2月17日

映画からヒット曲が生まれていた時代!MTVとサウンドトラックの蜜月な関係(1980年代編)

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連載【教養としてのポップミュージック】vol.20 / 映画からヒット曲が生まれていた時代!MTVとサウンドトラックの蜜月な関係(1980年代編)

新しい時代の息吹をミックスするような形で始まった1980年代


さて、前回の《映画からヒット曲が生まれていた時代!》に引き続き、今回も映画発のヒット曲について見ていきたい。第2回となる今回のフォーカスは、1980年代に公開されたとその音楽である。まずは本題に入る前に、1970年代がどういう風に終わっていったのかを簡単におさらいしておこう。

世界的に見て、1970年代の最大のトピックといえば1975年のベトナム戦争終結だ。そしてその頃には各地で起こっていた反体制運動は下火となり、映画の世界でもそれまで一世を風靡していたアメリカン・ニューシネマ(New Hollywood)が徐々に衰退に向かっていった。そして、入れ替わるように登場したのが、『ジョーズ』(1975年)や『スター・ウォーズ』(1977年)といった、いわゆるブロックバスター作品であった。一方、ポップミュージックの世界では、空前のディスコブームが訪れていた。黒人のソウル、ファンク系バンドは言うまでもなく、ザ・ローリング・ストーンズ、ロッド・スチュワート、クイーンといったロック界の大物までもが、こぞってディスコ風のサウンドを採り入れた。

このように、ブロックバスター映画の登場やディスコブームの到来といった新しい時代の息吹をミックスするような形で1980年代は始まった。ということで、今から1980年代の映画とその音楽を紹介していくが、この時代には映画からあまりにも多くのヒット曲が生み出されたので、前回より1つ追加して6作品について見ていただこうと思う。

【第6位】『ロッキー3』(1982年)より、サバイバー 「アイ・オブ・ザ・タイガー」
国民的映画シリーズの主題歌に起用されたことで、全米シングルチャート(Billboard Hot 100)で1982年7月24日から6週連続で1位を獲得。日本でも格闘技の入場曲、スポーツのハイライト映像、バラエティ番組等で今でもよく使われる。このサバイバーというバンドは、もしかしたら一発屋の印象があるかもしれないが、実はこの曲を含めて5曲の全米トップ10ヒットを放っている。

シリーズ前作でチャンピオンとなったロッキー(シルヴェスター・スタローン)は、満ち足りた生活の中で次第に闘志を失っていくが、新たな強敵を得て再起を懸ける……。という内容のシリーズ第3弾。前作に引き続き、スタローン自身が監督・脚本・主演を務めている。元々はシリーズ最終章の予定だったが、その後、続編3作とスピンオフ3作が製作された。



【第5位】『フラッシュダンス』(1983年)より、アイリーン・キャラ 「フラッシュダンス~ホワット・ア・フィーリング」
1980年公開の映画『フェーム』の主役として一躍有名になったアイリーン・キャラが、ディスコミュージックのパイオニアとして知られるジョルジオ・モロダー、彼の愛弟子のキース・フォーシーと共作した。1983年5月28日付で全米シングルチャート1位を獲得。アカデミー主題歌賞、グラミー最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞など、数多くのトロフィーを手にしている。TBS系ドラマ『スチュワーデス物語』(1983年)の主題歌だった、麻倉未稀のカバーバージョンを思い出す人も多いだろう。

プロのダンサーになる夢を追いかけるアレックス(ジェニファー・ビールズ)の挫折と成功、そして恋を描いたこの青春ダンス映画は、世界中で1億ドル以上の大ヒットを記録した。この主題歌をバックにヒロインが踊るラストのオーディションシーンが、あまりにも有名。



【第4位】『ブレックファスト・クラブ』(1985年)より、シンプル・マインズ 「ドント・ユー?」
1985年5月18日付で全米シングルチャート1位。このバンドにとっては珍しく他人が書いた曲で、「フラッシュダンス〜ホワット・ア・フィーリング」の作者の1人であるキース・フォーシー、そしてギタリストのスティーヴ・シフが書き下ろした。当初バンドのフロントマンであるジム・カーはこの曲を演ることに消極的だったが、当時の妻であるクリッシー・ハインド(プリテンダーズ)が説得したらしい。

この「ドント・ユー?」がオープニングとエンディングで使われたこの映画は、『ホーム・アローン』の脚本家としても知られるジョン・ヒューズ監督による青春群像劇である。休日登校を課せられた、家庭環境や価値観の異なる男女5人の高校生が、ぶつかりながらも絆を育んでいく様子がリアルに描かれている。



【第3位】『ゴーストバスターズ』(1984年)より、レイ・パーカーJr. 「ゴーストバスターズ」
世界的大ブームを巻き起こした映画の主題歌だが、もともとはヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」が選ばれる予定だった。ところがヒューイ・ルイスが断ったことで、製作サイドはやむを得ずレイ・パーカーJr.に “この曲に似せて作るよう” オファーしたのだそう。その結果、それまでの大人っぽいR&Bサウンドから一転、最も “らしくない” 曲が大ヒットして代表曲になってしまう。しかも、盗作で訴えられて裁判沙汰にまでなるとは。それでも、全米シングルチャートで1984年8月11日から3週連続1位を獲得。

