11月12日

ナイル・ロジャース、マドンナをプロデュースしたシックという劇薬

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photo:WARNER MUSIC JAPAN  

突然だが、音楽ファンは、音楽オタクになる人とならない人に分けられると思う。そして、おそらくその分岐点の1つに「演者だけでなく、作り手にも関心を持つ」というのがある。

実を言うと、僕自身も人から音楽オタクだと言われることがあるが、もしそうだとしたら、そのきっかけはシックのナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズの存在だ。

なにしろ1980年代に彼らがプロデュースした中で、ビルボードの Hot 100(シングルチャート)で1位になった楽曲だけでこんなにあるのだ。

■ ダイアナ・ロス「アップサイド・ダウン」
(80年9月6日 全米1位)

■ デヴィッド・ボウイ「レッツ・ダンス」
(83年5月21日 全米1位)

■ マドンナ「ライク・ア・ヴァージン」
(84年12月22日 全米1位)

■ デュラン・デュラン「007 美しき獲物たち(A View To A Kill)」
(85年7月13日 全米1位)

■ ロバート・パーマ-「恋におぼれて(Addicted To Love)」
(86年5月3日 全米1位)

彼らはこの他にも ABC、ジョディ・ワトリー、ロッド・スチュワートら多数のアーティストをプロデュースしているが、これだけあれば彼らに興味が行くのも無理はないと思う。

一方で、アーティストにとって、彼らにプロデュースを依頼すれば単純にハッピーかと言えば、必ずしもそうではないようにも思える。

例えば、「レッツ・ダンス」はデヴィッド・ボウイにとって最大のヒットとなったが、同時に最後のNo.1でもあった。また、ダイアナ・ロスのNo.1ヒットは、「アップサイド・ダウン」以降はデュエット曲しかない。

バーナード・エドワーズと親交のあったクイーンのベーシスト、ジョン・ディーコンは、シックの「グッド・タイムス」に影響を受けて「地獄へ道づれ(Another One Bites The Dust)」を書いたが、それがクイーン最大のヒット曲となった。しかし、あまりにも「らしくない」楽曲だったことが、バンドの死期を早めた気がしてならない。実際、この曲が彼らにとって最後のNo.1となった。

つまり、何が言いたいかというと、ナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズ、この2人が楽曲に及ぼす影響力には、アーティスト本来の「らしさ」を奪うリスクがあったということだ。

その点で、この影響力をうまくレバレッジ(=テコに)して成り上がったのがマドンナだと思う。「ライク・ア・ヴァージン」は彼女のキャリア初のNo.1ヒットである。では、彼女は他のビッグアーティストたちと何が違ったのだろうか?

「ライク・ア・ヴァージン」のレコーディングを始めた時、彼女はまだ世界的なアーティストではなかった。この曲を書いたビリー・スタインバーグとトム・ケリーの2人は、当時マドンナが誰なのか本当に知らなかったらしい。つまり「らしさ」も何もなかったということだ。

そもそもマドンナにとっての商品とは彼女自身であり、楽曲はその構成要素の一つに過ぎない。彼女は数多くの映画にも主演し、ヌードにもなり、マリリン・モンローとも比較されたが、それもこれも彼女の高度な自己演出力の賜物である。

要するに、マドンナのプロデューサーは、どこまで行ってもマドンナ自身なのだ。


Song Data
■Like A Virgin / Madonna
■作詞・作曲:Billy Steinberg, Tom Kelly
■プロデュース:Nile Rodgers
■発売:1984年11月6日


※2016年2月11日に掲載された記事をアップデート

2018.08.16
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ジュリー
マドンナ大好きです💕ジュリー沢田研二の次にすごいアーティストだと思います!
2018/08/19 02:49
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カタリベ
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