7月6日

1988年夏、RCサクセション、ブルーハーツ、佐野元春、そしてミュートビート

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きっかけはチェルノブイリ、音楽業界も巻き込んだ反原発の動き


1980年代後半、それなりに大きな反原発の動きがあった。それをブームと言ってしまうと語弊があるのかもしれないが、少なくとも僕の中ではブームで終わった。事実だから今さら取り繕っても仕方がない。ただ、喉に小骨が刺さったような違和感は30年以上経った今なお続いている。

きっかけは1986年4月に起こったチェルノブイリの事故だった。翌年に発売された広瀬隆の『危険な話』は大ベストセラー、反対運動なども各地で行われ、88年の『朝まで生テレビ』では年間12回放送のうち2回も原発ネタを取り上げている。

音楽業界においては、反原発と睨まれたRCサクセションのアルバム『COVERS』を東芝EMIが発売中止にして清志郎が大激怒(レーベルを変えキティレコードから発売した)、ブルーハーツのシングル「チェルノブイリ」も所属のメルダック(三菱電機の子会社)から発売できず自主レーベルでの発表。佐野元春は自身のラジオ番組で日本のプロテストソング特集を組もうとするもクレームが入り頓挫、その落とし前をつけるかのように「警告どおり 計画どおり」という攻撃的なシングルをリリース。そんな動きもあってか、僕は反体制的な雰囲気に酔っていた。

ミュートビート「キエフの空」月日を重ねるたびに増す重み


ミュートビートの『LOVER’S ROCK』も、そんな88年に発売されたアルバムだった。ジャケットはスリーマイル島の原発を写したインパクトのあるもので、B面に「キエフの空」という曲が入っていた。当時ソ連下でウクライナの首都であるキエフ、そう、チェルノブイリ原子力発電所があった場所である。

知らない人のために書いておくと、ミュートビートは日本の音楽シーンに初めて登場した本格的なレゲエ・ダブバンドで、ボーカルはいない。小玉和文(tp)、屋敷豪太(ds)、朝本浩文(key)、宮崎泉(dub-mix)らが在籍していたと言っても知らない人には何のこっちゃだろう。しかし、自信を持って言うが、ここまで雄弁に人の心を揺さぶってくる音楽なんてそう滅多に存在しない。年月という荒波にも耐え、全く劣化しないどころか、月日を重ねるたびに重みが増し、その音はよりリアルに伝わってくるようになった。

チェルノブイリでの事故から25年後、日本では福島で大事故が発生し再び反原発ブームが起きた。僕は僕で、自分の喉に刺さった小骨くらいはなんとか取り除きたい。


※2016年5月10日に掲載された記事をアップデート

2020.07.06
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1966年生まれ
太田 秀樹
1988年というと「バブル!」のパブリックイメージが頭に思い浮かぶかもしれませんが、こんなこともありました。当時大学生の僕はバブルの実感などないのですが、景気が良かったことは事実で、文化面においても非常に多種多様な選択ができた時代のような気がします。景気が良くないと物事が画一的になっていく傾向はありますね。
2016/05/13 04:58
1
返信
1970年生まれ
ジャン・タリメー
そうなんです.Fukushimaがあって以来,僕が最初にしたこと,僕にできることは何かと考えたことは,原発ソングを集めてCDをつくることでした.もちろん販売とか,音質とか,そんな諸々のことはどうでもよくて,何かすること.「東電にhairo」とか,ランキンとか,とかとか.その十数曲の最後に入れたのがこの曲でした.誰にも伝わらないだろうと思いつつ.でも,この曲ではいつも感極まるんです.
2016/05/10 22:58
8
返信
カタリベ
1966年生まれ
太田秀樹
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