7月16日

ロックンロール早見優「Newsにならない恋」は南沙織の遺伝子?

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早見優『Newsにならない恋』
作詞:澤地隆
作曲:CHAGE
編曲:伊豆一彦
発売:1986年07月16日

早見優のロック路線「Newsにならない恋」


私の “早見優フェイバリット” と言えば「Newsにならない恋」(1986年)です。中原めいこ作詞・作曲による前年の「PASSION」あたりから始まったロック路線がいよいよ軌道に乗ってきて、高音がツーンと響く金属的なシャウトが決まっています。

この曲を歌う早見優を初めて見たのは、確か日本テレビ『スーパーJOCKEY』だったと思います。大学入学のために上京したての19歳。東京での初めての夏、悶々とした夏を過ごしていた私は、日曜の昼下がりに見た、彼女のはつらつとしたボーカルに釘付けになりました。

作曲はチャゲ。実は、この曲のチャゲ(&飛鳥)バージョンが、彼らのアルバム『MIX BLOOD』(1986年)に収録されているのですが、正直、ピコピコした彼らのバージョンよりも、ロックンロールな早見優バージョンの方が全然いい。

私はこの曲が好き過ぎて、2018年に発売された早見優のベストアルバム『35th Anniversary “Celebration” ~from YU to you~』の歌詞カードに、この曲について一文(一行)寄せていますので、お持ちの方は読んでみてください。

アイドル不遇の時代、シーンは歌謡曲とロックの中間市場へ


さて、このような “ロックンロール早見優” の路線は、当時の音楽シーンとも整合性の高いものでした。

というのは、80年代前半、あれほど盛り上がったアイドル音楽は、80年代後半に向けて徐々に沈静化し、アイドル不遇の時代が到来。“可愛い女の子が歌い踊る音楽” は、レベッカ(NOKKO)や渡辺美里などによる、歌謡曲とロックの中間市場へと移行していきます。

そう考えると、ゲイリー・ムーアやブライアン・メイの曲を歌った本田美奈子や、“ロックンロール早見優” 路線は、当時の音楽シーンの動きに適(かな)っていたということになるのですが。

ただ、ここでの早見優の金属的なボーカルには、そんな音楽シーンの変化に合わせに行ったものというよりは、もう少し遺伝子的な何かを感じるのです。

言うならば上智大学ロック、それは南沙織の遺伝子?


その遺伝子とは――「上智大学ロック」。言いたいことは、同じく「上智大学外国語学部比較文化学科(学部)」という日本屈指のグローバルな学び舎出身の先輩、南沙織の遺伝子を感じるということ。

南沙織のボーカルも、独特な金属的な響きが特徴でした。日本版「いとしのレイラ」とも言える「傷つく世代」(1973年。ライブアルバム『Good-by Cynthia』でのバージョンは特に鮮烈)や、「想い出通り」(1975年)の歌い出し=「♪ 『こ』いび『と』はそ『こ』ぬ『け』の『か』お『で』ー」のカ行・タ(ダ)行を強調する発音は、実に金属的です。

早見優と南沙織の共通点として、学歴に加えて、幼少時から英語に親しんでいた出自があります。つまり私は、金属的ボーカルの背景として、彼女たちが英語に慣れ親しんでいたという事実を確かめるのです。

日本語ロックボーカルの歴史にみる無意識過剰性


日本語ロックボーカルの歴史とは、要するに、例えばカ行・タ行を強めて発音することなどを駆使して、「日本語をいかに英語っぽく発音するか」を追求する歴史でした。

矢沢永吉や桑田佳祐は、英語が(そんなに)出来なかったため、そのあたりを人工的かつテクニカルに追求したのですが、南沙織と早見優は、それが自然に・天然に出来てしまった。この「天然」性こそが、以前のコラム『80’sコネクション:早見優「夏色のナンシー」は無意識過剰?』で指摘した「無意識過剰」性につながると思うのですが。

とにかく、矢沢永吉や桑田佳祐らが、苦心惨憺して作り上げた「日本語ロックボーカルの作法」を、一見対極にある女性アイドルシーンの中で、南沙織・早見優が、自然に・天然に身につけ、軽やかに披露したということが、実に皮肉でかつ、興味深いことだと考えているのです。


※2019年11月3日に掲載された記事をアップデート

2020.09.02
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カタリベ
1966年生まれ
スージー鈴木
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