11月28日

ソウルの風に吹かれて。旅のテーマソングは尾崎豊の「路上のルール」

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photo:SonyMusic  

思いもしないところで自分の愛する音楽と出会う。それが旅先の、しかも異国の地だと感慨もひとしおだ。

ところで人はなぜ旅をするのだろうか。素晴らしい景色を見るため、憧れた異国の雰囲気を味わうため、そして何より日常から離れて羽を伸ばすため……?

しかし僕にとって旅とは1つの試練だ。全く違う文化を有する他国に自分の身を置くこと。そこでは思いがけない自分が現れる。それは逆説的に言うと自分をリセットすることだと思う。そうして起点に戻ること。それが僕にとっての旅であり、そしてそれは僕なりの「路上のルール」なのだ。

そう、僕にとって尾崎豊の「路上のルール」が旅のBGMである。郷愁を誘うシンセサイザーの音、そして『洗いざらいを捨てちまって 何もかもはじめから やり直すつもりだったと……』と始まる歌詞。僕の旅はその尾崎の歌詞通りである。

しかしどんなに旅を重ねても、どの街に行っても、出会うのは『調和の中で ほら こんがらがってる』僕だった。そんな『もう自分では 愚かさにすら気付き 諭す事もなく』僕は懲りずに旅を重ねていた。僕は羽田空港で「路上のルール」をリピートさせながら、韓国は仁川国際空港行きの飛行機を待っていた。

ソウルには日本と全く違ったユーラシア大陸の風が流れている。大好きなその風の匂いに吹かれながら街をぶらぶらした後、夜にホンデ(弘大)地区に赴いた。

ホンデは美術・デザイン系で有名な学校・弘益大学校の略称であり、街は音楽で溢れている。よく「ソウルの下北沢」などと呼ばれたりもしているようだ。

夜のホンデはひときわ音楽で賑やかだ。『あくせく流す汗と 音楽だけは 止むことがなかった』この街で、僕は目に入ったロックバーに偶然入って行った。驚いたのがそこでかかっている音楽がJ-POPだったことだ。若いマスターの後ろにはずらりと日本のアーティストのCDが並んでいる。加えてマスターは日本語を流暢に話す。

したたか酔いの回った僕は尾崎豊のCDがあるか、そしてもしあれば「路上のルール」をかけて欲しいと言った。マスターは僕の選曲を褒めながら僕の「旅のテーマ」をかけてくれた。

何回も聴いた曲なのに異国の地で聴くとそれは表情を変える。シンセサイザーの音に隠れるスライドギターのソロ。バックに隠れるハモンドオルガン風のキーボード音。心がフッとそこで敏感になり、僕は思いがけない感傷に飲み込まれていた。尾崎豊の歌は、その意味でいつも危険なのだ。

尾崎豊的な言い方をするとこの曲は「僕の人生という旅のテーマソング」なんです、などと口走ったかと思う。マスターは頷きながら自分の経験を色々話してくれた。

兵役のこと、日本文化について、そして祖国のこと……、そして韓国での尾崎豊の人気について。多くの韓国人アーティストが “I LOVE YOU” をカヴァーしていることは彼から初めて聞いた。そうしてソウルの夜はそのまま更けていった。

―― そのバーで一晩を過ごし『こんがらがった』僕は、マスターに朝ごはんのおかゆを奢ってもらった。予約してあった早朝発釜山行きの特急「セマウル号」はすでに僕を置いて発車してしまった。そんな旅が僕の「路上のルール」だ。



歌詞引用:
路上のルール / 尾崎豊

2017.10.09
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  YouTube / J4jp


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カタリベ
1991年生まれ
 白石・しゅーげ
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