2021年 5月28日

沢田研二ソロ活動50周年記念ライブ、歌われなかった「ロンリー・ウルフ」

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沢田研二のソロ活動50周年ライブ「BALLADE」が東京国際フォーラムで開催された日
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バラードのみで構成された沢田研二ソロ活動50周年ライブ


「昔ジュリー、今ジジイ」

これは沢田研二がコンサート中に発するMCの鉄板ネタだ。「いやいや今もジュリーやろ!」とツッコミたくなる毒気のあるトークがまた聞けるというワクワク感と、このコロナ禍に100%収容ライブかよ… という不安をWで抱えているうちに、2021年5月28日はやってきた。

行くか行くまいか迷った末、会場の東京国際フォーラムに向かう。

昨年の5月から予定していたライブツアーは中止、12月にはファンクラブを解散、事務所機能を縮小するなど、ファンをヤキモキさせ、引退説まで飛び出したジュリーの復活劇にしてソロデビュー50年ライブだ。見逃せないのだ!

新型コロナウイルス接触確認アプリも入手したし、体温は平熱。問題はない。いざ「沢田研二2021 ソロ活動50周年ライブ『BALLADE』」へ!

長蛇の入場列に並び、検温や消毒を経て会場入り。時間が押しているとはいっても流れは思ったよりスムース。ロビーにはDVD宣伝用の特大パネルが飾られたり、主演映画『キネマの神様』のチラシが置かれていた。席は一階左右ど真ん中の12列目。悪くない。観客席には錚々たるツワモノ女性ファンがひしめき、静けさの中にも期待と熱気がムンムンと高まっている。噂では森本タローや岸部一徳の姿もあったらしい。ライブ前のSEはずっとベティ・サーバート。ジュリーのフェイバリットだろうか。

ステージには赤い旗が一本掲げられている。セットリストは公演名どおりバラードのみで構成されると言う。

さて、アレは聴けるかな?

1年4ヶ月ぶりのステージ、ツヤツヤのボーカルは健在!


開演アナウンスが終わって客電が落ち、ジュリーと相棒の柴山和彦が登場する。声を出せない観客の拍手が一際大きくなる。ジュリーの衣装は煌めく縁取りがまぶしい近衛兵っぽいシックなフロックコート調。1曲目は “BALLADE” ではなくノリの良いロックチューン「30th Anniversary Club Soda」だった。

ジュリーがステージを走る!ファンが待ちに待った1年4ヶ月ぶりのステージ! 堰を切ったように思いの丈をぶつける憂いのあるツヤツヤのボーカルは健在!

「こんな大変な時に、こうして駆けつけて下さって嬉しいです」とテンション高く挨拶をはさみながら、柴山氏のギター一本をバックに名曲の数々が続く。

一曲ごとに「ありがとう! サンキュー! ありがとうね~」といつものMCをかまし、「時の過ぎゆくままに」や「君をのせて」、「追憶」、「コバルトの季節の中で」を情感豊かに聴かせていく。

特筆すべきはダークな新アレンジで披露した「TOKIO」だ。あの颯爽としたナンバーを、くるくると回りながら苦々しい表情で歌い上げるジュリー。コロナ禍で混乱が続く「東京」の姿やオリンピック開催の現状を風刺したらしい。

そして他界した仲間たちへのメッセージを思わせる「いくつかの場面」で第一幕が終わった。「♪ できるならもう一度 僕のまわりに集まってきて」と自分自身を抱きしめる仕草に会場は大泣き。故・加瀬邦彦や内田裕也、岸部シローや萩原健一など、ジュリーを取り巻いたミュージシャンの顔が浮かんでは消え、私も涙ぐんだ。

アンコールは、故・志村けんの代役を務めた「キネマの神様」に関するトークからの「ヤマトより愛をこめて」。「♪ 今はさらばと言わせないでくれ」と振り絞るような歌声は、どうしたって志村けんへの哀悼に聴こえてしまう。決してストレートに弔意を示さないジュリーの矜持をも感じた。

