六本木、僕にとっては非常に馴染み深い街である。社会人になって数年後に所属したテレビ番組の制作会社は麻布十番にあって、その後に勤めたスペースシャワーは飯倉片町にあった。なので、約20年にわたり、ほぼ毎日この街に足を運んでいたのである。
年齢にして20代後半から40代後半。仕事の上でも脂が乗りまくっている時期で、半分くらいは家に帰ってなかったし、毎晩のように飲みまくっていた街でもあった。リアルな話、この街にいくらお金を落としてきたか、ちょっと考えるだけで背筋が凍る。
そんな愛すべき六本木ではあるが、80年代においては全くと言っていいほど足を運んだことがない。埼玉の奥地から渋谷の大学に通っていた身分からすれば、この街の敷居はかなりの勢いで高かった。一方、バブル期特有のチャラチャラした雰囲気を全否定するようなサブカル好きティーンエイジャーを気取っていた自分だけに、交差点周辺のベタなノリに敵意のようなものを抱いていた側面もあった。
なので、行くとすれば再開発前のヒルズ周辺にあった「六本木WAVE」のみ。ここは全フロアがポップカルチャーで埋め尽くされ、間違いなく当時の最先端を走る情報発信基地のようなビルだった。世界中から集まってくるレコードやCDを物色した後、一階にあったレイン・ツリー(雨の木)という喫茶店でカフェオレを飲んで悦に入っていた自分を思い出す。
だからこの「六本木心中」に初めて接した時も、けっ、なんだこの曲、ダセーな。としか思わなかった。ましてやしばらくしてこの曲がカラオケで頻繁に歌われるようになった時は(あの頃のカラオケはロック少年にとって天敵のような存在だった)、それに輪をかけて嫌っていた。
アン・ルイスは好きだったし、作編曲を手がけたNOBODYや伊藤銀次のアルバムはよく聴いていたから、クレジットや楽曲面でこの曲が嫌いになる訳もなく、ましてやフジテレビの「夜のヒットスタジオ DELUXE」での吉川晃司とのコラボレーション。これを自宅の茶の間で観ていた僕は、内心「おおぉ、すげぇ、カッケー」と思いながらも、この曲が好きだと公言することはなかった。
今にして思えば、なんという狭量! 六本木という特殊な磁力を持ったコミュニティに入りたかったけど、入るきっかけすら掴めず遠巻きに文句を言っている三流ジャーナリストみたいじゃないか!
この街は広過ぎる
BIG CITY THE LONLY PLACE
一人ぼっちじゃ
街の灯りが
人の気を狂わせる
その後、この街の変遷を見続け、歌詞の意味も少しは理解できるようななった…
なぁーんて言えるとカッコ良かったのかもしれないけど、20年もの時間を費やした六本木ナイトライフは僕のクレジットカードとキャッシュフローを際限なく侵食して、いつ六本木と心中させられてもおかしくはなかった。
あー、リアルにヤバかった(汗)。
2016.09.06
Dailymotion / Elzaba より
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