僕が初めて聴いたU2の曲は「ニュー・イヤーズ・デイ」だった。
タイトルから新年を迎えた日のことを歌っているのは、中学生だった僕にも理解できた。ところが、いざ聴いてみるとおめでたい空気は皆無で、ヒリヒリとした緊張感が曲全体を覆っていた。
プロモーションビデオもシリアスなもので、雪原で演奏するメンバー達の表情にはどこか戦士のような趣きがあった。その切迫した様子は、他のニューウェイヴバンドとは明らかに一線を画していた。
この曲の歌詞は、ポーランド民主化運動にインスパイアされて書かれたという。当時、共産主義国だったポーランドでは、国民の民主化運動が活発化し、戒厳令が敷かれるほど緊迫した状態にあった。つまり「ニュー・イヤーズ・デイ」は、そうした状況下で迎える新年のことを歌っているのだ。
静寂の中で迎える新年
世界は白い雪に覆われている
僕は君と一緒にいたい
昼も夜も一緒にいたい
新しい年が来ても何も変わらない
僕はもう一度君と一緒にいたい
僕はもう一度君と一緒にいたい
直面する現実が厳しいほど、人の希望は簡素化し、その純度は高くなる。この歌の主人公は、ただ愛する人と一緒にいたいと願っている。けれど、そんな当たり前のことすら叶わない。
それでも、主人公は今一度心に希望の火を灯す。必ずこの状況を切り抜け、再び会うことができるはずだと。
あぁ、ついにその時は来たのかもしれない
あぁ、それは今夜なのかもしれない
街は静まり返り、事態は何ひとつ変わる気配がない。けれど、希望を絶やさなければ、いつか願いは叶うだろう。この歌の主人公は、新しい年の最初の日に、そう信じているのだ。
今もこの歌と同じような気持ちで新年を迎えている人達がたくさんいる。この世界から争いがなくなる日はまだ遠く、すぐに何かが変わる気配はない。でも、誰もが愛する人と一緒にいられる世界であるべきだ。2018年がそのための第一歩となることを、心から願っている。
2018.01.02
vimeo / IntheYear2881
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