2023年 9月2日

ジュンスカ・岸谷香・筋肉少女帯が共演【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL】ライブレポ

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音楽イベント「バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON!!」開催日(Zepp Haneda)
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photo:Photo: umihayato  

バンドブームの主役たちが35年後に再集結


80年代後半から90年代初頭にかけての “バンドブーム” を象徴する音楽誌『バンドやろうぜ』(宝島社)の名称を冠した音楽イベントが、2023年夏、大阪、名古屋、東京の3都市で開催された。

その名も「バンドやろうぜ ROCK FESITIVAL THE BAND MUST GO ON!!」。3会場すべてに出演する JUN SKY WALKER(S) を筆頭に一発目の大阪公演はZIGGY、RESPECT UP-BEAT(広石武彦を中心としたUP-BEATの後継バンド)、次の名古屋公演にはGO-BANG’S、PERSONZが登場した。つまり、1988年に創刊された『バンドやろうぜ』が売れまくっていた時代に第一線で暴れまわり、かたちを変えながらも今も音楽活動を継続しているバンドが集結するフェスなのだ。

ラストの東京公演は9月2日に、Zepp Hanedaで開催された。メンバーは元プリンセスプリンセスの岸谷香、筋肉少女帯、そしてJUN SKY WALKER(S)だ。限りなく、 “プリプリと筋少とジュンスカが揃った状態” に近い。 バンドブームを知る人なら、チケットぴあ、チケットセゾンの先行発売日に何百回とリダイヤルを強いられた経験を思い出さずにはいられない超豪華な対バンである。さて、その錚々たる顔ぶれが示したのはなんだったのか?

オープニングでMCのちわきまゆみが登場。「どアタマからトップギアで盛り上がっていただきたい」「気合のセットリストになっています」「2023年の最新の環境の中で皆さんに体感していただける素晴らしいチャンスです」。FM COCOLOでもパーソナリティを務めるちわきは、50代が中心と思われる満員の客席にこのようにアピールした。

56歳の岸谷香は生涯 “バンドやろうぜ” を宣言


一番手は岸谷香だ(プリンセス プリンセス時代は奥居香)。全7曲を披露したが、そのセットリストはバランスよく構成されたものだった。まずは、プリプリの再結成期間後、ソロ活動期にリリースしたアルバム「PIECE of BRIGHT」のなかから、「49thバイブル」「ミラーボール」の2曲を選んだ。初めて聴いた観客も多かったかもしれないが、ポップでポジティブな楽曲の世界、そして、岸谷香の弾むようなヴォーカルは変わらなかった。

MCでは、「『バンドやろうぜ ROCK FESITIVAL』というイベントをやるときいて、 “私が出なくて誰が出るの?” と思った」と語る。そして「中学生の頃から、バンドというものの魅力にとりつかれ、56歳の今でもバンド活動をやっていられることをホントに幸せに感じています」と続けた。バックで演奏するのは、岸谷香が50歳になったときに作ったバンド・Unlock the girlsのメンバーだ。Yuko(ギター)、HALNA(ベース)、Yuumi(ドラムス)の3名は、いずれも1989年生まれだという。今の岸谷香はバンドブームを知らないメンバーとバンド活動をしているのだ。

次に岸谷は、プリプリの代表曲を用意した。まずは、バブル絶頂期である1989年のオリコン年間チャート1位曲「Diamonds (ダイアモンド)」だ。いうまでもなく会場の盛り上がりは最高潮に達する。今もCMで使われるなどスタンダード曲化している「Diamonds」だが、あまりにポピュラーで、あまりにメジャーであるためかえって、楽曲としての再評価の機会を逸している傾向がある。このとき再確認できたのは、30年以上が経ち、「Diamonds」はヒットした当時とは異なる意味合いを持つ曲になったということだ。

岸谷香が作った万人受けするメロディにのる、中山加奈子による歌詞は日本がイケイケだった時代の怖いもの知らずの若者たちのマインドを捉えた側面がある。しかし、2023年に聴くと、また違った受け止め方ができるのだ。

