個性的なメイクと奇抜なファッションに隠されたボーイ・ジョージの魅力と戦い
カルチャー・クラブの「カーマは気まぐれ(Karma Chameleon)」が全米1位になったのは、1984年2月のことだ。イエスの「ロンリー・ハート(Owner of a Lonely Heart)」を蹴落としての首位獲得だった。この頃が一番熱心にヒットチャートを追いかけていた時期なので、よく覚えている。
ヴォーカルのボーイ・ジョージは、個性的なメイクと奇抜なファッションでアイドル的な人気があった。その姿は自分がゲイであることを想起させるもので、そのことが彼の存在を一層際立たせていたようにも思う。
今と比べて差別的な言葉が普通に聞かれた80年代。この曲のサビで歌われる「カマカマカマカマ」を、誰もが面白がって歌っていた。しかし、事の善し悪しはともかくとして、ボーイ・ジョージはゲイであることも含めて愛されていた。彼には周囲にそう認めさせるだけの強さと魅力があったし、同時にそれが彼にとっての戦いでもあったことが、今となってみればよくわかるのだ。
ルーツは黒人音楽、カルチャー・クラブ「カーマは気まぐれ」
カルチャー・クラブのルーツには黒人音楽があり、「カーマは気まぐれ」にもソウルミュージックからの影響を感じ取ることができる。ソウルシンガーであるジミー・ジョーンズの古いヒット曲「ハンディ・マン」の盗作だと言われたのも(ほとんど言いがかりのレベルだったが)、そういった背景があってのことだろう。
「カーマは気まぐれ」のカーマが、恋人の名前とカルマ(業)のダブルミーニングだということは、随分後になってから知った。気まぐれな恋人のことを色がころころ変わるカメレオンに見立て、「そんなことばかりしていると、いつか君も同じような目に合うよ」という因果応報を歌っているわけだ。歌のタイトルにこれだけの意味が含まれていると知ったときは、さすがに唸った。
ボーイ・ジョージのスモーキーな声で歌われるメロディーは親しみやすく、一度聴いたら忘れられないものだった。モータウン直系のゆったりと跳ねるリズムも心地よく、ハーモニカの音色はどこか懐かしかった。
16カ国でナンバーワン!80年代を代表するヒット曲
思えば、「カーマは気まぐれ」は最初から古くて新しい曲だった。やけに耳馴染みが良く、以前にも聴いたことがある気がするのだけど、思い出せない。この曲にはそんな既視感があったように思う。
なぜそう感じたのかはわからない。メロディーが記憶の川を辿って、僕の中のノスタルジーを刺激したとき、歌は古い記憶になり、記憶は新しい歌になったのかもしれない。
そして、僕と同じように感じた人が世界中にいたのではないかと想像するのだ。
「カーマは気まぐれ」はイギリスやアメリカだけにとどまらず、世界中で大ヒットを記録した。16カ国でナンバーワンを獲得し、総売上枚数は500万枚を超える。80年代を代表するヒット曲のひとつと言っていいだろう。
これだけたくさんの人達の心に届いたのには、きっと何か秘密があるはずだ。解けそうで解けない秘密が、きっとあるに違いない。
※2017年11月26日に掲載された記事のタイトルと見出しを変更
▶ カルチャー・クラブのコラム一覧はこちら!
2022.06.14