世界中で戦ってきたサイボーグ戦士たち
そう、私が生まれた1960年代から、サイボーグたちは世界中で戦ってきた。
今や当たり前のように語られる “軍産複合体” という概念を最初に教えてくれたのも彼らだった。軍需産業を営みながら、民族運動や反政府運動を影から操り世界情勢をも操作する組織・ブラックゴーストからの脱走から始まったサイボーグたちの戦いは、現実の米ソ冷戦の危機、ベトナム戦争と交差して描かれ、その後も時代や世相の変化に応じて改変され続ける――
劇場版『009 RE:CYBORG』(2012年)では自爆テロ事件を物語に組み入れるなど、今なお、新しい作品が次々と生み出されている状況だ。
半世紀以上にわたる歴史、数多くの名曲
『サイボーグ009』は1964年から連載開始。『週刊少年キング』『週刊少年マガジン』『週刊少年サンデー』『少年ビッグコミック』など、複数の出版社や雑誌を渡り歩き、漫画家・石ノ森章太郎のライフワークとして長きに渡って連載され続けた作品である。そして、それらを原作にしたテレビアニメや OVA、CM、劇場公開作など数多くの作品が半世紀にわたって僕たちの目に触れてきた。
50年以上に及ぶその歴史は、当然、数多くの楽曲も生み出している――
2000年以降では小室哲哉が作詞・作曲した「What's the justice?」(2001年)やMONKEY MAJIKの「A.I. am Human」(2016年)が耳に残っているが、今回は1980年前後に放送されたテレビシリーズ(第2作)のアニソンを強くオススメしたい。
成田賢が歌う「誰がために」これぞアニソンの王道!
それは、必殺シリーズのテーマ曲「荒野の果てに」でも手腕を振るった、平尾昌晃作曲の「誰がために」。望まぬ形でサイボーグに改造されてしまった主人公たちの悲しみや世界を守るために孤独な戦いを続けなければならない彼らの宿命… それを原作者である石ノ森先生が思い入れたっぷりに歌詞に深く刻み込んでいるところがいい。
作品のテーマや物語をわかりやすい歌詞で表現し、心に沁みるメロディに乗せる。そして、感情を込めた成田賢のヴォーカル。複雑な構成やキャッチーなワードで聴かせるのではなく、あくまでもシンプルに心に直接響く曲を作ろうという姿勢に痺れる。何しろ一度聴いたら一緒に口ずさめる歌いやすさ… これぞ、アニソンの王道だ。
サイボーグ009が描かれる世界で、主人公たちが守ろうとするものは常に人であり、その敵もまた人。時にそれは神や人知を超えた存在である場合もあるが、それもまた人の心の中にある不条理や悪意を反映して描かれる。
先の見えない未来、戦争とは何か、平和とは何か、愛とは何か、時には日々の煩わしさを忘れてサイボーグ戦士たちが「誰がために」戦っているのか、考えを巡らせてみるのも良いかもしれない。
Song Data
■ 誰がために / 成田賢
■ 作詞:石森章太郎
■ 作曲:平尾昌晃
■ 編曲:すぎやまこういち
■ 発売:1979年3月1日*2017年1月1日、2018年7月19日、2020年7月19日に掲載された記事をアップデート
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2023.11.13