2014年感動の来日公演から、キューバ公演、モノラルボックスの発売、そしていぶし銀のブルースが素晴らしい11年ぶりの新作『ブルー&ロンサム』のリリースなど、ますます話題に事欠かないローリング・ストーンズ。一般的に80年代は、彼らの「迷走期」であるとされている。そして事あるごとに、その証明としてこの『ダーティー・ワーク』が槍玉に挙げられることが多い気がする。
ブリティッシュ・ビートマニアとして、またブライアン・ジョーンズが好きな僕にとってまず60年代の彼らは別格だ。逆に「黄金期」と呼ばれる70年代中頃の彼らや、ロン・ウッド加入後のアルバムは、なんとなく聴き逃していた。しかし、そんな僕をストーンズ・マニアに一変させたのが、奇しくも『ダーティー・ワーク』であったのだ。
それはYouTubeで「ワン・ヒット(トゥ・ザ・ボディ)」のPVを視聴したことから始まった。冒頭のリフが終わり、チャーリーのスネアが高く響く。その音に合わせてヒップを突き出すトゥーマッチなミック。そして、キレッキレのキース。ミックに蹴りを入れたり、ギターソロで謎の通路を駆けめぐる。そして、時々絶妙な角度でフレーム・インするチャーリー。ちょこちょこ動き回るロニー。そして、ふと見せるミックとキースの笑顔。それを後ろで確かめ、頷き合うロニーとビル。ともかく各メンバーのキャラが立った、情報量の極端に多いヴィデオだ。
曲自体もソリッドでかっこよかった。そして僕は急いでタワーレコードに駆け込み、アルバムを買ったのであった。いかにも80年代然としたジャケットは置いておいて、この『ダーティー・ワーク』には、隠れた名曲が多い。ジミー・クリフの参加した「トゥー・ルード」や「スリープ・トゥナイト」など、特にキースの曲は粒ぞろいだ。急逝した第六のメンバー、イアン・スチュワートのピアノソロも素晴らしい。そして、立派にストーンズ「沼」にはまり込んだ僕は、彼らからブルースの訓練を受けると同時に、20歳の誕生日を迎えたのだった。
2016.12.26
YouTube / The Rolling Stones
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