バンドブーム期にデビューした7組が3会場で競演
まだ夏フェスもインターネットもスマホもSNSもなかった'80年代後半、音楽に触れるための主要メディアといえば雑誌とラジオだった。
『バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON!!』は、1988年創刊の音楽誌『BANDやろうぜ』の名を冠し、東名阪のラジオ局3社がプロデュースするフェス。バンドブーム期にデビューした7組が3会場で競演する、その幕開けの大阪公演を観た。
全席椅子席となったZepp Osaka Baysideが、40〜50代を中心とする観客で埋め尽くされ、この日のMC、ちわきまゆみが「今日はどのバンドも出し惜しみなしの強力なセットリスト!」と煽るなか、開始。
一番手はJUN SKY WALKER(S)、新曲を織り交ぜたステージ
一番手はJUN SKY WALKER(S)。革ジャンにサングラスの宮田和弥が姿を見せると場内は早くも総立ち。いきなりあの大ヒット曲から始まって、ワンマンツアーでも披露していない曲、名バラード、出たばかりの新曲を織り交ぜてゆく。
ひと息ついて場内を見渡した宮田が「なにしろ嬉しいのは椅子だよね」と、立ち見が厳しくなった年頃の観客に共感を示すが、このあと、幕間の転換時を除いて、皆、ほぼ立ちっぱなしでバンドの熱演に応えてゆく。
舞台から捌ける際、ZIGGYの「BURNIN' LOVE」の一節を宮田がアカペラで唄っていたのも、本フェスならではの交流歴を感じる瞬間だった。
「Kiss…いきなり天国」で、一気にグラマラスな世界へ
つづいては、広石武彦がUP-BEATの楽曲をアップデートしてプレイするRESPECT UP-BEAT。シルエットだけでそれと分かる、当時と変わらないスタイルを堅持する広石は「Kiss…いきなり天国」で、一気にグラマラスな世界へと聴衆を引き込んでいく。
今回はJUSTY-NASTYからLEZYNA(G)、大石 “RALF” 尚徳(Ds)を迎えた特別な布陣。だがメンバー紹介を終えると、あとはMCもなく、ラストの「KISS IN THE MOONLIGHT」まで、綺羅星のような楽曲群を歌い切った。
トリはZIGGY、のっけから「GLORIA」
トリはZIGGY。気取りなく登場した森重樹一がシャウト一発、歌い始めたのは、のっけから「GLORIA」。
続いてのMCでは「J(S)W、変わらないね。少年のようだね。でも中身は…… オジサンなんだ! UP-BEAT広石くん、男前だったねー。でも中身は…… オジサンなんだ!」
あれ? 森重樹一ってこういう人だっけ? と戸惑うほど、くだけた語り口に頬が緩む。
サポートも強力で、派手な手数で叩きまくるCHARGEEEEEE…(Ds)、ボトムを支えるToshi(B)、顔で弾くバンマス、カトウタロウ(G)という盤石のメンバー。「STAY GOLD」「I'M GETTIN' BLUE」といったシンガロング向きの楽曲を絶妙に配して、最後は「DON'T STOP BELIEVING」でシメた。
本気の演奏と和やかな笑いと互いへのリスペクト
アンコールでは、広石が再会を懐かしみつつも「MC長いよ! あの頃の、僕の知ってる森重さんじゃない!」と指摘して場内爆笑。確かに以前のバッドボーイズ然としたイメージからすると、現在の森重の親しみ易すぎるキャラはギャップがあるだろう。
さらに森重と宮田が昔話に花を咲かせていると「皆、立ってるだけでやっとなんだから!」と立ち尽くめの観客を気遣う広石にたしなめられる展開に。そして、「座ったままクラップユアハンズ!」と森重が始めた曲は初期のR&R「Feelin' Satisfied」。宮田のブルースハープも冴えわたり、大団円を迎えた。
本気の演奏と和やかな笑いと互いへのリスペクト、そして最高のノリを発揮した観客への感謝にあふれた一夜だった。つづく名古屋・東京公演も俄然、楽しみになった。
『バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON !!』 ■ 名古屋公演
開催:2023年8月19日(土)18:00開演
会場:Zepp Nagoya
出演:GO-BANG’S、JUN SKY WALKER(S)、PERSONZ
主催:TOKAI RADIO
後援:宝島社
お問合せ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(12:00~18:00)
■ 東京公演
開催:2023年9月2日(土)18:00開演
会場:Zepp Haneda
出演:岸谷香、筋肉少女帯、JUN SKY WALKER(S)
主催:ニッポン放送
後援:宝島社
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2023.08.18