大人になってから、悲しい思いをすることが増えた。
友人には「そういうもんじゃないの」と言われたりするが、本当の理由はよくわからない。でも、大人になって良かったと思うこともある。それは、代り映えのしない生活や、平凡な毎日が、実はかけがえのないものであると、身に沁みてわかるようになったことだ。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「スタック・ウィズ・ユー」は、そんな変わらないことへの喜びを歌った曲だ。
ここで登場するのは、ある程度の時間を一緒に過ごしてきた男女だ。彼にとって彼女と一緒にいることは当たり前で、彼女にとっても彼はそこにいて当たり前の存在だ。そうした感覚になるには、人それぞれかかる時間が違うだろう。つきあって1年という人もいれば、10年かかる人もいるかもしれない。とにかく、このふたりもまたそういう関係なのだ。
でも、彼らにだっていろいろあったはずだ。アップな時もあればダウンな時もある。人並みに別れようとしたこともあったかもしれない。でも、気がつけば今もこうして一緒にいる。別れるにしても、なんとなくタイミングを逸したというか、今さら遅いように感じている。
彼らもただ変わらなかったわけじゃない。いろいろな事があったのに、それでも変わらなかったのだ。今ではすべてが当たり前に思えるかもしれないが、最初からそうだったわけじゃない。
これまで生きてきて、仲間であれ恋人であれ、良好な人間関係を築くたび、ずっとその状態が続いていくことを願ったものだった。でも、ほとんどの場合、その願いは叶わなかった。いつしか僕らは疎遠になり、離ればなれになった。今ではそれが普通なのだろうと思っている。
でも、もし長い時間が経っても変わらない関係があるとすれば、それはやはり特別なのだ。この歌に登場するふたりも、きっとそういう間柄なのだろう。でも、大袈裟に考えるのは照れくさいから、自分たちのことをこんな風にして語るのだ。
ずっと変わらない電話番号や
昔からの友達や
いつまでも同じ住所みたいなもの
古い番号にかければいつでも繋がって、会えば昔と同じ顔で笑ってくれて、訪ねれば必ずそこにいてくれる。それはこれからもきっと変わらないのだ。
そうさ それが本当のところ
僕は君とこうしていられて幸せだよ
だって 見ていてわかるから
君も僕と一緒で
幸せだと思ってくれているのが
大人になってから、悲しい思いをすることが増えた。でも、そうじゃないこともある。かつては退屈でつまらないと思っていたことが、今ではこんなに愛おしい。
2018.09.20
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