2022年 4月27日

甲斐よしひろ「FLASH BACK」数多のカバー曲とソロ活動35周年アルバムの関係

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甲斐よしひろのアルバム「FLASH BACK ~KAI THE BEST 35th~」がリリースされた日
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ベストアルバム「FLASH BACK ~KAI THE BEST 35th~」リリース


2022年4月27日、甲斐よしひろがソロ活動35周年アルバム『FLASH BACK ~KAI THE BEST 35th~』を発表した。アルバムはCD2枚組で、1枚目はソロとして発表された曲と、甲斐バンド解散後に結成されたKAI FIVE時代(1991~1994年)の楽曲、そして2枚目はカバー曲および他アーティストへの提供曲のセルフカバーが収められている。

この構成、アーティストの周年アルバムとしてはちょっと変わっていると感じられる人もいるかもしれない。

CD1に収められている楽曲はすべて甲斐バンド解散後に発表されたオリジナル楽曲。甲斐バンド以降の彼の足跡を示す作品集という意味では筋が通っている。しかし、それと同じボリュームでカバー曲が集められているというのは、“ただ事ではない” という気もする。

しかし、甲斐よしひろのファーストソロアルバム『翼あるもの』(1978年)がカバーアルバムであり、その後も彼が複数のカバーアルバムを発表してきたことを考えれば、そこには単なる企画ものという以上の意味を見出すことが出来るんじゃないかと思う。

カバー曲多数。意味するところは?


正直に言えば当時の僕は、「バス通り」(1974年)でデビューした頃の甲斐バンドに対して、チューリップに続いて、「また福岡から新しいグループが出てきたな」くらいの感想しか抱いていなくて、とくに注目していたわけではなかった。

そんな僕が甲斐バンドの存在に強く惹かれるようになったきっかけが、甲斐よしひろの最初のソロアルバム『翼あるもの』だった。

『翼あるもの』から今回の『FLASH BACK ~KAI THE BEST 35th~』に収録されているのは「恋のバカンス」(ザ・ピーナッツ)だけだが、このアルバムは他にもザ・キング・トーンズの「グッド・ナイト・ベイビー」、早川義夫の「サルビアの花」、ザ・ジャガーズの「マドモアゼル・ブルース」などがカバーされていた。しかも、セレクトされていた曲の多くが、僕にとっても60年代終わりから70年代にかけての “気になる曲” だった。

僕は、その選曲に甲斐よしひろの音楽に対するセンスを感じて、それ以降の甲斐バンドを追いかけるようになり、同時にそれ以前のアルバムも聴き直していった。

その意味で『翼あるもの』は、僕にとって甲斐よしひろの居場所に気づかせてくれたアルバムなのだ。

甲斐よしひろ(甲斐バンド)のアルバム「翼あるもの」と「誘惑」の存在感


『翼あるもの』というアルバムタイトルにも惹かれるものがあった。

甲斐バンドをある程度聴いてきた人ならば、「翼あるもの」が甲斐バンドの人気曲のひとつであることは知っていると思う。けれど、実はこの時点でで「翼あるもの」という楽曲はまだ発表されていなかった。だから、当然このアルバムにも収められていなかった。

しかし、アルバム『翼あるもの』発表から5月後にリリースされた甲斐バンドのアルバム『誘惑』に「翼あるもの」という楽曲が収められていたのだ。このことは、『翼あるもの』が単なる企画ものではなく、甲斐バンドの『誘惑』との間に強い関係性があることを暗示していた。

そして同じ年の12月に甲斐バンドは「HERO(ヒーローになる時、それは今)」を大ヒットさせ、トップアーティストの座を確立させた。まさに『翼あるもの』と『誘惑』は甲斐よしひろ、そして甲斐バンドにとって、次のステップに向かうためのジャンプ台だったのだと思う。

カバー曲から見えてくるもの


こうした経緯を振り返れば、甲斐よしひろにとってカバーが大きな意味をもっていることも、『FLASH BACK ~KAI THE BEST 35th~』の構成の必然性もわかるだろう。ちなみにCD2「COVER SIDE」には『翼あるもの』の他、『翼あるもの2』(2003年)、『10 Stories』(2007年)、『TEN STORIES 2』(2008年)などのカバー・アルバムの収録曲、および他のアーティストへの提供曲のセルフカバーが収められている。

そして、これらのカバー曲を観ていくと、同じカバーでもいくつかの位置づけの違いがありそうなことも見えてくる。

ひとつは甲斐よしひろというクリエイターの座標軸を示すカバー曲だ。『翼あるもの』や『翼あるもの2に収められているカバー曲の多くは、若き甲斐よしひろがなんらかの刺激を受けた楽曲。もっと言えば甲斐よしひろの音楽の個性をつくりだすためのピースとなった作品と考えられる。そして、面白いのはそのすべてが邦楽曲であることだ。

洋楽的要素と邦楽的要素のバランス


若き甲斐よしひろが、ビートルズ、ローリング・ストーンズをはじめとする洋楽曲に多大な影響を受けなかったハズがない。しかし、彼がカバーしているのは若き甲斐よしひろがシンパシーを抱いたに違いない “洋楽の匂いを感じさせる邦楽曲” だということにも意味があるという気がする。

甲斐バンドの楽曲から感じられる洋楽的要素と邦楽的要素のバランスの独特さは、そうした甲斐よしひろの姿勢から得生まれているのじゃないかと思うのだ。

しかし、同じカバー曲でも『10 Stories』以降の楽曲には、最近の話題曲を甲斐よしひろがどう料理するのか、という色合いが強くなってきているような気もする。すでにその表現において強烈な存在感を確立した彼が、その楽曲にどんな表情を当て得るのか。そんな他流試合的ニュアンスが感じられるのだ。

さらに、そこにもうひとつセルフカバーが加わる。すでに井上陽水、中島みゆきといったシンガーソングライターによるセルフカバーアルバムが大きな話題となっていたが、甲斐よしひろにも、松田聖子の「赤い靴のバレリーナ」「ハートをRock」、TOKIOの「ラン・フリー(スワン・ダンスを君と)」など、他のアーティストへの提供曲は多い。これらの楽曲からは、曲を提供された歌手の歌唱とはまた違う表現の可能性を味わうことができるのだ。

アーティストにとってのカバーの多彩な意味、そして可能性を知ること。それも『FLASH BACK ~KAI THE BEST 35th~』の楽しみ方のひとつなのではないかという気がする。

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2022.04.28
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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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