今から2年ちょっと前の話だが、英国のタブロイド紙『Daily Mail』のスポーツ欄に面白い見出しを見つけた。
Simply Dread! Fergie and Hucknall holding back the tears after late Fulham equaliser.
これは、世界的なフットボール・クラブ(サッカーは米語なので敢えてフットボールと表記)であるマンチェスター・ユナイテッドが、本拠地で当時最下位のフルアムに終了間際に追いつかれて2-2で引き分けた試合の記事である。
写真を見ると、マンUの伝説的名将で「Sir」の称号を持つアレックス・ファーガソン元監督の隣に、何とシンプリー・レッドのボーカリスト、ミック・ハックネルが座っている。
つまり、見出しの Simply Dread は Simply Red を、holding back the tears は彼らのヒット曲「Holding Back the Years」をもじったという訳だ。
そもそもシンプリー・レッドというバンド名は「ミック・ハックネルが赤毛だということ」と「彼が熱狂的にサポートしているマンUのシンボルカラーが赤であること」に由来しているらしい。
フットボールの母国イングランドでは、彼に限らず多くのミュージシャンが、自分がサポートしているクラブ名を表明している。例えば、ポール・マッカートニーのエヴァートン、エルトン・ジョンのワトフォード、スティングのニューカッスルを始め、オアシスのギャラガー兄弟がマンチェスター・シティの熱狂的サポーターというのも有名な話だ。
シンプリー・レッドは、85年末にリリースしたデビューアルバム『ピクチャー・ブック』がいきなりヒットしたが、日本の音楽ファンにとっては、日本人ドラマー屋敷豪太が正式メンバーとして参画し、91~92年に英国の年間チャートで2年連続1位になった『スターズ』の方が知られているかもしれない。
しかし、彼らの出世作であり初の全米No.1作品「ホールディング・バック・イヤーズ」は、今聴いても味わい深いバラードだと思う。ミックが17歳の時に書いた曲で、幼少時から持ち続けた抑圧感を歌ったらしいが、映像も含めて非常に英国的な作品ではないだろうか。
なお、彼らはその3年後、フィリー・ソウルの定番、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツの「二人の絆(If You Don t Know Me By Now)」をカバーして、再度No.1に輝いている。
Holding Back the Years / Simply Red
作詞・作曲:Mick Hucknall, Neil Moss
プロデュース:Stewart Levine
発売:1986年1月1日
2016.06.11
YouTube / Simply Red
YouTube / Simply Red
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