80’s Idols Remind Me Of… vol.3 青い珊瑚礁 / 松田聖子 松田聖子のシングル楽曲としては、より広い一般層へと大きく認知された、要は一般的なブレイクを果たした作品が、セカンドシングル「青い珊瑚礁」(80年7月発売)だった。 新たなアイドルシーンを開拓した80年デビュー組の3人の女性アイドル、松田聖子・柏原芳恵・河合奈保子… 中でも鳴り物入りでデビューした松田聖子は、1980年代の幕開けを飾るにふさわしい華々しい仕掛けが施されていた。 そもそも名門サンミュージックからのデビュー、初シングル(「裸足の季節」80年4月1日リリース)にしてテレビ CM ソング・資生堂「エクボ洗顔フォーム」のタイアップ、これはもう鳴り物入り以外のなにものでもない。オリコンシングルランキング最高位12位、30万超のセールスを記録、新人アイドル歌手としては、まずまずの滑り出しとなった。 しかしこの結果をまずまずと判断したのか、まだまだと判断したのかは、我々受け手側には知る由もないのだが… セカンド「青い珊瑚礁」からは、シンガーとしてのスタンス、というか “アイドル歌手” としてのスタンス・臨み方を大きく変えてきたのだ。 「裸足の季節」は決して悪い曲ではない。むしろ新人歌手としてはかなり良い曲を与えられていたし、松田聖子の歌唱もしっかりと送り手側の意向に応えた及第点のものだった。しかしおそらく “歌謡曲歌手たるもの必要最低限の歌の実力” をしっかりと前面に出すという姿勢が優先された… ある意味1970年代までの歌手像のひな形みたいなものに囚われ過ぎていたのではないか―― 福岡で見いだされた逸材を、時間をかけてデビューさせるに際し、そしてムダに歌がうまかったこともあり(あえてそう表現する!)、サンミュージックとしては旧態然とした “歌手像” を追い求めていたのかもしれない。 実は「青い珊瑚礁」、そういった歌手像のひな形を崩しにかかったチャレンジングな作品だった。「裸足の季節」全体を覆っていた、あまりに生真面目でうまさを前面に押し出す真っすぐな歌唱をおおよそ封印し、アイドルソングの魅力の要素でもある裏返り歌唱、曖昧な発音もそのまま活かした歌唱等を、前面に押し出してきたのだ。 サビ部分の、「私の恋は~」の 「の(お)」、「青いかぜ~」の 「か(あ)ぜ」といった裏返り歌唱、全体的にあ行、さ行、ら行の発音が曖昧な歌唱(「裸足の季節」だったら修正されていただろう)、これらが80年代の新たなアイドル像を標榜するにふさわしい松田聖子という類まれなる逸材を活かしきった手法だった! 「あの島へ~」の「あ」の発音なんて、もう堪らないし、このかわいらしさ優先には到底抵抗できないって、思いませんか? もちろん「… Little Rose 花びら触れて欲しいの」なんて、悶々ポイントもしっかり盛り込まれているのはさすがとしか言いようがない。 微妙なスタイルの悪さ / 美人じゃないけどとにかくかわいい / 決してブレない処女性 / 徹底的な偶像性 / そして完成された歌唱法… これらが一緒くたになった「青い珊瑚礁」、松田聖子のピークが訪れた瞬間である。 70年代後半の榊原郁恵、大場久美子、石野真子あたりが試行錯誤していたアイドル歌唱の結実、さらにはシルヴィ・バルタンやフランス・ギャルが開拓したアイドル歌唱スタンスの完成された日本人版の誕生―― それが、松田聖子による「青い珊瑚礁」だったのだ。歌詞引用: 青い珊瑚礁 / 松田聖子
2018.07.11
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