イギリスの80年代前半の数ある大ヒット曲の中から今回はデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「カモン・アイリーン」を取り上げたい。
80年代前半といえば、カルチャークラブ、デュラン・デュラン、バナナラマ、アダム・アントといった若くて華やかな面々や、マッドネスやローマン・ホリデーといったかっこいいスカバンドなど皆、プロモーションビデオが隆盛するなかで工夫を凝らしたビジュアルやファッションが楽しめた時代だ。
なんとなく音楽、ロック、パンク = 革ジャンでははく、それぞれの「らしさ」に向かって進んでいった時代かと思う。ポール・ウェラーだってスタイル・カウンセラーになり爽やかな白いTシャツで歌う時代になった。
そんな中、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズはめっちゃ土着な路線だった。ボーカルのケビン・ローランドがアイルランド系ということでイングランド全土に深く根付くケルト魂の琴線に響くメロディを歌い上げる。そしてファッションはこれまた80年代チャールズ・ディケンズ風というのかな、とても曲とマッチしていてインパクトがあった。「カモン・アイリーン」では、PV でのバンジョーと、このデニムのオーバーオールがとても強烈に記憶に残っている。作り込まれたものというより、この人たちは普段からこんな格好してるはず、と納得させられるほど、音楽を含め、彼らの存在感は特別だった。
さて、話は変わってイギリスという国はその昔、離婚問題(カトリックは離婚出来きなかったため)を抱えたイングランド王ヘンリー八世の時代、宗教改革によってイギリス国教を信仰するようになった国だが、元はと言えばカトリックである(なんだか、現在のユーロ問題と似ている)。5世紀以降、キリスト教が広まった中で、もともと信仰されていた土着の信仰はアイルランドに追いやられて、結局そのアイルランドにもキリスト教が広まった。とはいえ、今でもアイルランドといえばケルト神話の国である。妖精やドルイドの国だ。キリスト教は土着のケルト文化と融合する形で広まったせいか国としては宗教は中立なのだそう。
イギリスは、国としてはアイルランドとは仲が悪いとはいえ、アイルランド系、ケルト系の国民は多いので、文化的には古くからのケルト文化が背景に色濃く存在する。そういうところが、イギリスは日本と似ているのではないかなあ、なんて私は思う。
日本も元々土着のものがあるところ、最近ではアメリカ文化がたくさん入ってきて、それを享受しているわけだけれど、さらに遡った歴史を見れば大陸からやってきた文化に何度も染まってきたことだろう。それでもなんとなく、古くからの土着的なものが私たちの魂に残るのは島国だからかもしれない。「令和」という年号に沸くのも、それは新旧の間に立つ日本に日本国民として存在する文化的な感性であり、また魂ではなかろうか。
このように似通った文化背景を持つ私たちにとっても、「カモン・アイリーン」は、なんとも心に染み入るメロディだ。歌詞は独特だけれど、このメロディあっての、ケビン・ローランド節あっての世界は、ケルト魂の琴線に美しく響く。
2019.04.22
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