80年代大映ドラマの傑作、杉浦幸主演「ヤヌスの鏡」
フジテレビ系列でも『青い瞳の聖ライフ』などを制作していた大映ドラマでしたが、フジ系列での大ヒット作と言えば間違いなく『ヤヌスの鏡』でしょう。
当時のアイドルとしては珍しく、歌手デビューを待たず女優としてデビューした杉浦幸が主演の学園ドラマです。そして、これも当時としては珍しい “多重人格” をテーマにしているところもポイント。さらにフジの強みとして、当時人気爆発中のおニャン子メンバーの河合その子が出演、山下真司は『スクール☆ウォーズ』とは違うタイプの教師役で出演しています。
漫画が原作ということもあって、ストーリー・演出とも “いつもの大映っぷり” に拍車がかかってますが、やっぱりそこが面白い。そしてたまに杉浦幸以上に目立ってしまう、初井言榮演ずる祖母の冷徹ぶりがすさまじい(怖いんだけど妙に説得力もあったりする)。
しかし何と言っても杉浦幸! そもそも元々彼女の顔つきが不安そうであどけない。そんな彼女に無理やりの不良メイクで人格を変えさせてしまう大映、恐るべし。
16歳でこれがデビューという彼女の演技も最初は “?” だったのですが、最後のほうではけっこうな凄みを出すにまで至ってるところも驚き。これは80年代大映ドラマの傑作といえるでしょう。
主題歌は椎名恵「今夜はANGEL」ストリート・オブ・ファイヤーの劇中歌
主題歌は、この後のフジ系大映ドラマ主題歌を担うことになる椎名恵(TBS系作品もいくつかあります)。彼女はこの「今夜はANGEL」がデビュー曲でしたが、力強い歌唱で見事なカヴァーを披露しています。原曲はファイヤー・インクの「今夜は青春(Tonight Is What It Means to Be Young)」で、これはそもそもダイアン・レイン主演の映画「ストリート・オブ・ファイヤー」の劇中歌。
この曲も全米でヒットしましたが、まさに1曲のなかでミュージカルが1本完結してしまいそうな、めまぐるしく展開するもドラマチックな名曲です。
ファイヤー・インクというグループは、「ストリート・オブ・ファイヤー」でダイアン・レインがヴォーカルを演じた架空のバンド、アタッカーズの吹き替えを担当したセッション・ミュージシャン。いわば活動実体のないグループですが、ボニー・タイラーのアルバム『スピード・オヴ・ナイト』のコーラスを担当した人たち、つまり「愛のかげり(Total Eclipse Of The Heart)」で「♪ Turn Around~」と歌ってる人たちが中心です。
ちなみに、「ストリート・オブ・ファイヤー」からの最大ヒットは、ダン・ハートマンの「あなたを夢見て(I Can Dream About You)」。これも80’s洋楽ヒットの定番曲ですね。
椎名恵、後の大映ドラマではオリビア・ニュートン・ジョンやシャーリーンのバラードもしっとりと歌い上げていますが、実は「今夜はANGEL」のB面もカヴァーです。
ドイツのポップバンド、ヒューバート・カーの「Angel 07」を「CHANGE ME」というタイトルで歌い、これも挿入歌としてドラマに使用されておりました。原曲は当時のウォークマンのCMに使用され、日本だけで10万枚以上売れています。
※2016年8月14日に掲載された記事をアップデート
2020.12.04