原作は高橋留美子、1989年4月にスタートした「らんま1/2」
『夕やけニャンニャン』から生まれたおニャン子クラブの人気が急上昇していた1985年秋、フジテレビの土曜19:30〜20:00枠でアニメ『ハイスクール!奇面組』がスタートした。おニャン子クラブ内のユニット、うしろゆびさされ組やうしろ髪ひかれ隊による主題歌・挿入歌にして人気を博し、2年間に亘るロングランとなった。その後、同枠はやはりうしろ髪ひかれ隊の主題歌によるギャグアニメ『ついでにとんちんかん』が引き継ぎ、間に『名門!第三野球部』を挟んで、1989年4月にスタートしたのが『らんま1/2』だった。
原作は高橋留美子。『うる星やつら』『めぞん一刻』に続くアニメ化はそれまで同様にキティ・フィルムとスタジオディーンによって制作された。オープニングテーマには西尾えつ子「じゃじゃ馬にさせないで」、エンディングテーマには坂上香織「プラトニックつらぬいて」といずれも新人アイドルの曲が起用され、第14話からのエンディングテーマはCoCoのデビュー曲「EQUALロマンス」となる。もともとはフジテレビ1989年夏のキャンペーンソングとして制作された曲であったという。
アイドル冬の時代といわれる90年代前半を支えたCoCo
CoCoは、1989年4月にスタートしたフジテレビのバラエティー番組『パラダイスGoGo!!』でアイドル育成プロジェクトとして設けられた “乙女塾” から誕生したアイドルグループ。当初は、宮前真樹・羽田惠理香・三浦理恵子・大野幹代・瀬能あづさの5人で始まり、1992年に瀬能あづさがソロに転じた後、1994年の解散まで4人で活動を続けた。同じく乙女塾から輩出された3人組のribbon(永作博美・松野有里巳・佐藤愛子)らと共に、アイドル冬の時代といわれる90年代前半を支えた存在である。
作詞を及川眠子、作曲を山口美央子が手がけた「EQUALロマンス」はキラキラしたアイドルポップスで、デビューシングルに相応しい傑作。『らんま1/2』にCoCoの曲が使われたのは、おニャン子クラブ以来のフジテレビ発アイドルとアニメのコラボの構図が正しく保たれていたことになる。エンディングテーマとして「EQUALロマンス」が使われたのは僅か5回に留まるも、1989年10月から『らんま1/2 熱闘編』となり、放映枠が金曜17:30~18:00枠へ移動した後には、楽曲起用の機会も増えてゆく。
乙女塾との関わりがさらに密になった「らんま1/2 熱闘編」
『らんま1/2 熱闘編』は、もともと17時からの月~金の帯で1時間枠だった『パラダイスGoGo!!』が30分となったタイミングで金曜のその後枠に置かれる形になったこともあり、リニューアル後はフジテレビ “乙女塾” 出身!CoCoとribbonが歌った『らんま1/2』テーマソングとの関わりがさらに密になる。エンディングテーマは西尾えつ子や東京少年であったが、オープングテーマにはribbon「リトル★デイト」に次いでCoCo「思い出がいっぱい」を起用。以降は早坂好恵やKUSU KUSUに委ねられつつ、ソロに転身した瀬能あづさのデビュー曲「もう泣かないで」が使われた時期もあった。
ribbonのデビュー曲となった「リトル★デイト」は三浦徳子の作詞、後藤次利の作曲で、ちょっと愁いを帯びたメロディーがアニメのオープニングに映えていた。詞も曲も切なさに満ちた「思い出がいっぱい」はCoCo3枚目のシングル「夏の友達」のカップリングとしてリリースされた両A面扱いの曲。及川眠子の作詞、岩田雅之の作曲による。岩田はCoCoのセカンドシングル「はんぶん不思議」や、ribbonの「サイレントサマー」などのアイドルソングを手がける一方で、高橋真梨子や郷ひろみらに提供した大人向けの楽曲も多い。
林原めぐみや日高のり子ら、キャラクターボイスによるカバーが収められたCDも作られるなど、これらの歌は作品に必要不可欠な存在であったといえる。アニメとの関係が最も濃密だった時代、80年代後半から90年代にかけて生み出されたアイドルのタイアップソングは、それぞれの作品のイメージも加味されて魅力が倍増しているのだ。
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2023.10.20