9月10日
伝説のアルバム「タモリ3」~ ヒップホップとしてのタモリ論
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2018年3月22日木曜日、新宿ロフトプラスワンで行われた『迷盤・珍盤・アングラ盤(爆音鑑賞会)』という、ものものしいタイトルのイベントに、能町みね子さんやラッパーのダースレイダーさんと並んで出演させていただきました。

「迷盤・珍盤・アングラ盤」といえばこれだろう、ということで、私は発売禁止になったタモリのサードアルバム、その名も『タモリ3』(81年)のLPをかけることに。

まず、このアルバムの内容の説明をします。サブタイトルは「戦後日本歌謡史」。つまり戦後の歌謡曲の歴史をパロディにしたもので、収録されている楽曲はすべて、有名な歌謡曲のメロディと歌詞を少しだけ変えたものになっているのです。少し長くなりますが、以下が収録曲のリストです。

■サンゴの唄(唄:波路道子)
■たそがれのオワイ航路(唄:不詳)
■入院ブギウギ(唄:赤置シズ子)
■オチューシャ(唄:不詳)
■全国浪人予備校生の唄(唄:不詳)
■おキュウ小僧(唄:愛田勝彦)
■おカミさん(唄:春日八幸)
■グラグラコンブ(唄:三橋美起也)
■東京ホストクラブ(唄:トランク坂井)
■おいらを呼ぶドラマ(唄:牛原寅次郎)
■ユデタマ(唄:ミッキー山下)
■パパは何でも知っている(唄:平野雅章)
■セーケメ節(唄:梅木いとし)
■フジヤマ・ママ(唄:館田久彦)
■テキヤスタイルのお兄さん(唄:ダニー池田とパラゾールキング)
■伊豆でも梅を(唄:足幸夫)
■放浪三年生(唄:馬木一夫)
■肉のフラメンコ(唄:西小輝彦)
■君といくつまでも(唄:葉山雄三)

■ハラをサイタ(唄:ダイク真木)
■ブルー・エンペラー(唄:ジャッキー佐藤とブルー・コメットさん)
■ボロだけに(唄:タイガージャー)
■フキさネギさイモさ(唄:カーナツービート)
■世界の国からさようなら(唄:三波伸夫)
■長嶋は今日もダメだった(唄:富士山田弘とプールサイド)
■クツヒモ・カミソリ(唄:八代ひろし)
■昭和オニアザミ(唄:おくらと拓郎)
■田舎の子、都会の子(唄:高ひろみ)
■USO(唄:ピンカラ・レディ)
■時間よどなれ(唄:矢沢平吉)
■勝手にダイドコロ(唄:カザン・オールスターダスターズ)
■施設の中で(唄:松林痴春)
■来週デイト(唄:田畑俊彦)
■モッキン・バード街道(唄:山口友恵)

「有名な歌謡曲のメロディと歌詞を少しだけ変えたもの」と書きましたが、やはり、それでは許されるわけはなく発売が見送られることになったのですが、タモリはその決定に激怒し、自らの番組『オールナイトニッポン』で、このアルバムをかけまくり、それこそ「アングラ」な人気が高まっていくことになる。

そういう追い風もあって、とても奇妙な決定なのですが、81年の9月、大手レコード店チェーンの新星堂だけで販売することが決定、1か月間で3万5千枚を売り切ったといいます(そのため未だに、それほど高くはない値段で取引されています)。しかし、販売することに対して老舗レコード会社が猛抗議。結局は再度、発売禁止となったのです。

「発売禁止」(発禁)という、音楽ファン垂涎のエピソードを持っている上に、のちのタモリの神格化も相まって一種の伝説となっているアルバムです。「それなら、この機会に若い世代にも聴いていただこう」ということで、先日のイベントに持参したわけです。

でも、結論から言っておけば、このアルバムは伝説となるほどの作品ではありません。あの小林信彦ですら、自著『日本の喜劇人』のタモリの項目にて「じっさい、つまらない」と書いているのですから。

私はこのアルバムを大学時代に何万回と聴いたくちですから、「つまらない」とはさすがに思いませんが、それでもタモリの他のアルバム『タモリ』(77年)、『タモリ2』(78年)に比べると正直、一段落ちると思います。逆に言えば、それくらい初期の2枚は傑作なのです。

タモリのベストトラックと言えば、ファーストアルバム『タモリ』収録の「アフリカ民族音楽 “ソバヤ”」にとどめを刺します。トーキング・ヘッズの数年先を行くアフリカンビートをバックに、タモリが訳の分からない奇声を発し続けるという、珍曲にして名曲。感動的ですらあります。

ですので、この『タモリ3』については、伝説に惑わされず、等身大で語られる必要があると考えるのです。便利なこの世の中、現在では動画サイトでも、このアルバムの全曲が聴けるようです。全曲だと少し長いなぁという方は、「B面」のサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」のパロディ=「勝手にダイドコロ」から聴いてみてください。これが、このアルバムの中でのベストトラック。

ここで、先日のイベントに話を戻せば、これを聴いた後、舞台で隣に座られたダースレイダーさんのお話に膝を打ちました――「要するに、タモリさんはヒップホップなんですね」。

歌謡曲の原曲を素材としながら、そこに色々なものを上乗せして、新しい作品に仕立て上げる。まさにヒップホップ。実は、『タモリ2』収録の長編「教養講座 音楽の変遷その1―― 旋律の源とその世界的波及について」も、あるメロディの断片を元ネタに、世界の民謡を作っていくという、極めてヒップホップ的なアプローチなのです。

もし『タモリ3』が普通に発売されていたとしたら、日本のコミックソング史というよりも、むしろ、ヒップホップ史に、大きな影響を与えたのではないかと思います。

あ、最後に。『タモリ3』の一番いいのは、ジャケットです。ジャケットに散りばめられている、クレイジーなタモリの姿は、『笑っていいとも!』以前の、「アングラ」なタモリの姿が冷凍保存されています。何度眺めても見飽きません。

2018.04.02
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2018/04/02 15:24
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