昨年のTBSテレビ、60周年記念歌謡特番。郷ひろみ&樹木希林の36年ぶり、一夜限りの復活生ライブがあるというニュースには心が躍った。あの2人が、当時のままのオーバーオール&サングラス姿で歌うなんて(樹木希林はキーが合わないから歌っていないと言っていたけど)。
曲はもちろん「ムー一族」の劇中歌、「お化けのロック」と「林檎殺人事件」。「ザ・ベストテン」でも1位を獲得した大ヒットチューンだ。イントロでのショートコントや振り付けは息もぴったり。2015年度心のベストテン第4位くらいに、素晴らしい瞬間だった。
「ムー一族」は、1977年に放映された「ムー」の続編コメディードラマで、その奇想天外な展開で視聴者を魅了した。東京・下町の足袋屋を舞台にした人情味あふれる話を軸に、ドラマと現実世界が入り混じり、独特のコントやシュールな場面転換が続く。
例えるなら、多彩なコーナーが一冊にぎゅっと詰まった、ごちゃごちゃで読みにくいサブカルミニコミ誌といった感じ。
度重なる生放送、全員エジプトロケ、他番組とのカルチャーミックス、ザ・ドリフターズ乱入など、毎週型破りでお祭り騒ぎだった。トイレで樹木希林が、宇宙人の近田春夫に出会ってフィーバーしてしまうコーナーなんて最高だったな。目が離せなかった。
忘れられないのは最終回。
本編が終わり、最後にスタジオで郷ひろみと樹木希林が「林檎殺人事件」を歌う。と、途中で幕がパッと落ち、出演者がひな壇に勢ぞろいしているのだ!伊東四朗もたこ八郎も大合唱でドラマは幕を閉じる、というハッピーエンディング! あれは涙なくしては見られなかった。出演者の笑顔が胸に迫って、この幸福な場所にずっと居たいと本気で思った。
そう言えば、私の初恋は清水健太郎だった。どこにしびれたかといえば、この番組の不倫兄貴役。人妻としのび逢いの場面、お揃いのトレンチコート姿に萌えたのだ、劇的な音楽に合わせてひたすら夜歩くだけという地味さだったのに、あの時のシミケンは私にはすごく格好良く見えたのだ。
林檎殺人事件 / 郷ひろみ・樹木希林
作詞:阿久悠
作曲・編曲:穂口雄右
発売:1978年(昭和53年)6月21日
2016.05.24
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