2023年 2月17日

【未唯mie インタビュー】世界で最も完璧な曲「ハレルヤ」をカバーした理由とは?

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『【未唯mie インタビュー】ピンク・レディー新解釈!度肝を抜いた5拍子の「ペッパー警部」』からのつづきからのつづき

レコード会社の枠を超えた未唯mieソロ活動の集大成


第1回のインタビューでも記したように、現在進行形である未唯mieにとっては将来の基礎固めとなる『MIE to未唯mie 1981-2023 ALL TIME BEST』だ。レコード会社の枠を超えたソロ活動の集大成で、彼女自身が “ミイ” に引っ掛けてチョイスした31曲から成る。その長いキャリアを大別すると、ピンク・レディーの延長で所属事務所やレコード会社の意向に沿って活動していた80〜90年代、その後ピンク・レディー再結成ツアーを挟みつつ、自身のディレクションで独立した活動を展開するようになったゼロ年代以後に大別できる。そのためこの2枚組オールタイムベストも、ほぼそれに準じた構成になっている。

未唯mie:もちろん単純に、録音時期とか契約の問題もあるとは思います。けれどやはりそれぞれに何か自分の籠めた思い、みたいなモノがあって、そこは前半・後半で大きく違っていると思います。ソロになって初めの頃は、所属するレコード会社や作家の先生方がイメージしてくださったMIEを、そのまま表現していました。

ーー そもそもデュオを解消してソロに転じた時、彼女には、ピンク・レディーのキャリアをキレイさっぱり捨て去る覚悟ができていた。それこそ他の新人みたいに、“まっさらな気持ちで再デビューする” くらいの心持ちだったのだ。しかし周囲のスタッフやファンたちはそれを許さなかった。だから彼女はピンク・レディー時代と同様、みんなに求められるMIEを演じ続けた。

未唯mie:でもせっかくソロになったので、自分にも多少はやりたいことが出てきます。ところがそれを事務所に言っても、全否定されてしまって…

ーー そこで自分の好きなコトがやれる環境を作ろうと、思い切っての独立。当時の音楽仲間を集めてみんなでプリプロダクションを制作し、ひとつひとつの音をジックリ丁寧に作り上げていった。そして、それを引き受けてくれたレーベルと契約。ところが最初は良かったのに、今度は新たな担当ディレクターが徐々に自分のアイディアを押し付けてくるようになって…。「アタるまでこの路線で行く」ーー と言われた彼女は、「それでは独立した意味がない」ーー と専属契約をかなぐり捨て、イバラの道を選択した。そして、そのあと最初に注目したのが、キッズ・ミュージックである。

未唯mie:「私はシンガーとしてどう生きていけば良いの? 何をすべきなの?」って、手探りが始まりました。そこで自分自身、“母親とあまり心が通じずに寂しい思いをした” ことを思い出し、世の親と子の絆を深めるような何かができたら嬉しいな、と。これが自分で歩き出す第一歩になったんです。

新録されたレナード・コーエンのカヴァー「Hallelujah《ハレルヤ》」


ーー その想いが、サンリオとの企画「キティとダンス!」と「サファイアの空に」に結実。そしてそれ以降、自分のやりたいことを見つけながら、アレコレ手を出しながら、自分探しをするように。そして何かひとつやり遂げると、またその先がだんだん見えてくるようになったそうだ。disc1最後に収録された「LOVE JAIL」や、アニメタル・レディー企画への参加、“未唯with X.Y.Z.→A” 名義によるファンキー末吉とのコラボレイトなどは、その好例と言える。

未唯mie:方向性はあまり定まっていませんけど、やりたいと思ったコトは積極的に手を付けていった感じですね。

ーー しかし、disc2では、その様相が一変する。その1曲目に鎮座しているのは、唯一このオールタイムベストのために新録されたカヴァー曲「Hallelujah《ハレルヤ》」だ。オリジナルは、カナダを代表するシンガーソングライターにして詩人レナード・コーエン。スタンダードみたいな静謐さを湛えたスローナンバーだが、実は84年発表と意外に新しい。コーエンはこの曲を作るのに5年を費やし、その歌詞の崇高さは “世俗的賛美歌” と賞賛されている。とりわけ英国では深く愛され、ジェフ・バックリィやアレクサンドラ・バークが全英チャート・トップ3に仕立てたほか、ボブ・ディランやジョン・ケイル、ルーファス・ウェインライトなども取り上げてきた名曲である。



