6月5日

音楽が聴こえてきた街:がんばれ!ライブハウス

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RCサクセションのアルバム「RHAPSODY」がリリースされた日
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photo:UNIVERSAL MUSIC  
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ハッシュタグは #がんばれライブハウス


3月20日現在(編集注:2020年)、新型コロナウイルス騒動は収束の気配を見せず、政府は各方面へのイベント開催に慎重な対応を求めている。少し前にはライブハウスからの感染が確認されたことからも、ライブハウスや観客への風当たりの強さも相変わらずだ。

そんな渦中、音楽ファンの心中は察するに余りあり、ツイッターでは「#私の好きなライブハウス #がんばれライブハウス」といったハッシュタグを数多く見かけた。そこには音楽ファンの得難い思い出とこの場所への感謝の気持ち、そして一刻も早く世間の誤解を解きたいというまっすぐな気持に溢れていて、僕も胸が熱くなっている。

ライブハウスのイメージそのもの、RCサクセション「RHAPSODY」


僕がライブハウスという言葉を初めて聞いたのは、中学1年の時レンタルレコードで借りたRCサクセションの歴史的名盤にして、当時の熱狂を余すところなくパッキングしたアルバム『RHAPSODY』だった。

 そしてもう一人 忘れちゃならないぜ
 いつもオレ達と一緒にやってる
 ライブハウスで
 メタメタ弾きまくってた
 こいつのギターを聞いてくれ
 小川銀次!

アルバム1曲目に収録されているファンお馴染みの「よォーこそ」の一節だ。清志郎さんのシャウトと共に炸裂する、ずっしりと重く歪んだ早弾き。レコードをターンテーブルにのせた僕は、セッションギタリストとして RC に参加していた小川銀次さんの奏でる今まで聴いたことのなかったエレキギターの洪水にのまれて、どこか遠い場所に連れて行かれたような錯覚に陥った。

それと同時に『ライブハウス』というワードが眩しく、かつこの場所に辿り着くであろう近い将来を夢見てワクワクしたものだ。このアルバムは周知の通り、RC の久保講堂におけるライブを収録したものだが、僕にとっては、ここに凝縮されている熱狂こそがライブハウスのイメージそのものであり、その思いは今も変わっていない。モット・ザ・フープルやローリング・ストーンズのスタイルを昇華させ、ロックンロール・バンドに変貌した RCサクセションの熱量がピークに達した瞬間の記録ではないだろうか。

BOØWY 氷室京介の名セリフ「ライブハウス武道館へようこそ!」


僕は中学3年の時、新宿ルイード、新宿ロフトという2つのライブハウスを体験して、そこから30年以上、ライブハウスに行くという行為は自分の中でごく当たり前の日常のヒトコマになった。同時にその場所で観て巣立ったバンドには特別の思いがあるし、ザ・モッズのようにホールでしか観れなかったバンドをライブハウスで観た時の万感の思いは、心の中で熟成し、自分のアイデンティティとなっている。

だから、氷室京介さんの名セリフ「ライブハウス武道館へようこそ!」にも様々な思いが駆け巡ってくる。この言葉は1986年7月2日、BOØWY初の武道館公演のワンシーンだ。このMCを発した時に演奏された曲が、彼らのファーストアルバムに収録され、試行錯誤を重ねたライブハウス時代からの定番曲「IMAGE DOWN」だったことからも、彼らの辿ってきた道のりが垣間見られる。また、ライブハウス時代からずっと応援し続けてきたファンの矜持、そしてその時代を観ることができなかったファンの羨望… アーティスト、ファンそれぞれの思いが交差する感慨深いワンシーンだったように思う。

ライブハウスから武道館へと駆け上るアーティストは砂漠の中の一握の砂のようにごく僅か。観客とフロアが一体化した狭い空間で、汗と煙草と酒の匂いにまみれた日々を胸に、自分を貫いてきたアーティストたち。そして、そんなライブハウスで大好きな音楽と接することが出来たファンにとっては、まさしく神聖で得難い場所なのである。

すべての観客が当事者、伝説の瞬間を発信・共有できる時代へ


日本におけるライブハウスという文化を俯瞰してみると70年代に増えはじめ、80年代のバンドブームで一気に拡大した。インクスティック芝浦ファクトリーのような規模の大きいハコでは、来日公演なども盛んに行われ注目を集めていく。この流れから90年代になると、渋谷の ON AIR(現在のO-EAST)、同じく渋谷の AX や赤坂BLITZ などが相次いでオープン。清志郎さんが「ライブハウスでメタメタ弾きまくってた」とシャウトした時代から考えると、僕らが受ける印象も大きく変わってきた。そして現在は SNS の普及もあり、それまでの閉鎖的な空間というパブリックイメージを脱却し、すべての観客が当事者となり、伝説が生まれる瞬間を発信・共有できる時代となっている。だからこそ、この音楽の発信基地を絶やすわけにはいかないのだ。

先日、下北沢のとあるライブハウスのオーナーとやりとりをした時、「今が踏ん張りどころですね」という返信があった。そう。世間の風評に流されて落ち込んでいる場合でも嘆く場合でもないのだ。現在、僕の知る限りほとんどのライブハウスでは、手洗いの慣行、消毒と換気に細心の注意を払うなど試行錯誤の中、存続に心血を注いでいる。だからこそ、流されることなく、煽られることなく正しい知識を持って適切な行動を。僕ら音楽ファンの思いはずっと変わらない。いつかこの騒ぎが笑い話になる日が来るはずだから。

2020.03.22
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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