2021年 12月15日

THE MODSのギタリスト苣木寛之、7年ぶりの新作「VOICE」リリース

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THE MODSのギタリスト苣木寛之の新作「VOICE」


THE MODS(以下モッズ)不動のギタリストとして結成40周年を迎えた今もステージに立ち続け、同時にバンドのサウンドプロデュースも担う苣木寛之のソロプロジェクトDUDE TONE7年ぶりとなる新作「VOICE」が2021年12月15日にリリースされた。

DUDE TONEとしてのキャリアのスタートは2010年にまで遡る。この年、元ルースターズ花田裕之、井上富雄らを迎え入れてリリースされたアルバム『AFTERGLOW』には、モッズで見せる苣木の顔、ロンドンを経由したロカビリー、感度の良いアンテナを張った博多の不良少年に届いたブリテッシュビート、パンクロックの衝動… などの影響から熟成されたマキシマムなプレイの原点となる贅肉をそぎ落としたギターバンドの真骨頂があった。そして、苣木でしか奏でることの出来ない無添加のレスポールの音色と、優しさを隠し切れない歌声が紡ぎ出す心象風景にミュージシャンとしての新たな側面を垣間見ることができた。

その後、苣木は、“流れ”と称し、ギター1本で日本全国、どんな遠い場所でもどんな小さい場所でも厭わずに歌い続ける花田に触発され、2017年からは自らもギターを抱えDUDE TONEとしての旅を始めた。時にはモッズのナンバーをアコーステックなアレンジでブルージーに聴かせていくその旅路は、苣木の過去と現在の点と点を線で結び、ギタリストとしてヴォーカリストとしてのキャリアに不可欠なものとなっていたはずである。

THE MODSが始動、そして届いたDUDE TONEの新作


しかし、2020年からのコロナ禍。ソロとしての活動はおろか、モッズとしての活動もストップを余儀なくされた苣木が何を考え、何を蓄積していったのか… という答えが、この5曲入りマキシシングルの中にあった。

まるで、密室の中、自分だけに歌ってくれているような、息づかいまで聴こえてきそうな歌声、ギターのピックが弦と触れ合う瞬間の音まで克明に記録されているかのようなリアリティ―― ギタリスト苣木寛之の繊細さ、そして過去に想いを馳せながらも、今なお最前線でギターをかき鳴らしているのかという答えが潜んでいるような気がしたのだ。

苣木は言う。「モッズは風林火山」と。動かないと決めたら山の如く動かない。しかし状況を見極め動くときは風の如く素早いと。今年40周年のアニバーサリーを迎えたモッズは10月に常軌を見極め始動、日比谷野外音楽堂公演を含む全国5か所のツアーを多くのファンに見守られ大盛況のまま静かに幕を閉じた。そして、間髪を入れずDUDE TONEの新たな音源がファンの元に届く…。未だ先が見えない状況ではあるが、待ち続けたファンに数倍もの恩義を返すという結成当時から一貫しているモッズのスタンスは、苣木にとっても変わらないものであった。

クッキリとした心の輪郭「親不孝通りを抜け」


この5曲入りマキシシングルの中に、「親不孝通りを抜け」という曲が収録されている。

 親不孝通りを抜け
 あの角を曲がれば
 照れたように
 お前が立っていて…

親不孝通り…。博多、天神駅のすぐ近く、かつては予備校が立ち並び、そう呼ばれていたという。今は少し寂れた感も拭えないが、この親不孝通りを抜け、道を一本入ると80‘Sファクトリーというライブハウスがあった。博多産のビートグループに酔いしれた者であるなら知らぬものはいない伝説の場所だ。

東京進出前、レコードデビューも決まらぬモッズは、この場所の鍵を預かり、営業が始まる夕刻まで、朝早くから連日練習の場としていたという。モッズに加入したばかり若かりし頃の苣木は、この場所でロックンロールの神髄を身体で感じ、自分のものにしていったはずである。

多くの博多のミュージシャンがそうであったように、目一杯カッコつけて、ギターケースを抱え、“モッズのギタリスト” という矜持を胸に親不孝通りを行き来したはずである。そんな姿がオーバーラップするリリックと、飾りはないがじわじわ心に染み入るメロディにクッキリとした心の輪郭が浮かび上がっていた。それがなんとも嬉しく、同時に時の流れの重みを感じずにはいられなかった。

また、「ライブハウスが恋しいね…」と歌う「コロナのせいで」は去年の緊急事態宣言の中、即興でできた歌だという。この歌を歌い、部屋でギターをつま弾く苣木の姿はSNSでも発信された。そこで観られるのは飾ることのない苣木の姿であり、その時の心境をインプロヴィゼーションのメロディに乗せたリアルなブルースと言ってもいいだろう。

このように、苣木が辿ってきた道筋、無音の行間からも滲み出る現在の心境、そして未来を内包させた “苣木寛之の世界” は決して派手なものではない。しかし、キャリア40年を超えるギタリストの音楽への一途な気持ち、そして、新作「VOICE」に内包されている “魂の故郷” をぜひ感じ取って欲しい。

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2021.12.16
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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