトンは、クリームでのインプロビゼイションに疲れ果て、ストーンズ同様に南部でレイドバックした空気を目いっぱい吸い込み、『いとしのレイラ(Layla and Other Assorted Love Songs)』をものにした。レッド・ツェッペリンや80年代のU2も同様なのではないだろうか。こうした多くのロックミュージシャンのルーツ探究は憧れに近づくための巡礼の旅のように感じるのだが、ロバート・パーマーの黒人音楽への接し方は随分と違うように思えるのだ。

ロバート・パーマーは、黒人音楽に対する強い憧れがあることは間違いない。しかし、それ以上に自らの音楽に取り入れる対象として黒人音楽を冷静に分析していたのではないかと強く感じる。その証拠に多くのミュージシャンがルーツミュージックに接近すると、髪型やファッションまで変わってくるが、ロバート・パーマーは常にイタリア製のスーツに身をつつみ、髪もヒゲも伸ばすことはなかった。また、音楽的にもブラックミュージックの流行をあからさまに取り入れるような下品なやり方は一切しない。強固に自分のスタイルを持っていて、取り入れるべきブラックミュージックとの距離感も常に冷静に対象化できているのだ。

ロバート・パーマーに学ぶ距離感の保ち方


ザ・パワー・ステーションは、セックス・ピストルズとシックとハードロックを掛け合わせた音楽性を具現化させるためのプロジェクトであったと言われている。ボーカリストの選考もミック・ジャガーやビリー・アイドルに声をかけたという話もあるようだが、最終的にロバート・パーマーに白羽の矢を立てたのは、ジョン・テイラーの一見無茶苦茶に思えるバンドの青写真を実現するためには、ロバート・パーマーのクールなミクスチャー感覚がバンドの肝になるという狙いがあったからではないだろうか。

そう、音楽をミックスする際におけるクールな視点は、ヒップホップ以降の現在のポップミュージックにおいては極めて重要な要素だと言える。サンプリングするネタを吟味し、それを分解し、別のものへと再構築する手法と感性は絶対に今日のポップミュージックに必要なセンスとスキルなのだ。

ロバート・パーマーは残念ながら2003年に他界し、帰らぬ人となっているが、彼の残した黒人音楽に対するクールな視点は、物まねや憧れの域から一歩踏み出すための重要な感性であることを21世紀のポップミュージックに教えてくれている。

我々、聴き手もこうした構造に意識的になり、音楽に接することにより、今のポップミュージックをより深く楽しむことができるわけだ。こうした距離感の保ち方を理解しないと、21世紀のポップミュージックを聴いても、その本当の面白味を味わうことは難しいだろう。

自分の青春時代に聴いた音楽を懐かしむのも大人の音楽の楽しみ方の1つだろう。しかし、往年のロバート・パーマーのように新しい音楽にもアンテナを張って、自らの感性を磨き、“懐かしむより、超えていく” 音楽人生の後半戦を共に歩もうではないか!


追記
私、岡田浩史は、クラブイベント「Fun Friday」(吉祥寺 伊千兵衛ダイニング)で DJ としても活動しています。インフォメーションは私のプロフィールページで紹介しますので、併せてご覧いただき、ぜひご参加ください。


2020.06.17
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カタリベ
1972年生まれ
岡田浩史
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