教科書に載っている顔写真には片っ端から目に星やコウモリを描いてKISS顔にするのは僕と同時代のロック少年が必ず通る道だったと思う。
中学生の頃、僕はバンドのロゴマークも好きで、教科書やノートのいたるところにロゴを書き写したりしていた。ビートルズやKISS、チープ・トリックなどなど。書き写したロゴを見ながらそのバンドのサウンドを思い浮かべて授業を楽しく過ごしていたのだ。ピストルズやストーンズ(ベロマーク)に至ってはまだ触れてはいけない世界の入り口を想像させたし、ましてや授業中にその入り口に立つなんて。
世に山ほどあるバンド・ロゴの中で一番好きなのがモーターズのロゴだ。「THE MOTORS」の「S」の下がビヨ〜ンと伸びているところがなんとも言えず格好いい。このビヨ〜ンは道か? ステージか? 見たこともない楽しそうな場所へ連れて行ってもらえそうでワクワクした。
モーターズの1stアルバム『1』は、荒っぽいギターとボーカルのハーモニーが特長で、砂埃をあげる車に乗って、みんなで歌いながら突っ走って行くようなサウンドがとにかく気持ちよかった。
でもこの1stアルバムのジャケットがシンプルというかなんか変。一番目立つのがバンド・ロゴ。そのロゴの下でおしくらまんじゅうをしているかのようなメンバーの写真がなんだか中途半端に小さい。
そのせいもあってロゴの印象が強いのかな。ロゴを見ただけでサウンドが浮かんでくるのに、メンバーの顔は全く印象に残らない。こじんまりとじゃれ合うこの微妙なジャケットは何なのか?
2ndアルバム『アプルーブド・バイ・ザ・モーターズ』は、キーボードが前面に出て、1stよりもぐっとポップで洗練されたサウンドになっている。モーターズの魅力であるギターとコーラスも前作に引き続き健在で、中古から新車に乗り換えたような、ワンランク上の乗り心地のアルバムだ。シングルカットされた曲がイギリスでヒットしたのもこの乗り心地アップが要因だろう。
そして秘伝のレシピでもあるかのようなお約束の妙なジャケット。
ロゴは小さくなり、「S」の下のビヨ〜ンもない。そしてどアップになったメンバー4人の顔が強烈に地味! 1stアルバムのメンバーの写真が妙に小さかったのはこの地味さを隠すためだったのか? ロックは見た目じゃない! とは思うが、このアルバムを手に取るたびに感じるこの気持ちはなんだろう。
不思議なアンバラス感が漂う、そんなモーターズを僕は愛してやまない。
2017.10.26
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