1986年12月12日金曜日。CBSソニーオーディションの会場にいた私はメジャーデビュー直前のユニコーンとエレファントカシマシを同時に目撃。貴重なライブ体験をしている。
このオーディションは、それまでに五十嵐浩晃 / ハウンドドッグ / 村下孝蔵('79)、白井貴子 / 大江千里 / ザ・ストリート・スライダーズ('81)、尾崎豊 / エコーズ('82)、バービーボーイズ('83)、聖飢魔Ⅱ('84)といったミュージシャンを次々と輩出。その後の音楽シーンを作り上げたという意味では、音楽界にとって非常に重要なピースであった。その中でも最も濃い場面に遭遇できたことの喜びは、私にとって忘れられない記憶の一つである(※注)。
ゲスト用のバックステージパスを肩に貼ると、会場である日本青年館の楽屋裏の移動はほとんどフリー。扱いはゲストミュージシャンと変わらぬVIP待遇。それをいいことに私は楽屋中を歩き回った。楽屋にいたミュージシャンは以下の通り。
ユニコーン、ペッパー・ボーイズ、てつ100%。彼らはすでにデビューが決定している前期合格アーティストであった。その他に高橋諭一、エレファントカシマシ、グレースといった決戦大会出場者。ジュニア部門入賞者として、まだ高校生の黒沢健一と槙原敬之(当時は本名の範之)もその場にいた。ちなみに高橋諭一さんは、後に森高千里やハロープロジェクトの楽曲制作に関わり、作曲家、編曲家として数多くの作品を残すことになる。
私の記憶が正しければ、オーディションが始まるとすぐに聖飢魔Ⅱがゲストミュージシャンとしてステージに上がった。第三大教典「地獄より愛を込めて」をリリースしたばかりの彼らのライブは日本青年館を一気にヒートアップさせる。すごい!決戦大会が始まる前に会場の空気は一変、客席はほぼ総立ち。恐ろしいほど暖まっている。
次いでユニコーンが演奏を始めるとデビュー前のグループだというのに会場の熱はさらに2~3℃上昇した。この時の民生さんは幾分緊張している面持ちだったが、彼らがまとっている雰囲気は他のグループとは確実に違っていた。
エレファントカシマシも負けてはいない。宮本さんの小さな体から会場全体を圧倒するオーラが発散される。自信満々。ギラギラとした眼光。時には不敵な笑みさえ見せた。その熱い空気は一気に膨れ上がりまるで沸騰しているかのようだった。そう、この時私が感じたのはえも言われぬ狂気だ。
演奏曲は「デーデ」と「星の砂」。爆発する激しいヴォーカルとメッセージ性の強い歌詞。そして、着飾らないゴツゴツとした裸の感情が迫ってくる。規格外の強烈な言霊(ことだま)の力に頭の中が真っ白になった。今と変わらぬ、いや、もしかすると今以上に高ぶり、怒り、熱を帯びた貴重なライブパフォーマンスだったのかもしれない。
デーデ / エレファントカシマシ
作詞・作曲:宮本浩次
編曲:エレファントカシマシ
発売日:1988年(昭和63年)3月21日
※カタリベ注:
以前のコラムで述べたが、私は同オーディションの8ミリビデオクリップ賞なる映像コンテストに参加していた。
2016.10.23
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