もう人生転がりっぱなしである。ローリングストーン状態である。
実家の近所に昔ながらの酒屋があるのだが、その脇が角打ち(カクウチ)になっている。角打ちとは酒屋さんの一角で、売っている商品をその場で飲み食いさせてくれる昭和時代に生み出されたシステムだ。
その日の夕方、実家の用事が終わり、ちょっとビールを一杯引っかけたのが始まりで、ツマミにクジラの缶詰を開けてもらったら、ほどよい甘辛味で、ついつい日本酒に手を出してしまった。すると、ツマミ→日本酒→ツマミ追加→日本酒お代わり→さらにツマミ追加と、いつもの通り坂道を転げ落ちてしまう一夜となった。
私の角打ち歴は長く、小学校低学年の時に祖父に連れて行かれてからなので、すでに40年の経歴になる(もちろん子どもの頃はお酒は飲まなかったが)。
同じくイギリスに50年以上の経歴を誇るローリングストーンがある。こちらは角打ちではなく、ロックバンドである。
「ザ・ローリング・ストーンズ」は1962年に活動を始めたから、今年、2018年で56周年ということになる。1990年に東京ドームで行われたコンサートは、世界のスーパースター初来日とあってもの凄いチケット争奪戦が繰り広げられたそうだ。その後95年に再来日した時に、とある事情から私はストーンズのコンサートを観ることになった。
とある事情というのは、その当時出入りしていた広告代理店の受付に「内角低めギリギリのボール」的な女の子がいた。つまりつい手を出してしまいたくなる女の子だ。その娘はストーンズの大ファンで、チケットが入手できたらデートしてもいいと条件を出してきた。実はチケットには様々な入手方法がある。ここで詳しいことは言えないが、私はその年のストーンズのアリーナチケットを易々と手に入れた。
当日東京ドームの待ち合わせ場所に来た彼女は、黒を基調にしたボディコンシャスな服装に、サテン地のチョーカーを巻いていた。開演前から私のテンションは「スタート・ミー・アップ」状態であった。
その公演時のミックと現在の私は同じ歳くらいなのだが、あのパフォーマンスを今やってみろと言われても、とても真似できないくらいアグレッシブなすばらしいステージであった。
終演後「このテンションを保ちながら… ムフフ」などと期待を膨らませて彼女を飲みに誘ったのだが「今日の余韻を抱いて寝たい」とつれないセリフを残し、さっさと一人で帰ってしまった。
残された私には、「アイ・キャント・ゲット・ノー・サティスファクション」だけが耳に残る一夜であった。
2018.04.30
YouTube / The Rolling Stones
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