さて、この Re:minder における私の連載は、そのコンセプトを「80年代音楽解体新書」としているのですが、その「解体」の仕方が、音楽理論的な、やや小難しい話に偏ってきましたので、今回は久しぶりに、歌詞の話をしたいと思います。
さて、「作詞家としてもっと評価されるべき音楽家」だと思う人たちがいます。今回は、その1人として、レベッカの NOKKO を取り上げます。「隠れた名作詞家」として、他には、奥居香、小西康陽、木村カエラらもいますので、いつか彼(女)らのことも取り上げたいと思っています。
最近、再結成をし、過去作が見直されているかもしれません。今後、もしレベッカの過去音源を聴くことがありましたら、ぜひ歌詞に注目してみてください。
NOKKO の作詞の凄いところは、歌詞全体のストーリーというより、切れ味鋭い1~2行フレーズの作り方にあります。そういう意味では、名作詞家というより「名コピーライター」なのかも知れません。
さらに言えば、それらのフレーズは、おそらくターゲットとしていたであろう、(80年代の)女の子だけでなく、男性、ひいては、現在の私のようなオッサンまで射程においた幅広い層に向けて、書かれているような出来栄えなのです。
例えば、こんなフレーズがあります(以下、名コピーライター=NOKKO のフレーズを味わうべく、コピーライターがコピーを提案するときのように、紙の真ん中に、コピーを1行だけドーンと乗せる体裁で見せていきます。また、キャッチコピーっぽく見せるために、句読点を足しました)。

これなどは、女の子の気持ちを表現しながら、(ちょっと悪そうな)その女の子に惹かれる男性目線まで意識して、書かれている感じがしませんか?(男性諸君、この歌詞、萌えません?)。
つまり、一人の女の子(=NOKKO)としての自己表現にとどまらず、男性リスナーまで含めた幅広い層に売るために、高度に計算されたフレーズであり、そのあたりに、職業作詞家・NOKKO の凄みを見るのです。
そんなマーケティング臭いフレーズではなく、純粋に歌詞として美しいフレーズの代表作は、大ヒット曲『フレンズ』のこの2つでしょう。これらは、職業作詞家・NOKKO の最高傑作フレーズだと思います。


次に、松任谷由実『セシルの週末』などと並ぶ、日本ポップス史における「不良少女もの」の歌詞の傑作が『MOON』です。

そして、最後にご紹介したいのは、『SUPER GIRL』です。こちらは「OLもの」の歌詞なのですが、まさに「傑作フレーズてんこもり状態」になっています。こんなに切れ味鋭いフレーズが1曲に入っているのですから。




レベッカというと、NOKKO の絶叫ボーカルだけで語られることが多いのですが、ぜひそのボーカルで歌われている歌詞にも注目してみて下さい。では次回は、
そのボーカルそのものに注目します。ボーカリスト NOKKO の凄みを、今一度味わいましょう。歌詞引用:
CHEEP HIPPIES / レベッカ
フレンズ / レベッカ
MOON / レベッカ
SUPER GIRL / レベッカ
※2017年10月15日に掲載された記事をアップデート
2018.11.04