隠れた名曲、メアリー・マッグレガーが歌う「さよなら銀河鉄道999」主題歌

ゴダイゴだけじゃない！ 銀河鉄道999の隠れた名曲

銀河鉄道999の曲と聞いて一番に思い浮かぶのは、やはりゴダイゴの「銀河鉄道999（THE GALAXY EXPRESS 999）」だろうか。希望に溢れるメロディーと歌詞は主人公・星野鉄郎の姿そのものだ。しかし、今回はこの曲の話ではない。この作品から２年後に作られたアニメーション映画『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』の隠れた名曲「SAYONARA」を皆さんはご存じだろうか…。

この『さよなら銀河鉄道999』は、物語というよりも “ポエム” のような作品だと思う。キャラクターたちが語る言葉はさながら “詩” であり、美しくもせつない “歌” のようでもある。

パルチザンの老兵と、キャプテンハーロックからの熱いメッセージ

冒頭で、鉄郎を999に乗せるべく機械化人と戦ったパルチザンの老兵は最期の瞬間につぶやく――「鉄郎。いつかお前が戻ってきて地球を取り戻したとき、大地を掘り返したら、わしらの赤い血が流れ出すだろう。ここは我々の星だ。我々の大地だ。その赤い血を見るまでは… 死ぬなよ。わしらのせがれ… よ…」鉄郎への熱いメッセージが胸を打つ。

そしてハーロックが口にした「親から子へ、子からまたその子へ血は流れ永遠に続いていく。それが本当の永遠の命だと俺は信じる」というセリフは『銀河鉄道999』の最大のテーマ “永遠の命とは何か” の答えだろう。

今こうして大人になった自分を振り返り、果たして老兵のように、若者たちの背中を押せるような大人になっているだろうか、ハーロックの言うように命の素晴らしさを噛みしめながら生きているだろうか… と、つい自問自答してしまう。壮大なインストゥルメンタルも作品に色を添え、すべてにおいて美しさが溢れた映画作品に仕上がっている。

メーテルの葛藤、そして城達也のナレーション

迎えるラストシーン。一度は鉄郎と生きていこうと決めたメーテルだったが、やはり999には乗らず、鉄郎を見送る道を選ぶ。鉄郎の乗った999を見送りながらメーテルは言う――
「私は青春の幻影。若者にしか見えない時の流れの中を旅する女。メーテルという名が鉄郎の思い出の中に残れば… それでいい。私は… それでいい。さようなら鉄郎。あなたの青春と一緒に旅をしたことを私は永久に忘れない。さようなら私の鉄郎」

最後までメーテルは大人の女性だった。時に母として、姉として、初恋の人として… 最後まで鉄郎の憧憬として生き続けていくことを選び、愛するがゆえに鉄郎の手を離す。

最後に城達也のナレーション――
「人は言う。999は鉄郎の心の中を走った青春という名の列車だと」

汽笛を鳴らす999。締めくくりの名台詞――
「汽車がゆく。今、万感の思いを込めて汽笛が鳴る。今、万感の思いを乗せて汽車がゆく。さらばメーテル。さらば銀河鉄道999」

…そして 少年は大人になる

メアリー・マッグレガーが歌う珠玉のバラード「SAYONARA」

観ている人たちの感動がマックスに達したところで、ダメ押しで流れてくるのが今回紹介したいエンディング曲「SAYONARA」だ。アメリカのシンガー、メアリー・マッグレガーが歌うせつないバラードで、鳥肌が立つほど素晴らしい曲なのだ。ノスタルジックなメロディーと、母性を感じさせるぬくもり溢れる歌声が、メーテルの心情を深く表現している。

歌と共に作詞もメアリーが担当。アニソンで英語曲など異例中の異例だった時代に、なぜこの曲が作られることになったのか、なぜ彼女が起用されたのか、彼女はどういうアーティストだったのか… 詳しい話も、経緯もいまひとつよくわからない。メアリーもまたメーテル同様にどこかミステリアスで、分からない部分が多いからこそ、この曲の神秘性が深みを増しているようにも思う。ただ言えるのは、この曲が本当に素晴らしいもので、今でも999ファンの間で愛され続けている珠玉の名曲ということだ。

英語の歌詞の中、“SAYONARA” という言葉だけが日本語で歌われていて、際立ち、これがせつなさを増幅させる。

一人ぼっちでトランクを持ち、夕日に向かって歩ていくメーテルの姿と回想シーンが流れ、同時に日本語訳が流れる。多くのアニソンが子供たちのためにと漢字にフリガナを打っていた時代に、英語の歌詞、そして日本語訳が流れるなんて斬新すぎる。

さよならの意味… 心の中で生き続ける青春の記憶

最後にこの曲の歌詞の一部を残しておこうと思う。和訳がとても素晴らしいので併せて読んでほしい。当時、小学３年生だった私は映画館でこの作品を見て、曲を聴き、子供ながらにも涙が止まらなかった。今改めて聞くと、恋人との別れはもちろん、愛する家族、巣立っていく子どもを見送る親の気持ちも感じることができて、特に子供を持つ方は心に響くのではないだろうか。

時間（とき）は確実に私たちを大人にしたけれど、鉄郎を通してメーテルと共に999で旅した私たちの青春の記憶は、これからもけっして色あせることはない。そしてこの曲とともにメーテルは、これからも私たちの心の中で生き続けてゆく。

　SAYONARA, sweet memories
　it's goodbye
　SAYONARA, Don't look back
　Don't ask why
　The time to come will come
　And you will go alone
　Keep to your heart SAYONARA

　さようなら なつかしい思い出よ
　お別れです
　さようなら ふり向かないで
　そのわけは 聞かないで
　きたるべき時がきて
　あなたは ひとり旅立つ
　心にとどめて さよならの言葉を…

2020.07.31