「まだ死ぬわけにいかない」、「パーティはこれから」、「眠たくっても 嫌われても 年をとってもやめられない」 「何も知らない子供に戻って やり直したい夜も たまにあるけど」

そんなフレーズを56歳の岸谷香が歌う。すると、厳しい時代に人生の後半を生きる大人たちの応援ソングのようにも聴こえる。そのように昇華しているのだ。

次に、自らピアノを演奏しバラード曲「M」をしっとり聴かせ、ファンの満足度を高めた岸谷香は、残る3曲で現在進行系の自分をみせた。「Unlocked」「STAY BLUE」「Signs」というUnlock the girlsのミニアルバム収録曲をアクティブに歌うのだった。

「50歳のときになにか新しいことをやろうと考えた。そこで、やっぱり私はガールズバンドをやりたいと思った。1回の人生だから、やりたいと思ったらやるしかない」

Unlock the girlsはこうして生まれたのだ。「バンドってホントに楽しい」。「私は一生、バンドから離れられない」。岸谷香は終始 “バンドやろうぜ” のスピリットを保ち続けることを言葉にし続けた。その行間には「人生には限りがある」「だからこそ、後悔のないように前向きに走り続けよう」……そんなメッセージが込められているように感じられた。



HR路線だった“90年代の筋少”が攻めのセトリで客席を圧倒


続いては、メジャーデビュー35周年となる筋⾁少⼥帯が見参。現在のメンバーは、大槻ケンヂ(ボーカル)、内田雄一郎(ベース)、本城聡章(ギター)、橘高文彦(ギター)と、ほぼ “90年代の筋少” に戻っている。多くの人がイメージする、ハードロック路線を強化していた頃のバンドの姿である。1988年のメジャーデビューアルバム「仏陀L」に収録された「サンフランシスコ」から始まる。本城聡章と橘高文彦、タイプの異なる2人のギタリストが、ステージの左端と右端で超絶プレイを見せながら観客を煽る。コロナ禍以降の筋少のライブは、アイドルファンのようにカラーチェンジできるペンライトを持って盛り上がるスタイルが確立されている。そこはバンドブームの頃とは大きく変わった点だといえる。

続いてのMCは大槻ケンヂの独壇場だ。ちわきまゆみに紹介されてステージに登場したことを受け、「紹介のあるライブというのは、久々にテレビ神奈川の公開録画に来たみたいで、懐かしくてよかった」と感想を述べた。


さらに「今日は新曲なんかやらずに、攻めたセットリストでやるよ! まず、『さよなら人類』でしょ。それから、『紅』をやって、『お江戸-O・EDO-』もハズせない。なんだったらスイマーズの曲をやってもいいんだ。マサ子さんだってえ!」とバンドブーム時の固有名詞を連発したネタで観客をニヤニヤさせる。その後も長めのMCが続いたが、それも筋少のライブには不可欠なものである。

そこから、「踊るダメ⼈間」「元祖⾼⽊ブー伝説」「日本印度化計画」など攻めに攻めた楽曲ラインナップが会場を一体化させた。大槻ケンヂのヴォーカルは衰えておらず、他メンバーの演奏技術の高さは圧巻だ。それが、巨大スピーカーを通じて会場に響き渡る。重低音が下っ腹にズシンズシンとくる。

筋少の楽曲群は、世の不条理と、そこで生きていく人間を物語化した歌詞が多い。たとえば「踊るダメ⼈間」には、筋少流に「死生観」が表現されている。

「それでも生きていかざるをえない」

「踊るダメ⼈間」は、「Diamonds」とは真反対の方向からバンドブームから35年後の、辛苦も風雪も経験してきた観客たちへのメッセージになっていたのだ。大槻ケンヂは比較的マジメな話もした。「ロックはアンチ・ノスタルジーみたいなところがあった。だけど、ロックミュージシャンにはノスタルジー配給人という義務がある。リスナーが青春時代の曲を聴いて懐かしく思う。それが明日への活力になる。だから前向きだ」。今回のイベントの意義をこのように語りつつ、最後は定番曲「釈迦」でまた攻めた。



