2021年 12月8日

南野陽子16年ぶりの新曲「空を見上げて」四季をテーマに綴った名曲集 〜 春夏編

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南野陽子のアルバム「Four Seasons NANNO Selection」がリリースされた日
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「Four Seasons NANNO Selection」に込められた南野陽子の気持ち


ここにきて、もっと歌いたいという気持ちがある

―― 先日、Re:minderカタリベでもおなじみの濱口英樹さんが進行役を務めるラジオ番組『午前0時の歌謡祭』で、この日のゲストとして招かれた音楽プロデューサーの吉田格さんは、南野陽子の近況についてそう証言していた。

そうした証言を裏付けるかのように、この12月には『To Love Again 〜SNOWFLAKES〜』と題したプレミアムライヴを行うなど、歌手・南野陽子の活動は、このところ活性化の兆しを見せている。往年のファンにとっては何とも嬉しい状況が訪れているわけだが、さらに嬉しい知らせが。12月8日に、彼女の四季をテーマにした名曲集『Four Seasons NANNO Selection』がリリースされたのだ。

春・夏・秋・冬それぞれ8曲の計32曲は南野陽子本人が選曲。これだけでも嬉しいことだが、さらに嬉しいのは、本人作詞による16年ぶりの新曲2曲「空を見上げて」「大切な人」が収録されているということ。これはもう期待せずにはいられない!

さて、今回の私のコラムでは、この『Four Seasons NANNO Selection』から、新曲「空を見上げて」を含むDisc-1の「春・夏」について紹介したい。

南野陽子の「春」ソング、繊細な心情描写に見る四季の侘び・寂び


まずは「春」。私の中では南野陽子を四季でイメージした場合、この「春」のイメージが強い(「秋」の線も捨てがたいが)。やはりこれは「吐息でネット」と「話しかけたかった」という2大ヒットの印象が強いということだろう。だが、春のイメージが強い理由はそれだけではなく、彼女の纏う柔らかな雰囲気と軽やかな声質、それに萩田光雄の繊細なアレンジが、気候的に大味な「夏」「冬」よりも、この「春」「秋」のような中間的な気候によくマッチしているということがあると思う。

Disk-1には、今でも多くのナンノファンに愛される名曲「春景色」も勿論収録されている。

 あなた待つホームから
 見える景色は遠い海
 春めく風に誘われる神戸線 のどかに

春の風を感じるようなイントロからの歌い出しで、私達は1986年の春、18才の南野陽子が佇む駅のホームに誘われてしまう。「遠い海」と「神戸線」という描写が、神戸の風景を知らない私にもイマジネーションを与えてくれる、なんとも瑞々しい曲だ。

それに「春」の風物詩とも言える “卒業・進級・制服”、こういったシチュエーションが南野陽子の歌にはよく似合う。例えば「黄昏の図書館」。

 黄昏の図書館 懐かしい窓際
 去年まで見かけた あの人はいないの

この曲は、年度が変わったことで片想いが自然消滅してしまった、そんな切なさを歌った歌であるが、この歌詞から、私は90年代以降のJ-POPが失った「四季の移ろいの中から溢れ出す “侘び・寂び”」をとても感じる。

90年代以降は、こうした逆境を「超えていこう」という、ある種のポジティブ思想が支配的になっていったと思うのだが、その反動として減衰していったのが、歌詞の中で表される繊細な心情描写や四季折々の情景描写だ。このアルバムでは、彼女の歌声を通じた、そんな季節の “侘び・寂び” も噛みしめながら耳を預けてみるのも一興かもしれない。

南野陽子の「夏」ソングで発揮される個性


続いて「夏」。南野陽子をイメージした時、四季の中で一番「夏」の印象が最も薄いというのは、彼女のファンも、そうでない人にも共通認識としてあるのではないだろうか。

確かに、こうした四季の名曲選を企画した時に、松田聖子であれば「青い珊瑚礁」、浅香唯であれば「C-Girl」といった、抜けるような青空や海、輝く太陽といったシーンと直結するような曲が挙がるのだが、南野陽子の場合、そういった曲調のものがあまり思い浮かばない。

今回セレクトされた8曲のラインナップを見て感じたのは、夏曲でありながら、どこか陰影がある感じの曲調が多いということ。そういう意味では彼女の個性が最も発揮されているのが、この「夏」セレクションなのかもしれない。

シングル曲からセレクトされた1曲は「パンドラの恋人」。この曲も、“The・夏!” という感じとは真逆の幽玄な雰囲気を持つ楽曲だ。元々は冬バージョンの歌詞も候補として用意されていたそうだ。

この独特の、闇夜に蛍が多く飛び交うような幻想的な世界観はきっと南野陽子でしか表現できない―― そう思わずにいられないのは、まさにこの楽曲の完成度の高さの証と言えそうだ。

その他、物憂げな夏ソングが並ぶ中で異彩を放つ、南野陽子本人の作詞による「誰が為に地球はまわる」や、昨今のシティポップブームの中で是非とも再評価されたい1曲である「SPLASH」、このあたりの夏セレクションは要注目だ。

本人が作詞、新曲「空を見上げて」から伝わる、南野陽子の “現在”


さて、Disk-1の1曲目に収録された新曲「空を見上げて」にも触れないわけにはいかない。作・編曲が萩田光雄、そして作詞が南野陽子本人によるこの曲で、彼女はこう歌っている。

 私は何をしてきただろう
 私はどこに向かっているのか

こうしたアプローチの歌詞は、それまでの南野陽子にはあまり無かったように思うが、明るい曲調の中で、一切の装飾を排除した不純物のない歌詞が、聴いていてとてもすーっと耳に入ってきて、彼女の “現在” が手に取るように伝わる、素晴らしい歌だと私は感じた。

今回のような企画アルバム(名曲集)は、得てして受け手側もノスタルジーに浸っておしまい、となりがちなのだが、この、過去と現在を繋ぐ新曲、「空を見上げて」が、今回の企画アルバムを一段と有意義な物にしてくれたと言えそうだ。16年ぶりの作品を届けてくれた制作スタッフと、南野陽子さんには本当に、感謝・感謝である。

このコロナ渦、旅行に行けず季節を体感する機会が減ったという人も多いだろう。そんな中リリースされたこの『Four Seasons NANNO Selection』はとびっきりのプレゼントだ。ここはひとつ、彼女の歌声に包まれながら、春夏秋冬の四季を存分に感じてみてはいかがだろうか。

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2021.12.09
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カタリベ
1972年生まれ
古木秀典
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