「1980年代」という本サイトのコンセプトからちょっとだけ外れてしまうが、今回はウィルソン・フィリップスを取り上げたい。80年代が終わってしばらくの間、彼女たちのデビューアルバムが、ドライブミュージックとして僕のクルマで大いに貢献してくれたからだ。
このガールグループは、グループ名からして「親の七光り」を狙っていた。メンバーのカーニーとウェンディのウィルソン姉妹はビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンの娘だし、チャイナ・フィリップスはママス&パパスのジョンとミッシェルのフィリップス夫妻(70年に離婚)の娘である。ビーチ・ボーイズとママス&パパスはどちらも60年代の米国を象徴するグループで、ビーチ・ボーイズは「I Get Around」「Help Me, Rhonda」「Good Vibrations」で、ママス&パパスは「Monday, Monday」で全米No.1を獲得している。
そんなバックグラウンドを持つ彼女たちだから、デビューと同時に爆発的にヒットしたのは当然だったと言える。デビューアルバム『Wilson Phillips』から「Hold On」「Release Me」「You‘re In Love」の3曲の全米No.1が生まれた。
サウンド的には、お父様たちの音楽とは似ても似つかないもので、どちらかと言えば80年代の正統派ポップスを踏襲していた。唯一お父様たちと共通していたのは、西海岸的なムードを醸し出していた点だろう。彼女たちの爽やかで透明感のあるコーラスはとても耳障り良く、女子を横に乗せて海沿いの道をドライブするには最適だった。
しかし、彼女たちの大躍進はここまで。93年にはグループ自体が自然消滅し、3人の存在は長らく僕の記憶から消えていた。だから、彼女たちが3人揃って、2011年公開の映画「Bridesmaids(ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン)」にサプライズ出演した時は本当に驚いた。女性版「The Hangover(ハングオーバー!)」とも言うべきこの作品のクライマックスである結婚式のシーンに、新婦の思い出の曲としてウィルソン・フィリップスの「Hold On」が取り上げられたのだ。
この出演をきっかけに、彼女たちのメディアへの露出が再び増えてきた。本当の結婚式に新郎新婦に内緒で登場するTV番組の企画に出たり、お父様たちの曲をカバーしたりと、若干「色物」的と言うか、「昔の名前ででています」感は拭えないが、それでも彼女たち3人のコーラスは健在だし、元気な姿を拝めるだけで良しとしようではないか。
Hold On / Wilson Phillips
作詞・作曲:Chynna Phillips・Glen Ballard・Carnie Wilson
プロデュース:Glen Ballard
発売:1990年(平成2年)2月27日
脚注:
■ Wilson Phillips
「Hold On」(90年6月9日1位)
『Wilson Phillips』(90年8月4日2位)※アルバム
2016.07.12
YouTube / emimusic
YouTube / WilsonPhillipsVEVO
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