1月21日

音楽的見地から見た【80年代アイドル総選挙】陽の松田聖子に対し陰の中森明菜?

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あくまでも音楽的見地からのアイドルベストテン


(はじめに)時代・流行・風俗的視点やルックス・プロポーション・ファッション的視点ではなく、あくまで音楽的な見地、より詳しく言えば、本人の音楽的才能と後の音楽シーンに残した影響から、可能な限りロジカルに選ぶよう努めたいと思います。論旨的に1位からの流れでの発表になりますのでご理解ください。

第1位:松田聖子


「ニューミュージックの総括」(別名「はっぴいえんどの復讐」)としての作家陣、とりわけ松本隆による新世代の女性観に溢れた歌詞、そして言うまでもなく歌唱力。個人的にはシングル『夏の扉』(81年)までの爆発的な声量を推す。イチオシシングルは『チェリーブラッサム』(同年)となるが、デビューアルバム『SQUALL』(80年)全体に横溢するパワーボーカルは、もうハードロックの世界だ。

第2位:中森明菜


80年代的「陽」の聖子に対して、70年代的「陰」のポジションを孤高で守り切った人(驚くべきことに80年代のシングルはすべて短調)。中域のふくよかな声量は唯一無二で、『SOLITUDE』(85年)以降のアーバン&アダルト歌謡を確立した功績やセルフプロデュース力もまた然り。総じて、彼女が残したシングル群は高品質で個性的でそして哀しい。とりわけ(90年発売だが)『水に挿した花』のはなやかさたるや。



第3位:小泉今日子


プロデュース力を推したいが、中森明菜のそれが「作品性」に向かっているとすれば小泉今日子は「商品性」(話題性)に向かう。音楽を軸に時代と話題を吸引し、驚くべきはそのスタンスが現代にも続いていること。シングルは秋元康・高見沢俊彦・近田春夫・野村義男・小室哲哉、そして大瀧詠一という賑やかな作家陣を誇ったが、1曲と言われれば、橋本淳・筒美京平という超トラッドなチームによる『半分少女』(83年)。



第4位:薬師丸ひろ子


上記3人と並べるのにちょっとした違和感を抱くのだが、それそのものが彼女に関するマーケティングの成功要因とも言える。大瀧詠一による『探偵物語』(83年)と呉田軽穂(松任谷由実)による『Woman "Wの悲劇"より』(84年)は「80年代ソングライター頂上決戦」の趣き。その横綱対決は甲乙付け難いが、真の勝者は、これら超絶難曲を歌いきった薬師丸ひろ子本人。よってこの2曲をイチオシとする。どちらかを選ぶのは失礼だ、音楽の神様に対して。

第5位:河合奈保子


「80年代音楽はよかった、最高!」的な論調が、少しばかり過剰に語られていると思う中、もし偏りがあるとすると、その偏りでいちばん割を食っているのがこの人だろう。豊富な音楽的知識に裏打ちされた、プロフェッショナルな歌唱はもっと語られていい。「サブカル性」の低さが影響しているのだろうが、しょうがないだろう。彼女はバリバリの「メインカルチャー」だったのだから。デビュー曲『大きな森の小さな家』(80年)の「♪鍵をあげるわ 真心の鍵」のメロディとコード進行が忘れられない。

第6位:浅香唯


以上、80年代前半デビュー組の話は無限に盛り上がるが、対して「アイドル氷河期」に突き進む中で世に出た後半組は、一斉に加点してあげたいところ。その中で、『セシル』ま(88年)という超名曲を残したという一点において、下位打線のトップに置かせていただく。イチオシシングルももちろん『セシル』。その抜群の声量は、弘田三枝子から木村カエラへと続く、長い長い一本線の中点で燦然と輝く。



第7位:早見優


「世界一美しいいきもの」といくつかの媒体で評したが、ボーカリストの視点からも上位に食い込む。80年代後半、アン・ルイスの影響を受けた金属的ロックボーカルが素晴らしく、『PASSION』(85年)と『Newsにならない恋』『Love Station』(ともに86年)がよい。1曲と言われれば『Love Station』。なお、最近のライブも拝見したが、実は、もっとも声が出ているのは今かもしれないということを付記する。



第8位:松本伊代


平山三紀、郷ひろみの流れを受けて「筒美京平・変声(へんごえ)偏愛ライン」を継いだ人。私の位置付けは「82年組の中でもっとも都会的・東京的なポジション」というもので、田舎性/ヤンキー性をも引き受けなければならないアイドル界の中、ある意味、損をしたのかもしれないが、その意味でも平山三紀の後継となる。ただイチオシを聞かれたら。筒美京平作品ではなく、「カフェバー」「デュラン・デュラン」「女子大生」が歌詞に出てくる、いかにも80年代東京的な『Last Kissは頬にして』(86年)が楽しい。



第9位:おニャン子クラブ


音楽性から背を向けたプロジェクトではあったが、80年代中盤、松田聖子や中森明菜の先導の下、過剰な作品主義に走りそうだったアイドル音楽シーンにおける「ポップの復権」という意味もあった。福永恵規『風のInvitation』(86年)のストレートポップ感や、河合その子『青いスタスィオン』(同年)のエレガントポップ感は忘れられない。逆に言えば「ポップの復権」としての取り組みが、翌87年には早くも潰えていた感じがするのが、返す返すももったいなかった。イチオシは新田恵利『冬のオペラグラス』(同年)。

第10位:森高千里


ある意味ではトップ3に食い込むが、やはりこの人は「90年代のヒロイン」で、80年代の小泉今日子からバトンを受けた人だと思う。ただ小泉今日子以上に、商品性・話題性に向けられすぎたきらいがあり(平たく言えばタイアップシングルの多さ)、こういう場所で振り返るときに評価が難しくなる。個人的にはアルバム『非実力派宣言』(89年)の『夜の煙突』を好んだが、それはこのランキングとは別の物語だろう。

なお、次点は本田美奈子(イチオシ『CRAZY NIGHTS』87年)とさせていただきます。



80年代アイドル総選挙 ザ・ベスト100

▶ 花の82年組に関連するコラム一覧はこちら!



2022.12.17
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Baliみにょん
《あくまで音楽的な見地、より詳しく言えば、本人の音楽的才能と後の音楽シーンに残した影響から、可能な限りロジカルに選ぶよう努めたい》こういう「音楽」評論が、歴史を綴る軸になるんだなと快哉を叫ぶ、いや呟く。
作家陣、とりわけ松本隆による新世代の女性観に溢れた歌詞と爆発的な声量
の松田聖子。唯一無二の中域のふくよかな声量と、セルフプロデュース力が秀逸中森明菜。小泉今日子のプロデュース力は「商品性」(話題性)。歌手と時代がくっきりと浮かび上がる!
2023/01/02 12:03
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返信
カタリベ
1966年生まれ
スージー鈴木
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