2月5日

新しい発見に感動!八神純子「想い出のスクリーン」時代を超えるシティポップ

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八神純子「みずいろの雨」の衝撃


ポプコン(ヤマハポピュラーソングコンテスト)入賞を経て、1978年1月に「思い出は美しすぎて」でプロデビューした八神純子。同年10月にリリースした「みずいろの雨」の大ヒットでブレイクした後もヒットを連発し、80年代初頭にトップアーティストとして活躍した。

当時の歌謡界は、フォークやロックから派生したニューミュージックがヒットチャートを席巻し始めた時代。男性ではアリス、世良公則&ツイスト、矢沢永吉、松山千春、サザンオールスターズ、女性では渡辺真知子、庄野真代らがヒットチャートを賑わせていた。

その旗手のひとりとして、ピアノを弾きながらハイトーンボイスで歌う彼女の登場は衝撃だった。当時は小学生の私でさえ、ピンクレディーや百恵、秀樹らと同列でクラスの話題にしたくらい存在感があったと思う。



聴きどころ満載の「想い出のスクリーン」


その八神さんが「みずいろの雨」の次に出したシングルが、今回のテーマとなる1979年2月5日発売の「想い出のスクリーン」である。この曲は「みずいろの雨」ほど派手さはないが、ミディアムテンポのマイナーメロディーに彼女のクリアボイスが調和し、心に染みる味わいがあった。

特にサビは聴きどころ。「言葉にすればよかった~~ぁん」の声の丸め方、「見っつめって~」の声の溜め具合は絶品で、何度も聴きたくなる。実際にこの曲はオリコンランキングで最高12位に留まるも、『ザ・ベストテン』では最高7位で8週もランクイン。彼女の歌唱を何度も見たい、聴きたいという声が多かった証だろう。

また、この曲は歌唱以外にも聴きどころが多い。大村雅朗さんのラテン風アレンジ、後藤次利さんのベース(特に間奏)、松原正樹さんのギター(特にアウトロ)など、高次元の演奏が味わえる。彼らは八神さんの他のシングルにも関わっているが、細部まで作品作りに徹している点に、彼女が所属していたヤマハの矜持が感じられる。

ただ今回は三浦徳子さんの歌詞に着目し、私の記憶も交えつつ「想い出のスクリーン」というタイトルを深読みしてみたい。

八神純子の「思い出」と三浦徳子の「想い出」


この曲がヒットしていた当時、私は中学に入学したての1年生。新卒だった担任の先生は大の音楽好きで、歌集を作って生徒に配ったり、ギターでフォークの生演奏も披露したりしてくれた。

その先生がある時、「思い出」と「想い出」の違いを教えてくれたのだ。先生によれば、「思い出」は過去の一場面の記憶に過ぎないが「想い出」は過去が自分の糧になり今も息づいている、そんな説明だった。そして、先生の念頭にはこの曲があったのだと今にして思う。「思い出」ではなく「想い出」が歌われているからだ。サビを引用する。

 愛しているのなら愛していると
 言葉にすればよかった
 少し素直な私を もう一度 hmm… 見つめて

歌われているのは、多くの人が共感できるであろう後悔の念。今の自分は過去の失恋を経て少し素直になった。単なる回想でなく過去が今も息づいていることが伝わってくる。

この解釈の手がかりになるのが、彼女のデビュー曲「思い出は美しすぎて」である。こちらの作詞は八神さん本人で、歌われているのは「思い出」。八神さんの「思い出」と三浦徳子さんの「想い出」の違いが興味深い。サビを引用する。

 思い出は美しすぎて
 それは悲しいほどに
 もう二度と手の届かない
 あなた遠い人



ここでの「思い出」は、過去の一場面。二番でも「もう今は別々の夢 二人追いかける」と歌われ、今の自分に過去は無関係だとわかる。しかし、そんな「思い出」が今に生かされているのを伝えるかのように、三浦さんは「想い出のスクリーン」というタイトルを付けたのではないだろうか?

そして、タイトルの「スクリーン」についても深読みを加えたい。今回久々にこの曲を聴いた時、いくつかの疑問が頭をよぎった。スクリーンとは何か?そして、彼との「想い出」を表現するのに、なぜ三浦さんはこの言葉を使ったのだろう?

実はこの手がかりも、八神さんの別の曲にあった。彼女がアメリカで活動していた1999年に “JUNE STANLEY” 名義で発売された英語版「想い出のスクリーン」で、英訳は三浦さんの詞をほぼ忠実に再現している。歌詞の一部を引用する(カッコ内は対応する原曲の歌詞)。

 I close my eyes rewinding many times the way we used to be
 (目を閉じればいつか 想い出のスクリーン)
 Look through me into my eyes, I still believe In our memories, mm, in the screen
 (少し素直な私をもう一度 見つめて)

「目を閉じるとスクリーン映像のように再現される彼との記憶。私は今もそれを信じている〜」。英訳はそう読める。そして、日本語と英語の対比により、スクリーンの意味もはっきりする。感銘を受けた映画のワンシーンが人生を歩む中で記憶が熟成され、心の中でいつでも再生できるように、彼の記憶は今も私の心の中で息づいている。だから「想い出のスクリーン」だったのだ。

東日本大震災を契機に活動を再開した八神純子


今回のコラム執筆を通じて、過去の記憶は上書きできると、つくづく実感した。中学生になったばかりの44年前の私は、この曲を聴いても「良い曲だな」くらいしか感じなかった。しかし改めていま聴くと、新たな発見もあって感動できる。記憶がアップデートされて息づいていると感じたのだ。

そして、過去を封印せずに今に生かしているのは、現在も精力的に活動を続ける八神さんの姿そのものだと感じた。2000年代に音楽活動を休止していた八神さんは、東日本大震災を契機に活動を再開。各地でコンサートを開催し、2021年にはニューアルバム『TERRA- here we will stay』をリリースしている。また、過去の作品を新アレンジで歌い、新たな解釈を加えている。まるで過去の「思い出」を「想い出」に塗り替えるかのように。

「想い出のスクリーン」は、今の歌として八神さんの中で息づいている。最近のアルバムで歌われるこの曲を聴き、そのことを確信した。

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2023.02.05
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カタリベ
1966年生まれ
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