日曜日の朝、『題名のない音楽会』(テレビ朝日 / 2017年1月29日OA)を久々に観た。『ドラゴンクエスト』のテーマ曲がオーケストラで再現され、深い感銘を受けた。クラシックの名曲と遜色のない美しい調べ。そして、番組中に作曲者である、すぎやまこういちさんのインタビューが差し込まれる。
当時(1985年頃)ゲーム音楽では、3音しか音が使えなかった。目減りのしない音楽は何か? その結果、クラシック音楽をイメージした。
繰り返しゲームをプレイしても飽きない曲とは何かを突き詰めたところ、クラシック音楽へと回帰したというすぎやま氏の選択眼には驚いた。そしてクラシックの名曲を大きくイメージしつつ、逆算して3音に落とし込む。なんてすごい発想だろう。私は思わず身を乗り出してオーケストラの演奏に聴き入ってしまった。
続いて「アレフガルドにて」「ジプシーダンス」「結婚ワルツ」などが披露されていく。私はなぜかその楽曲を聴いている内に『ドラゴンクエスト』(1986年発売)以前… そうもっと昔、物心ついたころから知っているような深い懐かしさを感じ始めていた。それもそのはず、すぎやま氏は『サイボーグ009』(第2期 / 1979~1980年放送)のBGMや、さらに遡れば『帰ってきたウルトラマン』(1971~1972年放送)の主題歌も作曲しているのである。
『サイボーグ009』ではBGMの作曲以外に主題歌とエンディングテーマ(平尾昌晃作曲)の編曲も手掛けているが、原作者・石ノ森章太郎が作り上げた壮大なテーマを表現し尽くしており、曲から受ける優しさや哀愁、大きな愛に包まれるような印象は編曲を担当したすぎやま氏の功績と言えるだろう。とにかく音楽が分からぬ子供にまでストレートに伝わる音色に脱帽である。
また『帰ってきたウルトラマン』は、私たち “昭和40年男” に分類される男子にとって忘れえぬ重要なピース。なぜなら、再放送ではなくリアルタイムで見た最初のウルトラマンは “帰マン”(※)だったからだ。
♪きみ~にも~見え~るぅ~。ウ~ルトラの~ほぉ~し~
学校からの帰り道、幼なじみたちと何度この歌を歌っただろうか。人生の半分を越えてしまった現在でも心の奥には今尚この曲の歌詞と旋律がハッキリと刻まれている。すぎやま氏の音楽にすっかり縛られていると言ってもいい。だからだろうか、巡り巡って『ドラクエ』のサウンドトラックを聴くと異常にテンションが上がってしまうのだ。
さて、唐突かもしれないが、この先、人生に終止符が打たれる時のことを想像してみよう。今際の際(いまわのきわ)に見ると言われている人生を記録したオールラッシュ映像。走馬灯のように流れ蘇える記憶の中に、必ず両手を十字に重ねウルトラマンの真似をしている子供の姿があるはずである。その時、きっとその主題歌を歌った記憶もセットで蘇えるに違いない。そして、生涯の様々な記憶を巡り終え、一番最後の記憶が消えた後に… もしかすると3音の『ドラゴンクエスト』のエンディングテーマが鳴り響くんじゃないだろうか。いや、マジで。
※カタリベ注:
帰ってきたウルトラマンは、初代のウルトラマンと区別してこう呼ばれていた。他に「新マン」とも呼ばれる。
2017.02.08
YouTube / しょうあああふぇえ
YouTube / MusicStar MandolinOrchestra
YouTube / 荒城嶺
Information