1994年 5月10日

フジロック '23 出演【ウィーザー】ポストグランジに生まれた極上の泣き虫パワーポップ

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ポップなのに何故かアヴァンギャルドに聴こえるメロディー


音楽を聴いていて、メロディーやコード感が変な感じって思うことは誰にでもあると思う。譜面も読めないし楽器も弾けない私でも違和感を感じることが結構あるのだから、楽器をかじったことがある人はなおさらだと思う。

私の場合、そんな風に感じる音楽はポップな音楽であることが多い。ブライアン・ウィルソンやポール・マッカートニーはとんでもなく美しいメロディーを奏でているのにどこか落ち着きのない、着地しないような感覚を覚えることがある。
XTCもメロディーの展開が不思議だと思うことがある。すごくポップなメロディーなのに何故かアヴァンギャルドに聴こえる。

カーズやロキシー・ミュージックもポップなメロディーを奏でているのに「ここで上がる展開?」って思った瞬間に下がったりして「アレッ?」ってなることが多い。

そんなアーティストの楽曲は、数回聴くうちに違和感に気付き、何だか居心地が悪くて、くすぐったく感じる。しかし、繰り返し聴くうちに居心地の悪さが妙な快感に変わってきて、クセになるのだ。

気持ち悪い不気味なメロディーの展開なのに何だかクセになる、ウィーザー中毒


少々前置きが長くなったが、ウィーザーを初めて聴いた時もこんな感覚だった。

気持ち悪い不気味なメロディーの展開なのに何だかクセになる。いや、そんな生易しいもんじゃない。彼らのデビューアルバム『ウィーザー(ザ・ブルー・アルバム)』(以下『ウィーザー』)を数回聴いてから私はウィーザー中毒に罹ってしまった。

ウィーザーの奏でるメロディーは明らかに変態ポップ狂が作り出すヤバさがバッキバキなのだ。
しかし、歌われるテーマはオタクなメガネ男子の切ない恋心が情けなく描かれている。

この相反する組み合わせは、“駄目な僕の青春の日々” とでも言いたくなるような世界観を作り出している。そして、私も含めた世の中の大半はモテなくて、情けない。だから、大多数の普通の人々から大きな支持を集めることになったのだ。

結果として、彼らのデビューアルバムは米ビルボードチャートで最高16位、300万枚を売り上げる大ヒットとなった。また、リリースされた1994年は、グランジの大ブームが一段落し、エアポケット状態だったロックシーンにウィーザーは颯爽と登場した。

そして、彼らが鳴らした泣き虫感満載のパワーポップは、すこぶる新鮮に響き、ロックファンの耳と心を撃ち抜いた。こうしてウィーザーは、うまく行かない青春のサウンドトラックとしてリアルに受け止められたのだ。

変態ポップ+モラトリアム=極上パワーポップ


では、ウィーザーは単なる青春パワーポップとしてのリアリティーだけで成り立っているバンドなのだろうか?

もし、彼らが青春のエモさだけのバンドであれば、デビューからもうすぐ30年を迎える現在においても第一線で活躍できているわけがないだろう。そこには、本稿冒頭に書かせて頂いた変態ポップという音楽的な特徴が大きく関係しているのではないだろうか?

煮えきらないモラトリアムと変態ポップを極上のパワーポップで表現した彼らの個性は他に類を見ないものだし、そうした特徴を維持しながら常に新作をリリースし、キラーチューンを生み出している。

そして、ここ数年のリリースペースは尋常ではなく昨年(2022年)には、春夏秋冬をそれぞれテーマにしたミニアルバム2枚、フルアルバム2枚をリリースしており、バンドの創作意欲は大爆発している。



フジロックフェスティバル’23に登場するウィーザー


そんな絶好調のウィーザーは、今年の夏、フジロックフェスティバルに帰って来る。

天候が読めないフジロックではあるけれども、晴天であれば、爽やかなウィーザーのパワーポップを楽しめることだろう。しかし、残念ながら悪天候となった場合は、オーディエンス皆んなで半ベソかきながら泣き虫ロックを聴いて、雨に打たれるのもフジロックそのものだと思う。

願わくば、デビューアルバム『ウィーザー』のジャケットのような澄み切った青空になり、夜には満天の星空の下でウィーザーを楽しめることを切に願う。

泣き虫ロックの原点、『ウィーザー』に宿るムズムズ感


そんなウィーザーの原点であり、彼らの魅力がバランスよく、しかもバンドとしての勢いも兼ね備えて真空パックされた作品がデビューアルバム『ウィーザー』だ。

本稿執筆に際し、改めて本作を聴きこんでみたのだが、50代になった私は、モラトリアム全開で不気味なメロディーを歌うパワーポップサウンドに心がムズムズさせられた。未だにモラトリアムから抜け出せない自分を再認識させられ、恥ずかしく感じつつも、同時に私のモラトリアムは死ぬまで続くのだろうなと思ってしまった。

モラトリアムが続く限り、私はウィーザーを聴き続けていくだろう。20代前半に罹ってしまったウィーザー中毒は死ぬまで続きそうだ。

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2023.07.30
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カタリベ
1972年生まれ
岡田 ヒロシ
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