未唯mieもまた、その歌詞の深さに感銘を受け、かねてから「私もこの曲を歌いたい!」と切望する。ライヴステージに掛けるつもりでいたところ、このベスト盤に新曲を収録する話が持ち上がり、「それならばこの曲を!」と一気に実現した次第。CDに封入されたご本人コメントにも“この曲を初めて耳にした私は衝撃を受けた”旨が記されている。

未唯mie:本当に、初めて耳にした時に、心が震えると言うか、涙が浮かぶぐらい感動した曲なんです。実際のレコーディングに当たっては、「どなたにアレンジをお願いするのが一番イイかな?」と思いましたが、すぐに井上鑑さんのお顔が浮かびました。

鑑さんの活動やライヴは普段からチェックさせて戴いていますが、単に巨匠とか売れっ子というのではなく、人類愛とかマインドを大事に音を紡いでいかれる方なので、彼しかいないなと。そうしたら鑑さんからも「僕に声を掛けてくれて嬉しい」と言ってもらえて。これだけオリジナリティのある形で、私の想いや鑑さんが思っていらっしゃるコトとかとか、そして「Hallelujah《ハレルヤ》」という楽曲自体が秘めているパワーみたいなもの、いろいろ全部を集約して完成させることができたと思っています。

ーー さらにコーラスにはベテランの坪倉唯子と、カヴァー集『CITY POP LOVERS』が話題のさかいゆうが参加。心が洗われるようなスピリチュアルハーモニーを舞わせている。アルバム発売に先駆けてMVが公開されているが、あれが現在の未唯mie。アイドル時代とは違って、深い情感を滋味たっぷりに表現する彼女に、あっ! と驚く音楽ファンも少なくないだろう。そして、これをdisc-2のトップに置いた彼女の心根を理解してこそ、真の音楽ファンだと言える。ここに今を駆け抜ける彼女のリアルな姿が詰まっているのだ。

ずっと変わらないのは、“言葉を伝えたい” という気持ち


ーー こうして心を鷲掴みにされる「Hallelujah《ハレルヤ》」に続いては、前述したサンリオやX.Y.Z.→Aとのジョイント企画、さらに比較的新しいデーモン閣下との共演曲「RAINING IN THE SUNSHINE」、初めて商品化された「おやすみさない」を挟むように、2007年のアルバム『me-ing』からの楽曲が並んでいる。そう、実はdisc-2は年代順のオーダーではなく、シンガーとしてのアイデンティティを覚醒させた後の未唯mieを強くアピールするモノなのだ。

未唯mie:そうですね。2枚のディスクは、エンターテイナーサイドとアーティストサイド、みたいに受け取って頂けたら分かりやすいかもしれません。その中でずっと変わらないのは、“言葉を伝えたい” という気持ち。ピンク・レディー時代を含め、表向きは楽曲スタイルやヴィジュアルの形、発声や表現方法もいろいろ変わっていますけど、その想いは不変だと思います。だからバラードとかシャンソン、カンツォーネみたいなジャンルとか音楽スタイルではないんです。“語り歌” とでも表現したら良いかな?

言葉を語るように歌い奏でる、それが一番シックリくるんです。リズミカルな曲でも、歌詞を伝えるように歌う。バラードだって必ずしも大きく歌い上げるだけじゃない。言葉の意味を、その曲に合った伝わりやすい形でシッカリと届ける。そういう歌を歌いたいって、ずっと思ってきました。



ーー それが最も理想的なカタチで完成したのが、今回の「Hallelujah《ハレルヤ》」だ。そこから未唯mieがどこまで進化していくのか、これからが楽しみでならない。

(取材・構成 / 金澤寿和)


次回予告:3回に渡ってお届けする未唯mieインタビューもいよいよ最終回。次回はピンク・レディー時代の逸話もたっぷりお届けします。

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2023.03.03
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カタリベ
1960年生まれ
金澤寿和
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