5月1日

中森明菜のターニングポイントは84年!アイドルとアーティストの狭間で生まれた傑作

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中森明菜デビュー3周年記念オリジナルアルバム『ANNIVERSARY』


デビューから丸2年となる1984年5月1日にリリースされた中森明菜の『ANNIVERSARY』は、通算5作目にあたるオリジナルアルバム。ただし、その間に出されたベストアルバムもカウントしていたようで、ジャケットには “6th ALBUM” と表記されていた。珍しく、デザインの中で発売日が大きめにクレジットされ、レコードには “1984.5.1”、少し遅れて出されたCDには “1984.5.25” の文字が丸いシールの様にあしらわれている。“デビュー3周年記念アルバム” と銘打たれていたのは、発売日からデビュー3年目に入るという意味合いであった。直前にリリースされた新曲「サザン・ウインド」は入らず、シングル曲は唯一「北ウイング」のみが収録された。



来生えつこ作詞、来生たかお作曲の「スローモーション」「セカンド・ラブ」「トワイライト -夕暮れ便り-」と、売野雅勇作詞の「少女A」「1/2の神話」「禁区」、それぞれ「静」と「動」が表現されたシングル楽曲が交互に展開された後、1984年1月1日にリリースされた7枚目の「北ウイング」は、初めて康珍化と林哲司のコンビに委ねられた。それまでになかったタイプの作品で新しい中森明菜の魅力が引き出された名曲として高く評価されている。タイトルが明菜自身の強い希望で決まったのもよく知られた話。

明菜が歌手として飛躍的に進化した極めて重要なアルバム


当時、アイドルでは断然松田聖子に心酔していた自分は中森明菜の歌の上手さは当然認識しつつも、そこまで熱心に聴いていたわけではなかった。が、「北ウイング」には感服せざるを得なかった。松田聖子は「瞳はダイアモンド」をヒットさせていた時期で、これはすごい名曲対決になったと勝手に思っていたものだ。ヒットチャートではわらべ「もしも明日が・・・。」に阻まれて2位に留まったものの、『ザ・ベストテン』では初登場1位となり、嬉しそうだった表情が忘れられない。

そのあとチャート1位で雪辱した「サザン・ウインド」、シングルではさらに「十戒(1984)」「飾りじゃないのよ涙は」と傑作が続いた1984年は、中森明菜にとってターニングポイントともいえる年だったろう。その渦中に発表された『ANNIVERSARY』は次作の『POSSIBILITY』と共に、飛躍的に進化していた歌手としての実力を見せつけてくれた、極めて重要なアルバムといえる。ジャケット写真のあどけない表情からは想像し難い、落ち着きをはらったヴォーカルを堪能出来る。



明菜自身が初めて作詞を手がけた「夢を見させて…」が収録


収録は全10曲。夏の雰囲気が充満したリゾート気分豊かなアルバムで、冬にヒットした「北ウイング」はそぐわないかと思いきや、そんなことはまったく気にならなかった。「まぶしい二人で」「夏はざま」の2曲を提供した来生えつこ×来生たかおコンビをはじめ、「100℃バカンス」は「禁区」の売野雅勇×細野晴臣、「アサイラム」は「サザン・ウインド」を作曲した玉置浩二の作と、従来の作家陣に加え、新たに尾崎亜美、国安わたる、有川正沙子が作品を提供している。

尾崎は「Easy」と「バレリーナ」を作詞・作曲。「シャット・アウト」は有川×国安の作で、国安は後にシングル「ジプシー・クイーン」を手がけることになる。各作品にドラマティックなアレンジを施した瀬尾一三と若草恵が果たした役割も大きい。

そして特筆すべきは、明菜自身が初めて作詞を手がけた「夢を見させて…」が収録されていること。繊細で一途な18歳の女の子の心情が素直に綴られているとおぼしく、感情が込められた歌声も一番可愛らしく聴こえてしまう。アイドルとアーティストの間にあった彼女を象徴するような、研ぎ澄まされた感性の表現に圧倒されるこの一曲を聴いただけでも、このアルバムが傑作であることが窺われる。

発売から40年近い歳月を経て、久しぶりに改めて聴いてみたアルバムにすっかり魅了されてしまった。やはり中森明菜の歌唱力・表現力はずば抜けているとつくづく思わされた次第。当時、コンサートに足を運ばなかったことを心底後悔しているのだ。




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2022.12.11
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カタリベ
1965年生まれ
鈴木啓之
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