ショートカットで歌っている頃の小泉今日子を見ると、私はつい、女子の目線より、男子の目線で彼女に釘付けになってしまう。
健康的に引き締まった体と、くるくると変わる表情。キラキラとした瞳、なにかしでかしそうな、いたずらっぽい笑顔にハートを鷲掴みにされる。
彼女が刈り上げショートに学ラン姿で雑誌『DUNK』の表紙を飾ったのは有名な話だけれど、私がもし当時の高校生男子だったら、部活終わりに部室で「小泉今日子ってかわいいよな~」とか言いながら男たちで回し読みをするはずだ。それまでの、可愛らしいフェミニンなアイドルとは違って、一緒にバカ騒ぎしたり、スポーツだってできちゃいそうな彼女は、男子高校生の「理想の彼女」だったと思う。
小学生の時にいた、野球チームやサッカーチームに1人だけ入ってる女の子… みたいな感じがあって、私はそういう女の子を少なからず羨ましいなと思って生きてきた。
同じ高校にいたら、いつも男友達とつるんで、「コイズミ!」なんて呼ばれたりして、男子達の中で特別な立ち位置にいそう。で、みんなキョンキョンのことが好き(笑)。そんな妄想を掻き立てるキョンキョンのチャーミングさは、いつまでも衰えることがない。
明るくて元気があって、屈託無く笑う、自由で開放的な姿は、年齢を重ねても変わらず、いつまでも少女のようで愛くるしい。
さて、前置きが長くなってしまったけれど、1984年3月21日発売のシングル「渚のはいから人魚」の話をしたい。小泉今日子が9枚目にして自身初の週間オリコンチャート1位を獲得した曲だ。
デビュー当時のふわふわヘアスタイルと、王道アイドル路線の曲とは異なる、キョンキョンらしさが確立されている。危うくて、いたずらっぽくて、ドキドキする。放っておくとどこかに行ってしまいそうな、そんな、男の子の手には負えない、魅惑的なキュートさがよく現れている。
まず、「渚のはいから人魚」というタイトルが彼女にピッタリだし、「ズッキン ドッキン、ズッキンドキン…」とコーラスが流れると、こちらの鼓動も速くなる。
あっち向いてて ダメよのぞいちゃ
―― なんていたずらっぽく歌われたら、のぞきたくなってしまうし、「大きく NG」と言ったあと、囁くように「ちいさく OK」なんて言われたら、ずるいなぁ、と思いつつキュンとしてしまう。
そういうキョンキョンのペースに乗せられて、翻弄されてしまうのが、この曲の魅力だ(キョンキョンの他の曲にも言えることだけれど)。人魚は伝説上、歌で男たちを誘惑し、船を沈める… なんて言われてきたけれど、80年代に現れた「はいから人魚」は、ブラウン管を通して、多くの男子の心を誘惑したことであろう。
私はこの曲の「男の子って すこし悪い方がいいの」という歌詞が好きなのだけど、本当に少し悪い方がいいのかどうかは、22の私にはまだ答えを出しかねるところである。
2019.03.20
YouTube / Victor Entertainment
iTunes / コイズミクロニクル~コンプリートシングルベスト1982-2017
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