「ロンリー・ウルフ」時代のうねりの谷間でポツンと光を放つシングル


全18曲、圧巻のステージだった。後半シャツ姿になってから私の席からはビーチクが透けて見え、ドギマギもしたが。

ただ、期待したアレが聴けなかったのは残念だった。ちぇっちぇっちぇっ! バラードのみの構成と聞いた時にもしかして… と思ったんだけどな。勝手ながら悔しい。

今回私が聴きたかった曲は「ロンリー・ウルフ」である。1979年9月21日に発売されたジュリー28枚目のシングル。どうやらここしばらくライブでは披露されていない。

「ロンリー・ウルフ」に関するさまざまな噂やエピソードにはちょっと心がざわつく。前作シングル「OH!ギャル」をジュリーがあまり評価しなかったこと。作詞者が「時過ぎ」から組んでいた阿久悠から喜多条忠に変わったこと。プロデューサーの加瀬邦彦が次のシングルに「TOKIO」を推したのにジュリーがこの曲のシングルカットを強行し、後に後悔したらしいこと。実はショーケンが歌いたがっていたということ。そして、この直後の1980年1月1日に「TOKIO」が発売されジュリーは80年代へと進化を遂げたこと。

何というか、時代のうねりの谷間でポツンと光を放つシングルなんである。

人気絶頂期にあってザ・ベストテンにランクインせず… その理由とは?


正直、私は大人になってから聴き直すまでこの曲を忘れていた。そのくらい記憶に薄い。オリコン最高位は18位、売り上げ枚数は10万枚未達。人気絶頂期にあって『ザ・ベストテン』の10位にすらランクインしなかった。最高位は13位だった。そりゃ覚えてないよ~!

 愚かな女は 時にはかわいい
 愚かな男は ただ愚かだね
 夜のベッドの 片隅に
 背中を向けた 男と女
 これで愛なら 抱くんじゃなかった
 まるで淋しさにKissしたみたいだ
 ロンリーロンリーロンリーウルフ
 闇に目ざめて 煙草を吸えば
 男の影はロンリーウルフ

どうして売れなかったのか。歌詞を見てもわかるけど、子供向けのアピールが一切ない大人の男のバラードだったからではないか。バリバリのダンディズム、むしろそれまでのジュリーのアウトロー感を飾りなく剥き出しにした歌。陰影に満ちたヘヴィめのサウンド、憂いを帯びたボーカル、渋いモノクロのジャケット。だが全てに決定的な華はない。いや、今の年齢の自分が見れば、聴けば、男の色気がダダ漏れすぎて一発でジュリー沼に沈むと思うんだけど、当時のファン層はきっともっと幼かった。

それともうひとつ、1979年という時代の過渡期にリリースしたことも大きな理由ではないか。ヒットの主役は歌謡曲からニューミュージックへと移りつつあった。同時期にはYMOが『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』を発表しており、また、SONYのWALKMANが発売された頃でもある。もはやドラマチックな物語やアウトローの時代は終わっていたのかもしれない。

大人になった今こそナマで聴きたい!男イズムに貫かれた歌世界


でもさ。「ロンリー・ウルフ」で不器用な男の時代の後ろ姿をあれだけ引きずっておいて、直後の「TOKIO」では軽々と70年代を忘れてみせ、新たに80年代を拓いていく別人のようなジュリーを登場させるなんて。なんだかずるい。ずるいよジュリー。

そうやって考え出すととても切ない、切なくてたまらないシングルなのだ。何という孤高、何というペシミズム。もしくは廃れていく美学へのはなむけか。女の私にはわからない、徹頭徹尾、男イズムに貫かれた歌世界。これは当時11歳の女子小学生に理解できなくて当然で。だからこそ大人の今、ナマで聴きたかったんである。聴けなかったけど。

沢田研二。1948年6月25日生まれ。御年73歳。

この先いつまでも、80歳となっても、さらにツヤを増した魅惑のボーカルを聴かせてほしい。そしていつかステージで「ロンリー・ウルフ」をどうか歌ってほしいのだ。頼んだぜジュリー。



2021.06.25
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カタリベ
1968年生まれ
親王塚 リカ
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