CDはネットで内容を調べたから買う。そんな習慣がついたのはいつ頃からだろうか。確かに便利ではある。「失敗」がないからだ。それがどのような作品か、あらかじめ分かるので、「買うべき作品かそうでないか」を、知ることができるのだ。
僕がザ・フーにどっぷりであった中学生の時、まだ渋谷のタワーレコードの彼らの棚には、地元のCDショップでは見慣れない作品が並んでいた。そして、溜め込んだお小遣いを握りしめ、「我が聖堂」であるタワーレコードに期待とともに赴く。せっかく聖堂に足を運んだのだ。自然と地元の店にはない、タワーレコードにしかないものを買おうとする。
そして、14歳の僕は賭けをする。敢えて見慣れないジャケットのアルバムを買うのだ。黄色い袋を後生大事に抱え、家に帰りプレイヤーにかける。そして博奕の才がない僕は、大抵「失敗」していた。DVDの音を、そのまま録音したようなものが多かったと記憶している。まだそういった点がおおらかであった、最後の時代だ。
僕も「失敗」も数を重ねると、意地が出てくる。僕は「失敗」を認めまいとする。つまり、なんとしてでも買ったアルバムを「好きになってやる」という思いが強くなるのだ。そんな思いで聴いたのが、ザ・フーの『ジョイン・トゥギャザー』だ。このアルバムは、グループの結成25周年を記念し何度目かの再結成をした彼らが、ホーンセクションやコーラスを引きつれ1969年の名作『トミー』を再現したライブを収めたものだ。
なかなか悪いものではないことは確かだ。しかし、この外連味たっぷりな演出を味わえる余裕は中学生の僕にはなかったのだ。けれども面白いもので、何度も聴くことで印象は変わってきた。淡白な印象であった『トミー』の世界が、実はこのような派手なものを意識して作られていたのではないかと、再認識するに至ったのだ。
ケン・ラッセルの映画版にしても、あの「ゴテゴテ感」こそ『トミー』なのかも知れない。これは、「失敗」から生まれた発見であった。そしてこんな「有意義な失敗」は、もう過去の話かと思うと、ふと寂しくも思うのだった。
2017.01.13
YouTube / fcarcena01
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