マイケル・ジャクソンのアルバム『スリラー』から生まれた名作ミュージックビデオ3本。今回紹介するのは、「今夜はビート・イット」。
この曲は、ギターソロをエディ・ヴァン・ヘイレンが弾いたということで、ロック、メタル好きの私にとって以前よりもマイケル・ジャクソンに注目することになった思い出深い曲でもあります。スティーヴ・ルカサー、スティーヴ・ポーカロ、ジェフ・ポーカロら TOTO勢のバックも素晴らしい!
また、ミュージックビデオはミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』をベースにつくられ、83年当時の時代背景に置き換えた壮大な作品。「スリラー」にも出演しているマイケル・ピータース(決闘シーンの白いジャケットの方)やマイケル・デロレンゾなどプロのダンサーによる出演、振り付けに加え、約80名の本物のストリートギャング(らしい)が出演しており、それだけでニュースになっておりました。
海外版のウィキペディアには、あのトレーシー・ガンズ(ガンズ・アンド・ローゼズの初期ギタリスト、のちにメタルバンド L.A.ガンズを結成)が出演していたという記述もあります。
監督はボブ・ジラルディ。ミュージックビデオや CM のディレクターとして活躍しましたが、2000年には映画『ディナーラッシュ』を監督して高い評価を得ています。CM ではペプシのアーティストシリーズを手掛け、マイケルの頭髪が焼け焦げた事故のときも彼が担当していました。
マイケル・ジャクソン絡みではポール・マッカートニーとの「セイ・セイ・セイ」のミュージックビデオも制作、他のアーティストでは、ライオネル・リッチ-「ハロー」やホール&オーツ「ポゼッション・オブセッション」などを手掛けています。
それらを観ても分かるようにボブ・ジラルディ作品は、映画のような大掛かりなセットや本格的なストーリーをフィーチュアした芝居が織り込まれ、それを上手く短い尺でまとめるという、まるでミニ映画を作るような手法が多いようです。
「今夜はビート・イット」もまさに映画。わかりやすいストーリーや奥行きと迫力を感じさせるセット。迫真のダンスシーンをとらえた見事なカメラワークや俯瞰ショットなど、何度でも観たくなる見応えたっぷりの作品。これを観た後は、他のミュージックビデオが何だかしょぼく感じられました。まあ、まさかこの作品の直後にもっと驚かされる作品が出てくるとは思いませんでしたけどね。
そう、忘れてはならないのが、この作品を完全パロディ化したアル・ヤンコビックの「今夜もEAT IT」。今では本物のシーンはどっちだっけと間違えるくらい(ギターソロの終わりにギターから煙が出るのはどっち?)。これだけ凄いパロディビデオが存在したのも素晴らしい本家があってこそ。
この後の「スリラー」も「BAD」も「ブラック・オア・ホワイト」もそうですが、マイケルのミュージックビデオは一度まとめて映画館のフルスクリーンと大音量で観てみたいなあ。
余談:
2017年当時「今夜はビート・イット」でマイケルが着用した赤いレザージャケットがオークションにかけられたというニュースがありましたよね。値段は1080万円、日本人女性に落札されたそうです。あの頃、マイケル・ジャクソンと言えば赤の皮ジャンというイメージがありましたからねえ(「スリラー」でも赤かった)。80年代マイケル・ジャクソンの象徴。それを考えると1000万円安いかも、なんて思ったりしました。
次回は、いよいよ
「スリラー」です。
※2017年12月3日に掲載された記事をアップデート
2019.02.14