映画の内容は、ピーター(ビル・マーレー)、レイモンド(ダン・エイクロイド)、イゴン(ハロルド・ライミス)の科学者3人組が結成した幽霊退治屋・ゴーストバスターズが、ニューヨークに現れる多種多様な幽霊たちを退治するために立ち上がるというお話。ホラーコメディ映画の金字塔と言われるが、その後シリーズ化、アニメ化、リブート版が多数製作されるなどの展開を見せている。



【第2位】『ダーティ・ダンシング』(1987年)より、ビル・メドレー&ジェニファー・ウォーンズ 「タイム・オブ・マイ・ライフ」
「ふられた気持」(You've Lost That Lovin' Feelin')などのヒット曲で知られるライチャス・ブラザースのビル・メドレー、映画『愛と青春の旅だち』(An Officer And A Gentleman)の主題歌「愛と青春の旅だち」(Up Where We Belong)がヒットしたジェニファー・ウォーンズの2人が共演。1987年11月28日付で全米シングルチャート1位を獲得するなど、世界中で大ヒットした。なのに、日本ではそんなに流行っていた記憶がないかも。

この曲は映画のクライマックスのダンスシーンで流れるのだが、1963年夏の避暑地が舞台なので映画全体としては1960年代のヒット曲に彩られている。ストーリーは、17歳の少女フランシス(ジェニファー・グレイ)が自由奔放なダンスのインストラクター、ジョニー(パトリック・スウェイジ)と出会って恋に落ちるという、いかにも80年代青春ダンス映画といった作品だ。ちなみにダーティーなダンスとは、男女がお互いの腰を密着させて回転させる踊りのこと。



【第1位】『フットルース』(1984年)より、ケニー・ロギンス 「フットルース~メインテーマ」
マイケル・マクドナルド(ドゥービー・ブラザーズ)と共作した「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」(1978年)でグラミー主要2部門を受賞したケニー・ロギンスが、サントラの帝王(King Of The Movie Soundtrack)と呼ばれるきっかけとなった作品。1984年3月31日付で全米シングルチャート1位。

シカゴからユタの田舎町ボーモントへ転校してきたレン(ケビン・ベーコン)が、数年前の事故が原因でダンスが禁止されている町の息苦しさから抜け出すため、高校の卒業パーティを企画する。しかし町の大人から反対され…… という絵に描いたような青春ダンス映画だが、この作品のポイントはサウンドトラックにある。全米アルバムチャート(Billboard 200)で10週連続1位を記録したこのアルバムから、2曲のナンバーワンヒットを含む6曲がシングルチャートにランクインした。まさに1980年代のサウンドトラック・ブームを牽引した作品であった。



1980年代、映画のサウンドトラックに表れた変化


さて、ここまで6つの楽曲・映画を見て改めて気付くのは、1980年代に入って青春ダンス映画に象徴される、非常にわかりやすい大衆向けの娯楽作品が増えたことである。その背景にはこの頃、世の中の空気がガラッと変わったということがあるだろう。ベトナム戦争終結以降、イデオロギー(政治や社会に対する考え方や信念)よりも経済的繁栄を重視するような時代のムードが形成されていく。

もう1つ、エンターテインメント的な視点で言うと、映画のサウンドトラックの性格にも変化が表れた。それまでのように映画に合わせてインストゥルメンタルなBGMを作曲するのではなく、ポップス楽曲を集める方向で制作されるようになったのだ。これは明らかに『サタデー・ナイト・フィーバー』や『グリース』の成功を受けてのものだが、これによって1つの映画から複数のヒット曲が生まれる構造が出来上がった。

さらに付け加えると、1981年のMTV開局も、少なからずこの流れに影響を及ぼしているだろう。当時、多くの人々が映像の付いたポップス作品に夢中になったし、映画は、長いミュージックビデオとしての側面も持つようになった。そして極めつけは、MTV時代の申し子とも呼ばれたマイケル・ジャクソンの『スリラー』の超々特大ヒットだ。

この作品を通じて、映像と音楽とダンスの融合に拍車がかかり、多くの青春ダンス映画が生み出される土壌が育まれたのではないだろうか。こうして見てみると、1980年代のエンタテインメントにおいてコンテンツの大衆化・軽薄短小化が急速に進んだように感じるかもしれない。実際、深くて重い作品を好む人々は、多少なり物足りなさを感じていた時代だと思う。だが、これは一元的な見方だ。

1980年代に入って、エンターテインメントはとにかくパイが大きくなった(市場規模が拡大した)。それは即ち、より大きく、より多様な需要が生み出されたことを意味している。そう考えると、コンテンツの大衆化・軽薄短小化と言うより、むしろ多様化が進んだと捉えるほうが正しいのではないか。そして、こうした変化の先に何があるのか……。これについては、次回の1990年代編で記そうと思う。

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2026.05.27
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1965年生まれ
中川 肇
上述の映画6作品のトレーラー↓です。こちらもお楽しみ下さい。
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(1) Footloose
https://youtu.be/P4narQca4Oc
(2) Dirty Dancing
https://youtu.be/eIcmQNy9FsM
(3) Ghostbusters
https://youtu.be/6hDkhw5Wkas
(4) The Breakfast Club
https://youtu.be/BSXBvor47Zs
(5) Flashdance
https://youtu.be/9aqbkd19pMA
(6) Rocky III
https://youtu.be/gbRDCWKqvEc
2026/05/27 10:56
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カタリベ
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中川肇
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