35周年のジュンスカは、35年後を意識したステージで泣かせる


ラストを締めくくるのは、東名阪の3公演すべてに出演となるJUN SKY WALKER(S)だ。現在のジュンスカは、宮田和弥(ボーカル)、森純太(ギター)、小林雅之(ドラムス)の3名。ベースはサポートメンバーが務める。黒い革ジャンにサングラスのスタイルで登場した宮田和弥は「行くゼ、ハネダ〜!」と叫んだ。

まずは「すてきな夜空」「MY GENERATION」と初期の曲を続けて歌い観客を引き付ける。宮田和弥のどこかペーソスを感じさせる歌声は変わらずだ。ギブソン社製のレスポール・カスタムを抱えた森純太の髪の毛はツンツンと立っている。 歌い終り、開口一番「真夏に革ジャンは熱いぜ!」。宮田和弥はまた、自分たちがトイズファクトリーの第1号デビューで、第2号が筋少だったというエピソードを披露。「一緒にやれることは最高です。ホントは『ボヨヨンロック』をやりたいところだ」と笑わせる。



ジュンスカは今年、筋少同様にメジャーデビュー35周年である。そのタイミングで、久々にトイズファクトリーにて「もう一度 歩いていこう」と「そばにいるから」という新しい曲を作った。これは、「ジュンスカによるジュンスカのオマージュ」がテーマだという。「もう一度 歩いていこう」は、デビュー当初の代表曲の歌詞のフレーズが散りばめられた応援ソング。そして、「もう一度、歩いていこうよ」「転がり続けろ、毎日がスタート」といった、サビの部分は時間の経過を意識した歌詞である。ジュンスカも明らかに「生と死」を強烈に意識している。さらに途中で革ジャンを脱ぎ、サングラスを外した宮田和弥は客席に「みんな生きていてくれてありがとう!」とも言った。バラード曲「そばにいるから」はその色がさらに強い。この曲は「この歌がいつもあなたといられますように」という歌詞で始まる。 “離れても歌は聴く人のそばにいる” という内容である。そして、「いつかこの世界から僕が消えてもそばにいるから」と終わる。

そのあとに聴く「START」や「全部このままで」はひと味もふた味も違った。宮田和弥はステージ上でこんなことも言った。「僕らは35年前の曲を未だに歌っている。僕らも学生の頃に聴いた曲は宝物。それは消えないと思う。年齢が変わってからそれを改めて聴くと、解釈も変わり、聴こえ方も変わる」。

アンコールはナシ。ジュンスカのメンバーがそのままステージに残り、そこに岸谷香、筋少のメンバーが再登場。セッションでの「歩いていこう」だ。35年後の宮田和弥と岸谷香と大槻ケンヂが歌う。

「歩いていこう これからもずっと」

今回のライブで聴けたあの時代を代表する曲の数々は、長い時間を経て新しい価値を生み出していたのである。そして、ブームが巨大だっただけに、今もそれが心に刺さる人の数は多いだろう。また、超激戦区ともいえる時代にトップを走り、今も現役のバンドはパフォーマンスに凄みを増している。そこにも一見の価値がある。

「バンドやろうぜ ROCK FESITIVAL」は、今後、もっと大きなムーブメントになっていくかもしれない。

Photo by umihayato

Information
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【出演アーティスト】
岸谷香/ 筋肉少女帯/ GO-BANG’S/ ZIGGY/ JUN SKY WALKER(S)/PERSONZ/ RESPECT UP-BEAT

【配信日時】
■ ディレイライブ配信: 2023年10月22日(日) 20:00開演
※19:30配信開始 ~30分間の蓋画表示後、20:00より本編スタート

https://t.unext.jp/r/banyarofes/

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